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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第2章 単独
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4話 尾行

 1号スタンド、1階のフロア内――


 タケルは金髪の女を追って、地下通路からエスカレーターで1階のフロアの中へ入った。

 女は何の迷いもなく2階へ昇るエスカレーターに乗った。

 しかし、武はエスカレーターではなく、投票所の機械の前へ足を運んで行った。

 もちろん女の尾行を忘れたわけではない、投票所の機械へ向かったのは、あくまでカモフラージュだ。

 かつて谷から教わったことで、少しでも相手に気づかれるリスクを減らす為に、まず場に溶け込むことから始める。

 武は馬券を買い終わるくらいの時間が経ってから、女が乗ったエスカレーターで2階へ向かった。

 限られた場所であっても、本来なら1人ではなく仲間と連携しなければ相手に逃げられてしまう状況だが、単独行動の今、殆どが賭けに等しい。


 2階フロアへ到着すると、女の姿は見えない。気づかれて隠れているのか、逃げられたという不安も過ぎるが、武は平然を装ってフロア内を見て回った。少しでも慌てたら自分が尾行していることを相手に悟られるからだ。


 2階フロアにはフードコートがあり、その席を覗いたが、やはり女の姿は無い。

 3階へ行ったのだろうか。

 近くの壁に掲げられたフロアガイドを覗いてみると、3階は有料の貴賓室になっており、とても情報屋と密会する場所に相応しいとは思えない所だった。

 あと考えられる場所は、やはり観覧席だろう。

 武は観覧席へ通じるドアを潜った。


 観覧席は、ひな壇のように三段並び、横は長く一列で120人程が座れる。

 席はほぼ満員で、この中から目的の女を見つけ出すのはかなり厳しい。

 少しでも女が見つけ易いように、武は一番高い位置の最後列へ足を運び観客を見渡した。

 やはり人が多くて女は見つけられない――と思いきや、観覧席の中に見覚えのある白いつば広帽子を見つけた。


 女だ。


 観覧席の最前列のほぼ真ん中に座っており、その隣にはスーツを着た男が座っていた。

 案外簡単に見つけたことに内心拍子抜けしたような気もしたが、武はその場から最後列を横に移動し、女とスーツの男の真後ろの位置に立った。できるだけ相手の視界に入らないようにする為だ。

 武の位置からでは男の顔は見えないが、スーツの柄の雰囲気からして暴力団のような印象は受ける。

 情報屋と接触すると思っていた――というより、情報屋はみんな日下のような平凡な見た目だと思っていた――武は、その相手の違いに、一瞬目的の女ではないのかとも考えたが、とりあえず2人の様子を窺うことにした。


 やがて第3レースの先頭の馬がゴールした。

 歓声を上げる客もいれば、賭けに失敗したのか、がっくりと肩を落としたり「ちゃんと走れ!」などと罵倒したりする客もいる。

 やれやれ、と武も頭を軽く左右に振った。武の場合は罵倒する客に呆れてのリアクションだが。

 次のレースまで時間があるので、何人かの客がフロアの中へ入って行く。

 それに紛れ、女はスーツの男と一緒に席を立ち上がると、すぐ近くのフロアの出入口から中へ入って行った。

 武もこっそり2人の後を追いかけよう足を向けたが、その直後に動きを止めた。

 観客に紛れていた怪しい男。女と一緒だった男と同じようなスーツを着ており、濃いサングラスに左の頬に切り傷がある長身の男だ。

 それだけなら何の問題もない。

 何故怪しいかというと、その男の懐が不自然に膨らんでいるからだ。

 切り傷の男は周りを見渡した後に、女とスーツの男を追うように出入口に入って行った。


「あいつ、まさか……」


 武は直感した。切り傷の男は女とスーツの男を狙っていると。

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