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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第11章「邪魔者」
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8話 逆にドン引き

 タケル野々原(ののはら)がガレージに入ると、ピットスペースの一角にある机に向かった。

 机にはタブレット端末と一機の小型ドローンが置かれている。

 野々原がタブレットを起動している間、武は小型ドローンを手に取った。


「このドローンは?」

「お嬢様のリクエストで、追跡用のドローンです」

「なるほどね」


 武が感心している間に、野々原がタブレット内のファイルを開き、武に見せる。


「こちらです」

「わお!」


 武はドローンを机に置くと、タブレットを覗き込んだ。

 タブレット画面に映し出されたのは、ダークスピーダーやレッドスピーダー、新車のレイドマスターに付けることを想像して書かれたガジェットのラフ画の数々。

 まるで特撮ヒーローやムービーカーの設定資料のようで、見るだけで武の心は躍った。

 野々原からタブレットを受け取ると、武は画面をスクロールしているうちに1つの設定画に目が留まった。


「この『EMP』って何ですか?」

「『EMP』は電磁パルスを意味します」

「そっちのEMPなんですか?」


 電磁パルスとは、電子機器を破壊又は麻痺させる強力な電磁波。

 核爆発などを起こした際に発生するが、コンデンサなどで発生させることも出来る。


「はい。専用の円盤を飛ばして、相手の車の下にくっ付くと、小規模の電磁パルスを発生させ、車の電気系統を完全に破壊できます」

「それメッチャ求めていたやつですよ! どうして先に付けなかったんですか?」

「あまり用途がないと思いまして……」

「いやいや……もしかして核燃料使いますか『EMP(これ)』?」

「いいえ、コンデンサを使って発生させますので。核燃料そちらの方が良かったですか?」

「いいわけないでしょ!」

「ですね」


 武は深々と頷いた。

 放射能で死ぬのは流石に嫌だ。

 その後も、ダークスピーダーに搭載できるガジェットの幾つかに目を留めたが、武が求めるガジェットは見つからなかった。


「攻撃範囲が広い武器があれば……」

「それでは、この遠隔のマシンガンが」

「遠隔は悪くないんだけど、運転しながらだとちょっと難しいというか」

「手放しで操作ですか」

「そう。何か手を使わなくても……――えぇぇぇー⁉」


 周りを見渡しながら考えていた武の目に、ある《《物》》が飛び込み思わず声を上げてしまった。

 それは人間をもミンチにしてしまうような強力な武器。映画ではよく見るが、まさか直に見る日が来るとは思っていなかった。


「こ、これも野々原さんが……?」

「はい。あとはレイドマスターに載せるだけです」

「ほわー……」


 武は口を開けた状態で目を点にして固まっている。

 野々原の技術力に対して、尊敬している武だが、こんな物まで作ってしまうのか、と尊敬を通り越して逆にドン引きである。


「少し地味でしたか?」

「いやいやいや‼ 軍で使うような武器を『地味』って、これなら暴力団どころか自衛隊だって‼ ――んっ! 待てよ」


 武器と軍というキーワードで、武の頭にある機能が思い浮かんだ。

 それを野々原に話すと、野々原も「なるほど」と頷いた。


「確かにその方法なら手放しでの遠隔操作が可能ですね」

「できますか?」

「少し時間は掛かりますが、可能ですよ」

「本当ですか⁉」

「はい」


 ここまで有能だと関心を通り越して呆れてしまう。

 こんな凄いメカを作ることができる才能を持ち、更にはレイの身の回りのこともこなす程のスキルも持っている。

 主人と使用にという関係だが、レイのような美女とも同居しているのだから、男として色々負けているような気がする。

 そんなことを考えているうちに、次第に野々原に対して嫉妬のようなものを覚え始めた。

 野々原のスキルの高さに対してもそうだが、こんな完璧な男がレイの側に居たら、レイも気持ちが傾くのでは、と。

 年齢はかなり離れているし、立場状あり得ないと思うが、それでも何処か焦る気持ちが湧いた。


「どうなさいました武様?」

「えっ?」

「いえ、思いつめたような顔をしていましたので」

「あー……、野々原さんは、その、レイと一緒に住んでて、何か意識したりするのかな、と思って?」

「どういうことでしょうか?」

「いや、野々原さんとレイって、お嬢様と執事の関係ですけども、他人ですよね。だからその……」


 バカなことを訊いていることはわかっているが、どうしても気になる。 

 もしかしたら野々原もレイのことが。


「私のとしも考えてください武様。私とお嬢様では釣り合いませんよ」

「そうですか……」


 少しだけホッとした。


「それに、恩人の孫娘に手を出すなど、罰当たりにも程がありますよ。それなら歳の近い武様の方がお嬢様と……」

「んっ?」

「いいえ……。出過ぎたことを言うところでした。忘れてください」


 野々原はそっぽを向いた。

 そこまで聞いたら流石に察しが付く。

 しかし、レイとの交際は難しい。

 何故なら、レイは犯罪者で自分とは立場が違う。それさえ無ければ……。


 あれ?

 

 武は冷静に考えた。

 レイは美人だし、女子力だって高い。

 犯罪者という立場に目を瞑れば、と考えると。


『ただいま』

『お帰りアナタ。今夜も新しい料理を作ってみたの』


 帰宅した武をエプロン姿で出迎えるレイ。

 綺麗に清掃された部屋のテーブルには、豪華な料理が並んでいる。

 

 そんな生活も悪くない。武の妄想は広がり自然と笑みを浮かんだ。


(あれれー? 考えてみれば、レイって……)

 

 自分の理想の女性ではないか⁉


「あの、どうされましたか?」

「ハッ! えっ、何かですか⁉」

「いいえ、随分と楽しそうだったので」

「あっはい……えーと……刀のことを考えていたら楽しくなってしまって」


 流石に、レイとの生活を妄想していました、とは言えなかった。

 武が誤魔化すように愛想笑いを浮かべていると、壁に掛けられた時計を見た。

 時間は「10:15」を指している。


「門限‼」


 いくら停職になっているからといっても、外泊許可が出ていないので寮の門限はまだ生きている。

 駅からここまで大体1時間以上は掛かっていたので、今から出ればまだ間に合うだろう。


「野々原さん悪いけど、車出してください」

「わかりました」

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