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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第12章「スナイパーポイント」
136/152

10話 確かめろ!!

 タケル鬼柳きりゅうを、レイがクリーナーの女を追跡している頃。

 街中を逃走するクリーナーの男が運転するセダン。それを数台のパトカーが追いかけている。

 建物が入り組む街中なら、一般人を巻き込んで警察の追跡を振り切れるかもしれない、と考えたからだ。

 同時に自分が巻き込まれて捕まるリスクもあるが。

 やがて交差点に差し掛かった。信号も赤に変わる。

 しかし、男はアクセルを踏み込み加速。

 男の車は交差点を抜けることに成功したが、後続のパトカーは交差点から出てきた一般車に激突、中には乗り上げて横転するパトカーもあった。

 何とか1台のパトカーだけが、男の車を追いかけている。

 やがて目的地である高速インターの看板が見えた。

 ところが、男の正面に赤く点滅する光が複数見える。

 警察が検問をしいて男を待ち伏せたのだ。

 男は検問を強引に突破しようとアクセルを踏み込む。

 だが、警察も馬鹿ではない。男の車が通る場所を予想してスパイクを配置していた。

 男がそれに気づいた時にはもう遅い。スパイクの上を通過し、タイヤがパンクしたことでコントロールを失い道路沿いの標識に激突、車は大破した。

 頭を強く打ち、額から出血を起こしている男は、ヨロヨロと車から出る。


「両手を頭の上に置いて、地面に跪きなさい‼」


 拡声器を使って警官が男に向けて命令を出す。

 他の警官は拳銃を構え、男の動きに警戒。

 現在、男が手負いだとはいえ、報告で「武装している」と事前に聞いていたので、いつにも増して緊張が走っている。

 流石に怪我を負っている今、この警官の数を相手にするのは無理だ。

 警官は繰り返し男に向けて命令を出す。

 男は諦めたようにその場に座り込むと、ネックレスを取り出し、それをかじる。女が自決した時の物と同じネックレスだ。

 男の頭部は吹き飛んだ。

 

                 〇

 

 県警本部では、葬儀場付近で起こったことの報告を受けていた。


「こういうこと? 例の魔女が、私の声を使ってたちばなたちに命令を出していた、って?」

「そういうことだと思います」


 刑事の1人が答えた。

 まさか自分の声を使われるとは思っていなかったからだ。

 同時に気掛かりなことが大戸野おおとのにある。


「あの男は?」

「はい?」

「黒い方、大下おおしたは⁉」

「それはまだ確認取れていま――」


 答える最中に、無線の呼び出し音が鳴った。

 大戸野が無線に出る。


「大戸野」

『報告します――』


 無線の相手は長峰を監視していた刑事の1人だ。

 葬儀場近くで、武装した外国人の男が検問を突破後に死亡したことを報告した。

 すると、また別の無線から呼び出し音が鳴った。


「大戸野」

『黒富士組本部付近で銃声を聞いた、と通報がありまして。未確認ですが、ホワイトウィッチとブラックウィザードの車が目撃されています』

「何ですって⁉」


 ブラックウィザードの車が現れたってことは、武が寮から出たということになるが、そんな報告は受けていない。

 ということは、車だけが現場に有り、当の本人は居なかったのではないか?


「ブラックウィザードは居たの?」

『それもまだ確認できていません』

「――っ、早く確認しなさい!」


 乱暴気味に無線を切ると、すぐに西嶋に連絡を入れた。


                 〇


 白摩署の警察寮に近くに、「SILENT(サイレント)」の効果で、エンジン音を消したダークスピーダーが停車した。

 そこから使い捨ての保護服着替えた武が降りると、急いで非常階段へ向かった。

 そろそろ県警も現場にブラックウィザードが現れたことが報告されるだろう。

 今はプロジェクターで人影を映し出しているが、報告を受けて見張りをしている刑事が尋ねて来たら、流石にバレる。

 武は非常階段を上り、天井裏へ潜った。

 

 覆面車の中で武の部屋を見張っている西嶋にしじまたち。

 そこへ無線の呼び出し音が鳴った。


「はい西じ――」

『――大下はどうなっているの⁉』


 西嶋が返事を言い終える前に、無線から大戸野の怒号が遮った。


「お、大下なら部屋に居ますよ……」

『何ですって? 何でそう言えるの⁉』

「部屋に人影が――」

『――ちゃんと確認しなさい! ブラックウィザードが黒富士の屋敷付近で現れたの!』

「何ですって⁉」


 覆面車を降り、急いで武の部屋に向かう西嶋たち。


 武の部屋の前に来ると、西嶋が呼び鈴を鳴らした。

 しかし、武は出てこない。


「おい、管理人の所に行って合鍵貰ってこい」

「はい」


 刑事が部屋を離れた。

 やはり武がブラックウィザードだったのか――


 ジャー‼


「んっ?」


 武の部屋から水が流れる音が聞こえた。恐らくトイレの水を流した時の音だ。


「……はいっ!」


 中から返事が返ってきて、ドアが開いた。


「はい、どちら……あっ、西嶋さん」

「大下、本当に大下か⁉」

「何言ってんですか? どっかの警視さんの所為で、ずっとここに居ましたけど……」

「ちょっといいか?」


 そう言って、西嶋は部屋の中に入ると、部屋の中には誰も居ない。

 一応押し入れも見たが、あるのは布団だけだった。


「そ、そうだよな……。すまない」

「何かあったんですか?」

「実は、ブラックウィザードが現れたらしい」

「あらま。それで確認に?」

「そういうことだ。すまなかったな」

「いいえ。ご苦労様です」


 そう言って西嶋は武の部屋から離れた。

 そこへ合鍵を持った刑事が駆け寄る。


「合鍵を借りてきました」

「あっ、それなら大丈夫だ。トイレに入っていたせいで、すぐに出られなかったみだいた」

「そうだったんですか?」


 無駄足踏まされた、と肩を落とした刑事と一緒に覆面車へ戻っていった。

 

 西嶋が戻って行くのを確認すると、武は静かにドアを閉める。


(危なかったぁぁぁー‼)


 武は緊張から解放された所為か、ガハー、と口を開けた。

 実は、西嶋が訪ねてくる約1分前。急いでトイレの天井から中に戻った武は、保護服を脱ぎ捨て、顔の汚れを落とし、プロジェクターの電源をオフにした。

 すると、プロジェクターが写していた人影が部屋の奥に向かいように動いて、そして部屋の電気が消える。

 急いでプロジェクターを布団の中に隠して、トイレに置いた保護服を片付けたその直後に、西嶋が呼び鈴を鳴らしたのだ。

 保護服を屋根裏に隠し、カモフラージュの為に水を流して返事を返した。

 これが真相だ。

 何よりも、サングラスが銃弾を防いでくれたおかげで、顔に傷ができなくて良かった。

 元々レンズが顔に触れないようなタイプだったので、それも幸いしたことも大きい。


                 〇


 県警の一室では、無線の前で大戸野が、今か今か、と西嶋の連絡を待っている。

 やがて無線から呼び出し音が鳴り、大戸野は速攻で出た。


「どう? 大下は部屋に居なかったでしょ?」


 何処か嬉しそうに尋ねる大戸野。

 しかし、そんな上機嫌がすぐさま打ち消されることになる。


『いいえ、ちゃんと部屋に居ました』

「何ですって⁉ 他に誰かが居たんじゃないの⁉」

『それも確認しましたが、大下以外は誰も……』


 大戸野は乱暴気味に無線のスイッチを切った。


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