2話 目的のために(ホワイトウィッチ視点)
隠れ家――
ホワイトウィッチは、地下にあるスポーツジムとして使っている部屋のさらに奥にある小さな更衣室にいた。
更衣室の端には金属製のクローゼットが置かれ、扉の中央にテンキーが付いている。
ホワイトウィッチは四桁の番号入力し、ロックが解除され扉を開けると、中には黒で統一された襟の長いロングコート、長袖Tシャツ、レザーのズボンが入っていた。
ホワイトウィッチの戦闘着だ。
他にも銃のホルスターや彼女の愛銃・ワルサーP99が入っていた。
ホワイトウィッチは部屋着を脱いで、戦闘着に着替えた。
鼻の頭まで隠れる程のロングコートの長い襟と、コートの第一ボタンをきちんと留め、クローゼットの扉に付けられた鏡で素顔が見えないか確かめる。
続いてホワイトウィッチは武器庫へ向かうと、そこで煙幕や釘爆弾を取り、コートの懐へ仕舞った。
いよいよ襲撃するために白摩埠頭に向かうのだ。
車庫へ向かい、レッドスピーダーに乗り込むと、さっそく助手席に置かれた小型タブレットを懐に仕舞い、レッドスピーダーのエンジンをスタートさせた。
続いてレッドスピーダーのカーナビを操作し、目的地を「白摩埠頭」に設定、シフトレバー近くにある収納タイプの灰皿の下に並ぶボタンに手を伸ばした。
ボタンは――
「BODY」
「PLATE」
「SILENT」
「NIGHT」
「GLASS」
――の5つある。
ホワイトウィッチは「BODY」と書かれたボタンを押した。
するとレッドスピーダーの赤いボディは、瞬時にブリティッシュグリーンと呼ばれる暗い緑色へと変わった。
これはレッドスピーダーのボディに使われる特殊塗料の特性で、微弱の電気を流すことで色を変えることができる。
警察が今まで足取りが掴めなかったのは、神奈川県に入るまでレッドスピーダーのボディの色を変えていたからだ。
他にも「PLATE」のボタンを押せば、ナンバープレートの色を黒に変えて識別ができないようになり、「GLASS」は窓ガラス全てをスモークガラスのようにして車内の様子を分からなくするシステムだ。
ボディの色が変わったことを確認したホワイトウィッチは、運転席のサンバイザーに付けられたリモコンのボタンを押した。
すると、レッドスピーダーの前の壁が下へ沈むような形でスライドしていく。
壁が完全に下へ沈むと、レッドスピーダーの目の前は、隠れ家へ行く道の途中にあった不自然な広場だった。
岩壁は隠し車庫の扉になっており、ここだけ不自然に広かったのはレッドスピーダーがスムーズに外へ出るためのものだ。
『どうかお気を付けください。お嬢様』
「ありがとう、ジイ」
ホワイトウィッチは野々原からの無線に応えると、レッドスピーダーを発進させた。