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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第12章「スナイパーポイント」
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9話 武VS鬼柳 再び

 バイパスから、街中に入った鬼柳きりゅうの車は、そのまま総合公園沿いの道路を走っていた。その後ろをダークスピーダーと拝借したバイクに乗るタケルが追っている。

 道路が直進になったところで、鬼柳の車の運転席の窓が開き、拳銃(92F)を持った手が出てきた。

 また鬼柳がミラー越しで狙い撃つつもりだろう。

 しかし、今度は武にも秘策がある。


野々原(ののはら)さん、ライトを上向きにして、鬼柳の車に当ててください」

『わかりました』


 武の指示に従い、ある程度鬼柳の車と距離を取った後、ハイビームにしてヘッドライトの光を鬼柳の車に当てた。

 流石の鬼柳でも、反射するハイビームの光は直視が出来ない。

 その隙に武は、一気に減速。鬼柳の車と一気に距離を取ると、手放し運転の状態で、ライフル(R93)を構えた。

 その間に、鬼柳はサングラスを取り出し、それを掛ける。光さえ何とかなれば、そう考え、再びサイドミラーで武を狙おうとした。

 すると、サイドミラーが突然割れてしまった。

 銃弾が撃ち込まれたのだ。

 武はライフルスコープが調節されている距離まで離れ、サイドミラーを撃ったのだ。

 続いてルームミラー、助手席側のサイドミラー、に銃弾を撃ち込み、鬼柳の後方への攻撃手段を断った。


「野々原さん、ダークスピーダーのマシンガンで車を止めてください」

『了解』


 ダークスピーダーのフォグランプが開き、マシンガンが現れると、鬼柳の車に向けて発砲。

 タイヤを撃ち抜かれ、コントロールを失った鬼柳の車は、ガードレールに突っ込んだ。

 鬼柳の車の近くに武とダークスピーダーが止まった。


「〈ドア開けてください〉」


 そう言って武はバイクから降りると、ダークスピーダーのガルウィングドアが開き、助手席にライフルを置く。

 流石にここでは大型のライフルは邪魔だ。

 そして鬼柳の車の方へ行こうとした時、一瞬何かを感じた武は、同じく助手席に置かれた刀を取り、それを脇にさすと、拳銃ファイブセブンを構えながら鬼柳の車にゆっくり近づいた。

 すると、武の足元に何か丸い物が転がって来るそれは――


(手榴弾‼)


 武は直ぐにダイブするように一気に手榴弾から離れた瞬間、手榴弾は爆発……したのだが、その威力は小さく、煙と音だけのこけおどしのようにも思える。


「〈不良品か?〉」


 そんなことを考えていると、いつの間にか武の横に移動していた鬼柳が、武の拳銃を蹴り、遠くに飛ばした。


「動くな」


 武の頭に鬼柳の拳銃が突き付けられ、身動きが取れない状況に陥ってしまった。

 あの手榴弾は、目くらまし、だったようだ。

 肝心のスリーブガンは、寮に戻る時に、変装を解く時間を節約する目的で、今は着けていない。

 もう1挺、拳銃ファイブセブンを持っているが、今の状況では抜くことはできない。

 絶体絶命の状況に、武はただられるのを待つだけだった。

 

 普通なら。

 

「〈そっちこそ、銃を下ろしな〉」

「何?」


 武は強気な態度を崩さない。

 何故なら、まだ秘策があるからだ。


「〈俺の味方がまだ居る、ってこと――お願いします!〉」


 武の合図に答えるかのように、ダークスピーダーが動くと、鬼柳は反射的にダークスピーダーに銃を向けた。

 その隙に武は、鬼柳の拳銃を払い落し、鬼柳の顔面に向けてパンチを打ち込んだ。

 それを受けた鬼柳は、地面に倒れた。

 そんな鬼柳の視線の先にある物が目に入る。

 先ほど武に払い落された鬼柳の拳銃だ。

 すかさずそれを手に取り、武に向けた。

 その瞬間――


「……⁈」


 拳銃を握る鬼柳の手に、妙な衝撃が走り、その後に地面に何か落ちたような音が複数聞こえた。

 足元を見てみると、そこには拳銃のスライドから上の部分とその部品、弾薬がバラバラの状態で落ちている。

 まさかと思い、鬼柳が自分の手に握られた拳銃を見てみると、ほぼ綺麗にスライドの部分だけが無くなり、フレームが残った状態。

 どうして拳銃がこのような変わり果てた姿になったのか。

 その答えは武の手にあった。

 冷たく輝く鋼の刃。


 刀だ。


 武は鬼柳の拳銃を振り払った後に、咄嗟に刀を抜いて能力を発動。鬼柳の拳銃を切ったのだ。


「……そんなバカな⁉」


 流石の鬼柳も拳銃を切られたことに、動揺は隠せない。

 しかし、鬼柳よりも動揺しているのが――


(銃切っちゃったよ‼ なにこれ、妖刀⁉ それとも鉄も切っちゃうあの刀……⁉)


 本当は、バットのように峰打ちで拳銃を遠くに飛ばすことを考えていたのだが、咄嗟だったので刃先を使ってしまったのだ。

 まさか漫画のように、ここまでキレイに切るとは思わなかったため、サングラスの下では目を点にしていた。

 鬼柳は拳銃の残骸を捨てると、腰から逆さ持ちの状態でサバイバルナイフを抜くと、戦闘の構えを取る。

 武も刀を握り直し、鬼柳に注意を払う。

 すると、鬼柳が踏み出す体制を取る。武に突っ込むのだろうか?


