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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第12章「スナイパーポイント」
129/152

3話 陽動開始

 辺りが薄暗くなった頃。

 タケルは壁の陰に立つと、カーテンを少し捲り、コインパーキングの方を覗いた。

 パーキングには、変わらず県警の覆面車が止まっている。

 腕時計を見ると、時間は「16:29」あと1分でレイとの連絡の時間だ。

 ここから出た状態でアリバイを作る方法などあるのだろうか?

 流石のレイでも無理かもしれない。

 長峰ながみねの葬儀の時間も近づいていることもあって、武に焦る気持ちが募る。

 そして、連絡の時間になり、靴の通信機を取り出し、レイに連絡を入れる。


「レイ?」

『時間通りね』

「どうだ、非常階段は見張られてない?」

『武の言う通り、ガラ空きね。今非常階段を登っているところ。ところで何階なの?』

「2階、非常階段からだと、左から2番目、天井を開けておくから」


 武はトイレ上の天井板をずらした。


『分かった、あそこね』


 しばらくすると、屋根裏からレイが降りてきた。

 レイの服装は、汚れ防止にフード付きの黒い保護服に顔を覆う目出し帽、背中には工作用の機械が入っていると思われるリュックを背負っている。

 しかし、保護服を着たレイの体には、所々に蜘蛛の巣やら埃が付けていた。


「ここ汚すぎ! しかもトイレだったのここ……」

「しょうがないでしょ。それで、何を持って来たの?」

「色々……家と往復して疲れた……」

「ご苦労様です」


 文句を言いつつ、レイはリュックを床に置き、ファスナーを開けると、一度部屋に付いている灯りを見る。

 武の部屋の灯りは電球式。

 そこでレイは、ある装置を取り出し武に渡した。


「これを電球に付けて、嵌め直して」

「分かった」


 武はLED電球をソケットから取り外すと、レイから受け取った装置に嵌め、再び装置ごと電球のソケットに嵌め込む。


「スイッチを入れて」


 武はレイに言われた通り、灯りのスイッチを入れるが、灯りは点かない。


「良いのかこれで?」

「そう」

 

 次にレイは、リュックから辞書程の大きさの小型プロジェクターを取り出した。

 プロジェクターの上部には、タッチパネルが付いている。

 部屋の中央にあるテーブルの上にプロジェクターを置くと、射影用のレンズの上に付いている装置を作動。

 すると、装置から横線上の赤いレーザーが照射されると、それを窓の上の部分に合わせ、設定ボダンを押すと、プロジェクターの下から足が伸び、設定した角度で固定。

 更にタッチパネルで操作をすると、画面に「ON―LINE」の表示が現れた。


「これでOK」

「それは何?」

「人影を投影するプロジェクター。これで部屋に誰かが居る、って思うでしょ?」

「大丈夫なの? 同じ動きを繰り返すとかじゃないの?」

「これはAIを使っているから、ランダムな動きが出来るの。さっき取り付けてもらった灯りの装置にも連動しているから、比較的自然な動きになるはずよ」

「凄い……」

「さぁ、行きましょう。はい、これを着て」


 レイはリュックから折りたたまれた保護服を武に渡す。レイが今着ている物と同じだ。

 レイはトイレの便器を踏み台にして天井裏へ入ると、保護服を来た武も後に続いて行った。

 非常階段から外に出た武とレイ。

 周りに警戒しながら、塀を乗り越えると、そこにはボディの色を変えたレッドスピーダーが止まっており、二人は素早く保護服を脱ぎ、乗り込んだ。

 運転席に乗り込んだレイは、すぐに「SILENT」を作動させ、ほぼ無音の状態にしてレッドスピーダーを走らせた。

 

「改めて悪かったな。俺が居れば鬼柳きりゅうを抑えられたかもしれないのに……」


 武は待ち合わせ場所に来られなかったことをレイに謝った。


「もういいわよ……」


 色々と文句を言いたいが、不本意で来られなかったことを知っているので、これ以上は強く言う気にはなれなかった。


「ところで、鬼柳が狙撃に使いそうな場所の特定はできたの?」

「ええ、ただ鬼柳よりクリーナーの方が面倒よ」

「どゆこと?」


 レイは、レッドスピーダーのダッシュボードに付いているボタンを押すと、ダッシュボードから、タブレット端末が手前に向かって伸び、そして立ち上がった。

 次に野々原と通信し、見つけ出したクリーナーの狙撃予想地点をタブレット端末に写すように言うと、タブレット端末に先ほど割り出した場所が表示された。

 最初に鬼柳の狙撃予想地点、続いてクリーナーの狙撃予想地点が出る。


「うわぁっ、これじゃお手上げじゃん!」


 武は、痒くもない頭をかいた。


「悪かったな、俺が居れば……」

「もういい、って言ったでしょ。こっちも失敗しちゃったし」

「失敗?」


 実はヨットハーバーで鬼柳のクルーザーを追跡させるためにドローンを飛ばしていたのだが、ドローンにインプットしたのは、鬼柳のクルーザーだったため、鬼柳が別のヨットハーバーに停泊した先からの鬼柳の行方が分からなくなっていたのだ。


「なるほどね。でも鬼柳が現れる場所は限られているから良いとして、クリーナーはどうする?」

「こういう時こそ、警察に協力してもらうのよ」

「何⁈」

「まぁ、詳しいことは着いたら説明するから」

 

 河川敷の橋の下に隠すように止まるダークスピーダーの近くに、レッドスピーダーが止まった。

 武が素早くレッドスピーダーから降りると、ダークスピーダーに駆け寄り乗り込む。

 車内には、いつものブラックウィザード変装セットに加え、刀が置かれていた。

 武は、ブラックウィザードの衣装に着替える。

 スリーブガンも付けたかったが、今後、寮に戻る時の時間短縮の為に省き、最後にネックウォーマーを付け、ボイスチェンジャーをオンにした。


「〈行こう〉」


                 〇


 引き続き武の部屋を見張っている西嶋にしじまたち。

 次第に周りが暗くなるにつれ、周りの建物からの灯りが目立ち始めるが、武の部屋は未だに灯りが点かない。

 不審に思った西嶋が、まさか、と思い武の様子を見るために車を降りようとドアを開けた。

 

 武の部屋では、プロジェクターが本格的に始動。部屋の灯りが点いた。

 更にプロジェクターから窓に向けて影が映写される。

 

 武の部屋の灯りが点き、更に窓には座り込む人影が見えたことで、西嶋は車のドアを閉め、張り込みを続けたのだった。

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