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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第13章「黒歴史仲間」
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4話 相当恨んでます

 翌日の黒富士くろふじ組本部では、黒富士が自分の部屋のパソコンを使い、荒松と通信を始めた。

 黒富士の表情は硬く、怒りを秘めているように見える。

 通信が繋がると、年齢は40代前半、細い目の上に茶色いレンズの眼鏡をかけ、オールバックの髪型で細めの顔をした男が映し出された。

 この男が、黒富士組系・荒松組の組長、荒松あらまつ ツヨシだ。


『おはようございます、総長』


 礼儀正しく挨拶をする荒松に、黒富士は荒松に問い詰める。


「グローヴスファミリーとの取引が延期になったと聞いた。まぁそれはいいが、資金が奴らに奪われたようだな?」


 荒松は、言葉を詰まらせた。

 ちなみにグローヴスファミリーとは、日本進出を企む海外マフィアで、金さえ用意すれば何でも密輸してくれる裏の便利屋的連中だ。


『申し訳ございません……』

「これでテメェも終わりだな……!」

『待ってください総長。取引の日までには何とか金を用意できます』

「当てはあるのか?」

『はいっ。間違いなく取引を終えて、()()()()も進められます』


 黒富士は少し考える。

 荒松を見る限り、何処か自信があるようにも見えるので、嘘を言っているようには見えない。


「いいだろう。だが今度ヘマをしてみろ、その時はお前の命は無いからな?」

『もちろん、覚悟しています!』


 ここで黒富士は通信を切った。

 黒富士は、フー、とため息をついた。

 取引に2億は必要なのだが、荒松のシノギだけで、数日でそこまで用意できるとは思えないのだが、とにかく成功するに越したことはない。

 とりあえずマフィアとの取引の日までは様子を見ることにした。

 

                 〇


 荒松組の事務所――

 その組長室では、黒富士との通信を終えた荒松が頭を抱えていた。

 黒富士には「当てがある」とは言ったが、正直のところ全く当てがないのが事実だ。

 2億の大金を手にするには、どこかの大きな銀行でも襲わない限り手に入れるのは不可能だろう。

 立ち上がり、机の周りをグルグルと回っていると、ドアがノックされた。


「何だ⁉」

「……失礼します」


 入って来たのは、幹部の岩屋いわやだ。


「どの面下げて来やがった⁉」


 岩屋を見て開口一番が怒号。作戦が失敗したことで大きな損害が出ているので無理もないが、そもそも作戦を考えたのは荒松だ。


「オヤジ、落ち着いてください!」

「何が『落ち着け』だ⁉ どうすんだ⁉ 2億だぞ2億っ‼ どう責任取んだゴラっ⁉」


 岩屋を指差しながら荒松が怒鳴った。


「オヤジ、取引の日までまだ時間がありますよね?」

「時間と言っても6日後だ。それまでにどうやったら2億も集まる⁉」

「実は……」


 岩屋が荒松にそっとあることを話した。

 それを聞いた瞬間、荒松の表情は一気に驚きの顔へ変わった。


「本当なのか⁉」

「はい、条件はありますが……」

「そうか……よしよしっ!」


 岩屋の言葉に、荒松は一気に上機嫌になった。


                 〇

 

 更に翌日――

 早朝の白摩はくま署の刑事部屋では、自分の席に座るタケルが新聞を読んでいると、ある記事が目に留まった。

 

 ――天王会てんおうかい北野(きたの)組の幹部、射殺される。

 

 黒富士組と肩を並べる神奈川の広域指定暴力団組織・天王会。

 それに属する北野組の幹部・小野田おのだ 晴彦ハルヒコが射殺されたという記事だ。

 これだけでも物騒だが、武はこの記事を読んで真っ先に思ったことがあった。


「あの組、まだ生きてたのか」


 武の愚痴を聞き、松崎まつざきが武の席に近づいた。


「あの組、って?」

「これだよ。天王会の北野組」


 その名前を聞いてもう1人反応した人物がいた。


「北野組って、確かさこ署の……」

「そうです。トシさん覚えてますか? 8年前の?」


 それを聞いて鹿沼かぬまは、「思い出した」と頷いた。松崎は引き続き頭に「?」を浮かべていたが……。


隆太リュウタ、俺が高校の時の()()()

「あぁ、あれね」

「そう、あれ……」


 武の脳裏に過ぎったのは、およそ8年前のこと。

 当時不良だった武が小遣い稼ぎを誘われたが、それが今で言う、闇バイトだったのだ。

 その主犯格だったのが、勝田かつた 幸三コウゾウという、当時の北野組の組員だった男。

 オールバックの髪型に、強面の顔、何かを企んでいることが窺える笑顔が印象的な、今思い出しても、本当に憎たらしい顔をしている。


「でも良かったよな。オヤッさんたちが現れて。勝田そいつらは逮捕されなかったら、ヤバかったんでしょ……色んな意味で?」

「そういうこと。でも出所したら仕返しに来るかも」


 聞いた限りだが、勝田の性格は非常に執念深いらしい。

 武が心配していると、鹿沼が荒松組について話し出した。


「まぁ、少なくとも勝田は組には戻れないだろう」

「どうしてですか?」

「荒松組が属する天王会は、正統派だ。多少は裏で何かをしているかもしれないが、それでも縄張り荒らしや一般市民への手出しを硬く禁じている。それを破った勝田は、当然破門になっているはずだ」

「ありゃま、お勤めを終えても組には戻れない、お先真っ暗、ってことですか」

「そういうことだ」

「へっへっへっ……」


 武は見下すような笑みを浮かべた。


「……相当恨んでるね、武……」

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