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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第11章「邪魔者」
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10話 迫る危機

 タケルがレイの隠れ家に行っている頃。

 神奈川県警の科捜研では、鑑識官が映像を分析する姿を、大戸野おおとのと2人の刑事が遠くから見ていた。

 パソコン画面には、かつて水沼みずぬま研究所跡で行われた沢又さわまたとブラックウィザードとのやり取りの動画が映し出されたウインドウの横に、その音声と連動したスペクトログラフが表示されている。


「どう、ブラックウィザードの声の分析は?」


 大戸野が鑑識官に尋ねる。


「簡単です。相手の変声機はピッチを下げて声を低くしているだけですので、この音声のピッチを上げて元に戻せば、本当の声を特定することができます」


 鑑識官はソフトを使って、動画から録音したブラックウィザードの声を再生しながらブラックウィザードの声の高さを徐々に上げる。

 そしてついに、ブラックウィザードの本当の声を割り出した。

 何度もリピート再生されるブラックウィザードの本当の声を聞いているうちに、大戸野はあることに気がついた。


「待って、この声何処かで……」


 大戸野はこの声に聞き覚えがあった。

 聞けば聞く程不快に思うこの声の持ち主。

 そう、この声は――


「大下! 白摩署の大下よ。すぐに逮捕して!」

「待ってください。ちゃんと分析して――」

「――間違いない! 早く令状を取りなさい!」


 確かに声は大下で間違いないが、それでも令状とかは無理だろう、と付き添いの刑事が眼を細めたが、それを言ったところで大戸野は耳を貸さないだろう。

 それに今の大戸野の表情は、まるで鬼の首を取ったよう笑みを浮かべている。

 刑事は「ハァー……」とため息をついて、仕方なく武を任意同行させる形で連行することに決めた。

 

                 〇


 鬼柳きりゅうがホテルの一室で休んでいると、テーブルに置かれたスマートフォンに着信が入った。

 電話との相手は情報屋だ。


「どうした?」

『やばいぞ、クリーナーが日本から出ていない』

「何だって?」

『もしかしたら、黒富士くろふじが金を用意したのかも。気をつけた方がいいぞ』

「分かった」

『逃げないのか?』

「逃げて何とかなるのか? 奴の息の根を止めるまでは止めない」

『あんまり無理するなよ』

「心配してくれるのか?」

『いいや、まだ今月分の金を受け取ってないからな』

「そうか……」


 鬼柳は目を細めた。

 確かに腕はいいのだが、金の執着が強いのが残念のところだ。


『最悪、身を隠した方が良い、引き続き情報は集めてみるが』

「それならそっちも気をつけろ」

『わかってる』


 そこで電話は切れた。

 気になるのはクリーナーの動きだ。

 もしかしたら、ここもバレているかもしれない。

 鬼柳はそう直感し、すぐに部屋の窓から外へ出た。

 ここは3階だが、万が一の時にすぐに逃げられるように、窓の外にある手すりにロープを結びつけてあった。

 それを伝って降りると、駐車場に止めてあった自分のバイクに乗り、その場を後にした。

 鬼柳が向かう先は、ヨットハーバーに停泊しているクルーザーだ。

 クルーザーには、色々細工を施しているので、それを使えば数人程度なら返り討ちに出来るが、それでも完ぺきとは言えない。

 例えば、ロケット弾や爆弾付きのドローンなど、遠距離や空襲からの攻撃には無力に近い。

 とはいえ、何も無いよりはマシだ。

 アクセルを捻り、先を急いだ。

 

                 〇


 路地裏――

 情報屋が通話を切った瞬間。

 

「うっ‼」 

 

 突然後ろから伸びた手に口を塞がれ、更に脇腹に激痛が走った。


(まさか……)


 焼かれるような脇腹の痛みに、次第に目の前が真っ白になり、やがて暗闇に吸い込まれるように意識が飛んだ。

 倒れる情報屋を見下すように1人の人影が立っていた。

 人影は情報屋のスマートフォンを拾うと、何事も無かったかのようにその場を後にした。

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