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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
おまけ
141/152

刑事と暗殺者の平和(?)な週末

 千葉の博物館デート(?)から数週間後の週末。


「作戦はこうよ――」


 真剣な顔をしたレイ。

 横に居るタケルも耳を傾ける。


「――何としてでも相手に依頼させる。それで、ロゴを隠してわざとオフェスの前に車を止めたの」

「それで狙い通り、映画会社から依頼が来たってことか」

「そういうこと」


 得意げに話すレイとそれを聞く武の前にあったのは、1台の白い車。

 イギリスのロータス・エスプリだ。

 70年代に誕生したため、デザインに時代を感じるが、その車体の存在感は現代人でも心を掴まれるだろう。


「――って、全部パンフレットに書いてあるけどな……」

「別にいいじゃない……」


 そう今のレイの知識は、全て有料のパンフレットに書いてあったことだ。

 武とレイが今居る場所は、とある自動車博物館。

 2階建てだが、その広さは、大型ショッピングセンター程あり、国内でも一二を争う大きさだ。

 この博物館は、ただ車が並べられているのではなく、各車によって、その国の当時の時代の街並みを再現したセットが用意されているのが特徴。

 クラシックカーを見るだけでなく、まるでタイムスリップしたかのような体験ができる、博物館というより、一種のテーマパークである。

 その分、入場料も4000円と高いが……。

 前に訪れた博物館は、標本などが大半だったので、武はあまり楽しめなかったが、その後の鉄道博物館は、武も興味を引くものがたくさんあった。

 その後、レイと話し合い、ここを訪れていたのだ。

 次に武とレイが訪れたのは、2階にあるアメリカのエリア。

 武の視線の先に止まっていたのは、60年代をイメージしたドライブインの前に止まる1台の車。


「69年型マスタングBOSSね。こっちもカッコイイ」

「でもアメ車なら、やっぱりアイツかな、俺は」

「アイツ?」


 武の視線の先には、建物や奥行きは絵で見せかけられているが、モールの駐車場をイメージした所に1台の車が止まっていた。

 ステンレスのボディに、上へ開いたドアは、まるで鳥の翼のような印象を受けるその車は、そう、デロリアン・DMC12だ。


「確かに」


 レイもデロリアンを見て、武の言ったことに納得した。


「本当に憧れていたんだ。この車」


 映画を見てから魅了されたその車、今では乗る機会が増えたが、それでもこの車を見ると、なんだか嬉しくなる。

 すると、館内に鐘の音が鳴り響いた。


「ちょうどお昼ね。どのレストランにする?」


 この博物館は、なんとレストランが3つもあるのだ。

 その中で武たちが選んだのは、2階にあるピザパーラー。

 本格的なピザが味わえるうえ、吹き抜けになっているので、1階にある車を見下ろしながら食事ができる。


「レイって、博物館が好きなの?」

「博物館が好き、っていうか、古い物が好きなの」

「どうして?」

「古い物を見た後に、今の物を改めて見ると、本当に未来に居るんだな、って。考えていると、不思議な気持ちになるでしょ」


 何となくだが、武もレイの気持ちは理解できる。

 前にゲーム友達の家に行ったとき、グラフィックが進化した最新ゲームを遊んで、感動した時がある。それに似ているかもしれない。

 二次元が当たり前だったゲームが、今では美しい立体のグラフィックが当たり前だ。

 その分、『そのゲームから始まった子供たちは、今後そんな感動を味わえるのかな?』という疑問も浮かぶのだが……。


「ところで、武は交番勤務の時は、どんな警官だったの?」

「そうだなぁ……」


 突然のレイの質問に、武が答えようとした時だ。


「あれ、お巡りさん?」


 武とレイが声の方へ向いた。

 そこには小学校高学年くらいの少年が立っていた。

 服装は黒のベストにオレンジのTシャツ、頭に黒いヘッドバンドを付けている。


「まさか、リョウ君?」


 少年――リョウは「はい」と頷いた。


「知り合い?」

「そう、彼はリョウ君。俺が交番勤務だった時に、よく会っていたんだ」


 実は、リョウの家と小学校の通学路の間に、当時武が居た交番があったので、顔を合わせる機会がそれなりに多かったのだ。


「ねぇその人、お巡りさんの彼女?」

「か、彼女っていうか……‼」

「わ、私たちは、ただの友達よ‼ けっして、そんな関係じゃないから‼」


 顔を真っ赤にしながら必死に否定するレイに、武は何処か悲しいものを感じるが、今は口にしないことにした。


「でも、本当に久しぶりだね。元気してた?」

「勿論。でも、いつの間にか居なくなっちゃって。クビになっちゃったのかと思ったよ」

「クビになったんじゃなくて、白摩署の刑事になったの」

「そうだったんだ、すげぇ!」


 憧れの眼差しで武を見るリョウ。

 武もまんざらではないようだ。


「リョウ、行くわよ」

「うん。――それじゃあねお巡りさん」


 母親に呼ばれてリョウは武たちから離れた。


「へぇー、意外に親しまれていたんだね」


 からかうような笑みで武を見るレイ。


「まぁね。そういえば、クラシックカーが好きって言ってたなリョウ君」

「ふーん、見た感じ、ヤンチャ坊主って感じだけど」

「そうでもないよ。見た目はあんな感じだけど、いい奴だよ。ただ……」

「ただ?」

「不思議な奴なんだリョウ君は、まるで人の考えていることが読めるみたいに、先回りして行動することがあるんだ」

「そうなの?」

「あぁ、実は――」


 武がリョウのことを話そうとした時、武の携帯電話が鳴った。


「何だよこんな時に――はい大下」


 電話は宮元みやもとからだ。


「了解――何だよもう!」

「どうしたの?」

「課長から、事件だって」

「もしかして黒富士(奴ら)?」

「いや、違うよ。悪いな先に帰るよ」

「電話して。何時もの時間に」

「了解」


 そう言って、武はお金を置いてその場から離れた。

 ただ1人、取り残されたレイは何処か寂しそうだ。


(恋人が刑事の人は大変ね……)

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