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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第12章「スナイパーポイント」
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7話 逸れた理由

 鬼柳きりゅうのNTWに向けて銃弾を放つタケル

 せめて銃口に弾を詰まらせれば、と考えてのことだったが、よくよく考えてみたら20ミリ口径の銃口に7,62ミリの弾を撃ち込んだところで効果があるのだろうか?

 流石にガンマニアの武でも未知の可能性だ。

 

 ズカーン‼

 

 まるで大砲でも撃ったかのような音が、鬼柳の居る建物の方から聞こえた。


「〈ダメだったか……?〉」


 鬼柳の狙撃を止められなかった、と思った瞬間に、黒富士の屋敷の上空で、小さい爆発が起こったのが見えた。


「もしかして今の爆発って?」

「〈鬼柳の弾……たぶん……〉」

「随分、豪快に外したわね」


 でも何故だろうか。

 スコープを破壊したとはいえ、武の記憶では、あのNTWは二脚バイポットとストックに単脚ポットが付いているので、狙いをつけて固定しているのなら、そのまま撃てば当たる可能性は高い。

 それなのに外したということは、まだ照準が定まっていなかったか、それとも銃の欠陥なのか、それとも……。


「早く、鬼柳を抑えるわよ!」

「〈えっ? ――あっ、分かった!〉」


 レイの声で考えるのを止めた武は、サングラスを戻してレッドスピーダーに乗り込むと、鬼柳の居るビルまで向かった。

 

                 〇

 

 未だに弾道が逸れた理由が分からない鬼柳。

 スコープを壊されたことを考えると、恐らくクリーナーなのか、黒富士が雇ったスナイパーが居たに違いない。

 だとしても、狙いは問題無かったのだから、外す理由はただ一つ――

 

 銃弾を撃った……?

 

 それならば、弾道が大きくずれたもの頷けるが、飛んで行く銃弾を撃つことなど、いくらプロのクリーナーでも不可能だ。

 だとすると、他の誰かが……?

 そんなことを考えていると、2台の車が近づいて来るのが見えた。

 スコープを失った今、もう一度黒富士を狙撃するのは無理だ。

 鬼柳は仕方なく、ライフルに付けた爆弾を起動し、その場から離れた。

 

                 〇

 

 ビルの側に着いたレッドスピーダーから急いで降りる武とレイ。


「〈早く2階に〉」


 急いで鬼柳の居た部屋へ向かおうとした。

 その時だ。


 ドカーン‼


 鬼柳が居た部屋が爆発したのだ。


「〈まさか、自爆した⁉〉」

「いいえ、証拠を吹き飛ばしたのよ」

「〈逃げられたか……?〉」

「まだ遠くには行っていないはずよ」


 ビルの裏の方から1台の車が発進する音が聞こえた。


「〈本当だっ〉」


 鬼柳が車で逃げたと気づいたその時だ。

 微かにだが、乾いた破裂音のような音が連続して聞こえた。同時にスポーツバイクのような音も聞こえる。


「もしかして⁉」

「〈マシンガン⁉ でも誰が⁉〉」


 すると、レイがヨットハーバーのことを思い出す。

 ワンボックスカーから鬼柳を狙撃するために伸びたクリーナーのライフルの銃身が引っ込んだ時、すぐにワンボックスカーが発進した。

 と、いうことは――


「もう1人居る!」

「〈誰が?〉」

「クリーナーよ。もしかしたら、張っていたのかも」

「〈なんだって⁉〉」

「二手に分かれましょう」

「〈分かった〉」


 武が返事をした途中、心臓を揺さぶるような爆音が武の耳に入った。

 大型バイクのエンジン音だ。

 武が音の方を見ると、そこにはアメリカンスタイルのライダー――というより暴走族――スタイルの3人組がバイクに乗って現れた。

 ライダーたちは――

 

 ――何だ、あれ⁉

 ――映画の撮影⁉

 

 ――など、全く状況を飲み込めず、呆然と爆発した部屋を見ていた。

 ライダーたちを見た武は足を止めた。

 レイがレッドスピーダーに乗り込むと、武は「ちょっと待って」と、レッドスピーダーの助手席へ向かい、後部にあったライフル(R93)とその横に置かれた予備のマガジンを手に取り、マガジンを取り替えると、ボルトハンドルをスライドさせた。


「何をしてるの⁉」

「〈いいから追ってくれ、後で説明するから〉」

「ちょっと……!」


 武がドアを閉めると、レイは仕方なくレッドスピーダーを走らせた。


「〈野々原さん、ダークスピーダーを運転して、鬼柳を追ってください〉」

『武様はどうするんですか?』

「〈すぐに追いかけますので、お願いします〉」

『分かりました』


 野々原がコントロールを始めたのか、ダークスピーダーは勝手に走り出した。

 すると武は、ライダーたちに近づいた。


「〈ちょっと?〉」

「……なんだ? スカウトなら大歓迎だぜ」


 目つきの悪いスキンヘッドの男が武を睨みつけた。


「〈バイク貸してくれないか?〉」

「おい、ふざけん――」


 スキンヘッドのライダーが言いかけると、武は威嚇(?)のため、拳銃ファイブセブンを抜くと、地面に向けて1発だけ発砲。

 地面に弾がめり込んだ。


「本物か……? ――ど、どうぞ……」


 本物の拳銃だと悟ったライダーがバイクを差し出した。


「〈すまない、すぐに返すから〉」


 武はバイクを走らせた。

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