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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第2章 単独
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9話 似顔絵

 白摩署の会議室には、タケルの他に4人の県警の刑事がテーブルを挟んで武と向かい合っている。

 1人は県警・捜査一課イッカたちばな、もう1人は病院でも見かけたマル暴・第二係一班の刑事・池田いけだだ。

 他は武も顔を知らない一課とマル暴の刑事がいる。

 橘と池田が武に向ける視線は厳しく――規則を守らずに捜査したので当然だが、武は今にも4人の視線から心臓が潰されそうな思いに耐えていた。

 

「他に何か分かったことは?」

「……すみません、それくらいです」


 橘の質問に武は答える。

 武はホワイトウィッチが谷と関係性を疑うことを言っていたことについては話さなかった。

 そこで橘は、これまでの武の話で最も確かめたかったことを訊いた。


「女の顔は覚えているか?」

「はい」


 忘れられるはずがない。

 あんな美女を見たら誰でもそうだろうが、武にとっては、それだけが理由ではない。

 競馬場で見た、あの女の悲しい表情が、印象的だからだ。

 

 

 ホワイトウィッチの似顔を作成するため、松崎まつざきが会議室に呼び出された。

 刑事課で最も絵心があるのは彼だ。

 松崎の横に座る武が自分の見たホワイトウィッチの特徴を伝え、それを聞きながら松崎がスケッチの上に鉛筆を走らせていた。

 武と松崎の後ろに立つ橘と池田も見入っている。それは長い間不明だったホワイトウィッチの素顔が分かるという期待からだ。


「そう、前髪の長さは眉毛までで、M字みたいな感じで分けられてて、目つきはもうちょっと鋭かったな」


 松崎はさらに似顔絵に細かく手を加えた。


「こんな感じか武?」


 完成したホワイトウィッチの似顔絵を見せた。

 スケッチに描かれた似顔絵は間違いなく武が見たホワイトウィッチの顔の印象を正確に捉えている。

 それは似顔絵のレベルを超え、展覧会にでも出品できそうな程の見事な物だ。


「そう」

「へぇー、結構美人じゃん! 目つき悪いけど」


 似顔絵を見て松崎は顔をニヤニヤさせた。

 確かに似顔絵の女は美人なのは間違いない――事実、武もファーストインパクトは美人だと感じていた――が、相手は犯罪者であることに変わりはない。

 武は松崎の発言が少し不謹慎だと思い、松崎の頭に軽くチョップを入れる。


「――痛っ!」

「アホ、そういうことは言うな」


 チョップされた頭を抑えたあと、松崎は似顔絵を橘に渡した。

 ホワイトウィッチの似顔絵を見た橘は、それを見て確信するものがあった。

 一昨日の夜、橘が廃工場で見たホワイトウィッチの目と似顔絵の目の特徴が一致している。

 あとはこの似顔絵を基にホワイトウィッチを見つけ出すだけだ。


「よし、大下刑事はしばらく署から出るな、分かったな⁉」

「あっ、橘刑事ちょっといいですか?」


 武が橘を呼び止めた。

 どうしても伝えたいことがあったからだ。


「何だ?」

「前尾組が何かを企んでいるみたいです」

「何をだ?」


 池田が訊いた。


「それまでは分かりません。ただ今日の6時(18時)に白摩埠頭に何かが密輸されるみたいで……」

「何が密輸されるんだ?」

「さぁ? そこまでは……」

「『さぁ?』じゃ困るんだよ! もっと確実な証拠はないのか⁉」


 池田の強い口調に武は何も答えられなかった。事実それしか分からないからだ。


「す、すみません……」


 池田はため息をついた。

 もっと情報が入れば、という後悔から、武も黙り込んでしまったが、それよりも気になったあのことを池田に訊いた。


「ところで池田さん。オヤッさん――いや、谷刑事の自宅にマル暴が家宅捜索に入ったみたいですけど、何故ですか?」


 武はどうしても谷の家の家宅捜索の真相が知りたく、池田に訊いた。

 池田はすぐには答えず、一瞬何かを考えるような素振りを見せたが――


「――あぁ、一応怨恨の線で何か繋がりはないか調べたんだ。なんせホワイトウィッチに殺された刑事は初めてだったからね。何か口封じかもしれなかったから。結局何も出なかったみたいだ」


 やはり怨恨の線だったか、最初に言葉が出なかった池田の様子が少し気になったが、武は胸を撫で下ろしたように安堵した。谷が疑われていたわけではないのだと。

 池田は橘と一緒に会議室を出た。

 橘は前尾が何を密輸しようとしているのか気になる様子だったが、所詮県警も何も証拠がなければ動けないのだ。


 この時の武は、そう信じて疑わなかった……。

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