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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
おまけ
140/152

カフェにて(13話 レイ視点)

 タケル佐久間さくまの写真を見せるためにカフェに来たレイ。

 どうやら鬼柳きりゅうを殺したのは佐久間で間違いないようだ。

 自分が持つ佐久間の情報を武に伝え終えると、しばし沈黙が流れる。

 目撃した武以外、佐久間が鬼柳を殺した証拠が全く無いのだ。

 上手い方法が見つからず、武は勿論、レイもモヤモヤした気持ちが募った。


「有給取って、どっか出かけるかなぁ……?」

「『どっか』って、武は何処か行きたいところある?」

「俺は特に思いつかないな……レイの方は?」

「私は……あるけど、1人で行くのはちょっと……」


 不満気に語るレイ。

 行きたい場所はあるが、そこに人で行くには、あまりにも寂しいところだ。


(んっ! ちょっと待って!)


 レイの頭に、自分が言ったある一言が過ぎる。

 

 ――1人で行くのはちょっと……。

 

(これじゃ〝付き合え〟って言ってるのと同じじゃない!)


 その手には、自然に汗がにじみ出ているのが分かる。

 野々原は大丈夫だとは言っていたが、やはり図々しいような気がする。

 武に悟られないように、無表情を保っているが、ドキドキが止まらない。


「良ければ付き合うよ」

「そう、ありがとう――えっ、今なんて?」

「『付き合うよ』って言ったの」


 思いもよらない武の返事に、レイは固まった。


「いやいや、そうじゃなくて、この前私が言ったこと忘れたの⁉」

「刑事と犯罪者がうんぬん、って話でしょ?」

「それなのに……」


 自分が言った意味をちゃんと理解しているのかこの男は?

 そんな気持ちで改めて武を見ると、武は下を向いている。

 自分の言ったことは間違っていないはずだ。

 それなのに、罪悪感が拭いきれない。


(どうしよう……)


 気まずい沈黙が再び流れ、流石に耐えられなくなったレイが口を開いた。


「そ、それじゃ……日曜の朝8時に駅前に来てくれる?」

「わ、分かった……」

「そ、それじゃ……」


 レイは席を立つと、カフェを後にした。

 外に出て駐車場に止めてあったクライスラーに乗った時だ。


(何、この緊張感……⁉)


 レイがアワアワとうろたえ始める。

 誰かと付き合うことは初めてではないはずなのに、何故。

 次第に頭に浮かんでくる一文字の漢字。


「な――いっ‼ そんな訳ないでしょー‼ あ、あれは武がどうしても、って感じだったからで……‼ ――」


 その後もレイは、誰も訊いていないのに言い訳を続けた。

 

 そして、何とか隠れ家に帰ることが出来たレイ。


「お帰りなさいませ、お……嬢様?」


 玄関に立っていたレイは、ヤジロベエのように左右に揺れていた。


「大丈夫ですか、お嬢様ぁ⁉」


 尋常じゃないレイの様子にうろたえる野々原。


「だ、大丈夫よジイ。ちょっと、色々あって……」

「はあ……」


 レイが野々原(ののはら)の前を通り過ぎようとして、ピタッ、と止まり、野々原の方へ向いた――何故か無表情だが。


「ねぇジイ。週末に武と出かけることになったんだけど」

「さようでございますか」

「それってどうなの?」

「『どう』とは?」


 野々原はレイの言っている意味がわからず、首を傾げる。


「だって……――刑事と犯罪者が付き合うって、前代未聞、っていうか、空前絶後、っていうか、いやあり得ないでしょう⁉ つい耐えきれなくて誘っちゃったけど、えーと、えーと――」


 目をグルグルと回して、うろたえている。

 その後も野々原に色々言い訳をしているが、もはや自分が何を言っているのかよく分かっていない状況だ。


「落ち着いてくださいお嬢様。()が出ていますよ?」

「えっ⁉」


 野々原に指摘され、レイは一度深く深く深呼吸を繰り返し、落ち着きを取り戻した。

 それでもレイの表情は曇ったままだ。


「どうしてかな? 何故か妙に緊張するって言うか、心配なのよね……」

「ホワイトウィッチがお嬢様だと分かるのは武様だけです。警察に声を掛けられても武様が何とかするでしょう」

「そっちもだけど……――」


 警察のこともそうだが、レイが心配していることは別にある。


「――武は、博物館とか好きなのかな、って思って……」


 モジモジするレイの質問に野々原は何も言えなかった。

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