(来るか?)


 武の方も、刀を握る手に力が入る。

 

 ドクン!

 

 その時、塚元つかもとの断末魔が頭を過った。

 また、殺してしまうのではないか……?

 刀を握る武の手が震える。

 武の集中が途切れた、その時。武の視線の先に、銃口が見えた。

 

 バンッ!

 

 一発の銃声が響く。

 いつの間にか、鬼柳の左手には小型の拳銃が握られていた。

 

 拳銃はハイスタンダードデリンジャー。銃口が上下に二つあるのが特徴の小型ピストルだ。

 内臓ハンマーとダブルアクション式の為、撃鉄ハンマーを立てなくても、引き金を引くだけで発射ができる。

 22口径と威力は低いが、それでも急所に当たれば命は無い。

 

 実は鬼柳の左の袖の中に仕込んであった物を飛び出させ、発砲したのだ。

 そう、ナイフは武の気を引くための囮だったのだ。

 銃弾を受けた武は、後ろに反っくり返る形で、地面に倒れた。

 鬼柳が横たわる武に近づく。

 まだ武に息はあるようだ。

 鬼柳が止めを刺そうと、武に銃を向け、引き金を引いた。

 

 ところがだ。

 

 銃弾は武に届くことはなかった。

 それどころか、武が倒れた状態から刀を振り上げていた。

 武は刀を振り、銃弾を真っ二つに切り裂いたのだ。


「貴様、まだ動けるのか⁉」


 確かに銃弾は頭部に当たったはずだ。


「〈あんたも、スリーブガンを使うとはな……〉」


 立ち上がった武。

 実は、鬼柳の銃弾は、武のサングラスに当たっていたのだ。

 その証拠に左眼のレンズに丸い跡がある。

 

(あの時とは違う!)


 鬼柳の弾を受けて、武の覚悟は決まった。

 深く深呼吸をして、鬼柳に集中する。

 不意打ちに失敗した鬼柳は、最後の抵抗と武に向かって切りかかるが、能力を発動した武には、赤子がハイハイして来るも同じ、容易に動きが見える。

 鬼柳を避けると同時に、鬼柳の左足、そして左腕を切りつけた。

 突然走った激痛に、鬼柳は転倒、地面に横たわった。

 いつの間にか切られた手足を見て鬼柳は呟いた。


「……何者だ、貴様……⁉」


 武は鬼柳に向き直すと答える。

 

「〈ブラックウィザードだ……〉」


 そう言って刀をさやに納める武。

 だが、これで終わりではない。武には鬼柳に訊かなければならないことが残っている。


「〈答えろ鬼柳、2月の15日、ある刑事を撃っただろう、誰の依頼だ?〉」

「…………知らないな」


 否定する鬼柳の顔すれすれに、刀が突き刺さった。

 武が脅しのつもりでやったのだ。


「〈これが最後だ、鬼柳。誰の依頼だ⁉〉」


 圧を掛けるような口調で問いかける武。


「…………本当に知らない」

「〈ならどうして、上地を撃った銃と、白摩署の刑事を撃った銃が同じなんだ⁉〉」

「…………それは――」

 

 バンッ!

 

 言いかけた鬼柳のこめかみに穴が開いた。銃声だ。

 武は弾が飛んで来た方を向くと、そこには人影が立っていた。

 本欄なら薄暗くて顔が見えないが、武のサングラスの暗視機能で、その顔はハッキリと見ることができた。


「〈コノヤロー‼〉」


 武が叫ぶと、人影がその場から走って逃げた。

 もう1挺のファイブセブンを取り出し、人影に向けて発砲。

 弾は男に当たった……はずだった。


(どうなってんだ⁉)


 本来なら仕留めたはずだのに、男は何事も無かったかのように逃走。

 能力を発動しているのに、的を外したのは初めてだ。

 男は止めてあった車に乗って走り去ってしまった。


「〈何だよもう……〉」


 悔しがる武に、レイの通信が入る。


『武、鬼柳は?』

「〈すまない、殺された〉」

『何ですって⁉ もう1人クリーナーが居たの⁉』

「〈分からない……。そっちは?〉」

『こっちも変なプロ根性の所為で死んだわ』

「〈どういうこと?〉」

『自爆よ』 

「〈うわぁ……〉」


 もしかして、と予想はしていたが、そんな映画のような自決があることに内心呆れていた。

 すると武は、先ほど鬼柳を殺した男が居た場所に落ちていた薬莢を拾う。

 45口径のオートマチック拳銃に使われている物だ。

 それを確認すると、薬莢を元の場所に戻した。警察が来た時の為にだ。


『それより時間よ。そろそろ寮に戻った方が良いわ』

「〈もう一人のクリーナーはどうする? それと鬼柳も調べないと……〉」

『クリーナーは警察に任せれば大丈夫でしょう。鬼柳は私が調べるから、場所教えて』

「〈場所は総合公園だ。悪いけどあとは頼んだ……急いでバイクも返さないと……〉」


 武はバイクにまたがり、エンジンを掛けると、野々原に連絡を始めた。


「〈野々原さん?〉」

『何でしょうか武様?』

「〈このサングラス、防弾レンズだったんですね〉」

『はい、元々シューティンググラスなので多少の防弾効果はありますが、38口径までなら防げるように強化してあります……撃たれたんですか⁉』

「〈撃たれたのはサングラスだけで他は無事です。レンズに跡が付いちゃいましたけど、お陰で助かりました〉」

『それは何よりです。サングラスはお気になさらず、予備がございますので』

「〈それはありがたい……〉」


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