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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第11章「邪魔者」
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3話 まるで恐妻

 刑事部屋を出て行ってからタケルは、署の屋上でこれからのことを考えていた。

 まずは日下くさかに頼んで鬼柳きりゅうに関しての情報を集めてもらっているが、それよりも重大な問題がある。


(レイになんて言おう……?)

 

 まず浮かんだのがレイに停職のことをどう伝えるかだ。

 何故か言い難い。まるで自分の妻に停職になったことをどう伝えれば良いのか考える亭主のような気持ちだ。

 勿論、武はレイの旦那でも彼氏でもないので、そんなプレッシャーを感じる必要はないのだが、パワハラが原因とはいえ、やはり停職という汚名に思うところがあるのだろう。

 武の中であれこれ考えていると、武の携帯電話が鳴った。

 突然の電話に驚きながらも、携帯を取り出すと、画面にはレイの名前が表示されている。


(どうしよう……)


 まだ言い訳が思いついていないので、どうしよう、とオロオロと右へ左へと顔を振る武。


 しかし出ない訳にもいかないので、恐る恐る電話に出た。


「……もしもし?」

『遅ーいっ‼ そして声が小さーいっ‼』


 鼓膜を突き破るのでは、と思うほどのレイの大きな声が武の耳を突き抜けた。


「怒鳴るなよ」

『何かあったの、落ち込んでいるみたいだけど? ――まさか停職にでもなったの?』

「うっ! ……」


 武は、ビクッ、と体を跳ね上げた。

 直球で「停職」のワードがレイの口から出るとは思っていなかったからだ。


『まさか本当に停職になったの⁉』

「じ、実は……」

『嘘でしょ⁉』

「本当……」

『何やってんのアンタァァァー⁉』


 再び電話の向こうからレイの怒号が武の耳を突き向けた。


「すみません……本当にすみません……」


 何も言い返せないので、半泣きになりながら、ただただ小さくなっていった。


『でも、停職になるって、一体何をしたの?』


 武は周りを見渡し、誰も居ないことを確認すると、その答えを言った。


「ほら、前に『魔法使い二人組(俺たち)の逮捕に躍起になってる』って話をしただろ。そのリーダーの大戸野おおとのっていう警視が傲慢で、命令を無視して管内の殺人事件コロシを調べたら、こうなったわけ……」

『アンタ、私の言うことも無視したってことよね?』

「それに関してはすみません。ただ、そのおかげで殺人事件コロシ犯人ホシが鬼柳だって分かったんだ、あとド偉い物を手に入れたこともね」

『なに? 事件を解決したのに停職にされたってこと⁉』

「命令を無視した、って理由だけでね」

『ちょっと、それってパワハラじゃない⁉ 訴えなさいよ‼』


(手のひら返し、すげぇな……)


 さっきまで自分のことを責めていたのに、と武は目を細めた。


「訴えて何とかなるならやってるよ。上司が県警服従症アレじゃなければ」

『ああ……あの課長さんじゃねぇ……』


 宮元のことは、レイもたにから聞いていたようで、県警に逆らえないこともよく知っていたようだ。


『まぁ、仕方ないわね。――ねぇ、今夜空いてる?』

「停職中だぜ」

『そうだったわね。今夜の7時に駅前の公園のカフェに来て。ジイが迎えに行くから』

「わかった」

『こっちも色々情報が集まったから。電話だと長くなるし……それにジイが新しい装備を作ったからそれも渡したいから』

「新装備か、楽しみだな」

『それじゃ』


 そこで電話を終えた。

 新装備、と聞いて武は内心ワクワクした。

 停職だということを忘れて……。


「うわぁぁぁ、停職中なのに、何浮かれてんだ俺ぇぇぇ……‼」


 現実を思い出した武は、頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。

 

                 〇

 

 レイの隠れ家、レイの部屋――

 武との電話を終えたレイ。その手は少しプルプル震えている。

 それは停職になった武に怒っているのではない。

 その理由は――


(もう……どうして?)


 レイの頬が少しだけ赤らんでいた。

 何故かは知らないが、塚元との一件以降、武と話をする時に妙な緊張が走るというか、妙に武を意識してしまう。


(もしかして私、武に……)


 レイの頭の中にある()()()()()が浮かび……。


「んなわけあるかぁぁぁー‼ 私が武に⁉ いやいや無いからぁぁぁー‼ 絶対に無いからぁぁぁー‼」


 誰も訊いていないのに強く否定するレイ。

 そこへ、レイの大声を聞いて駆け付けた野々原(ののはら)


「どうなさいましたか、お嬢様?」

「おだまりジイ‼ 私と武は何でもないから‼」

「えっ⁈ あ、はい……」


 流石の野々原も戸惑った。

 大声を聞いて来ただけなのに、何故か武のとの関係を強く否定。

 その後、プンプンと怒りながら、何故か自分の部屋から出て行ってしまった。

 全く状況が理解できず、首を傾げていた野々原を残して。

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