表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第10章「傲慢上司」
112/152

10話 トラウマ 第10章END

 運河の橋の近くまで逃げてきた鬼柳きりゅう


「待て、鬼柳‼」


 後ろからタケルの声に鬼柳が振り向くと、全力で追いかけてくる武の姿が。

 鬼柳は慌てて拳銃の弾を入れ替えるが、拳銃はリボルバー、ローダーが無いので1発ずつシリンダーに入れるしかなく時間がかかってしまう。

 その間にも武は鬼柳に近づいて来る。

 仕方なく弾を2発だけシリンダーに入れ、武に向けたその瞬間、「コノヤロー‼」の声の後に突然飛んで来た石が、拳銃を握る鬼柳の手に当たった。

 その衝撃で鬼柳は拳銃を落としてしまった。


                 〇

 

 拳銃に弾を入れ始めた鬼柳。


(今だ!)


「コノヤロー‼」


 武は落ちていた石を拾い、鬼柳に投げた。

 コントロールには全く自信は無かったのでやけくそだ。

 すると、武が投げた石は鬼柳の拳銃を握る右手に当たり、拳銃が落ちる。

 これで丸腰だと判断し、鬼柳に近づくが、考えが甘かった。鬼柳は懐からナイフを取り出した。

 武は慌てて足を踏ん張り急ブレーキ。

 かなりヤバイ。銃の腕もプロなのだ、ナイフ投げとかも相当なものだろう。

 銃に比べてナイフの方が飛んでくるスピードは遅いが、それでも油断はできない。

 鬼柳と距離を取り、上着を脱いでそれを右手に巻くと、喧嘩の構えを取る。上着を脱いだのは少しでもナイフの刃に触れるのを避けるためだ。

 それにナイフを投げて来ても、上着である程度ダメージを抑えることができる。映画でもよく見る方法だ――が、正直どこまで役に立つのか分からないので不安だが……。

 とにかく、鬼柳に銃を拾わせないことが最優先。ある程度時間を稼げば応援が来るかもしれない。そうなれば鬼柳も逮捕できる。

 鬼柳も武の動きを窺っているようで、慎重な構えだ。

 緊迫した空気が流れ、そしてついに鬼柳が動いた。

 鬼柳は拳銃に向かって行く。

 当然だが、鬼柳が銃を拾えば、今の武に勝ち目はない。

 武も拳銃に向けて走り出した。

 その時、鬼柳はナイフを武に向けて投げた。銃を拾おうとしていたのは、武の隙を作る為だったのだ。

 これも武の想定内、上着を巻いた右手でナイフを防いだ。刺さったが、少しチクっとするくらいでダメージは殆ど無い。

 その間に鬼柳は、拳銃に向けてダイブする形で飛び、拳銃を拾って武に向けるが、追いついた武も同じように鬼柳に向かってダイブ、鬼柳が握る拳銃を両手で掴んだ。


「……大人しくしろ鬼柳!」


 武の呼びかけを無視。武を撃つために引き金に力を入れている。

 しかし、鬼柳がいくら引き金を引いても、引き金は殆ど動かない。

 何故なら、武が両手で拳銃のシリンダーを抑えているからだ。

 撃鉄ハンマーを予め手動で立てている場合は別だが、リボルバーは引き金を引くと、それと連動してシリンダーが回転し、同時に撃鉄ハンマーが立つ構造になっている。

 なので、歯車の間に何かが挟まって動かなくなる状態と同じで、シリンダーを抑えられてしまった場合、いくら引き金を引いても動かすことはできない。

 互いに横たわりながら睨み合い、平行線を辿る状況に見えたが、両手でシリンダーを抑える武に対し、鬼柳の方は片手が空いている。

 鬼柳は懐から別のナイフを取り出すと、恭兵に向けて突き出した。


「うおっ‼」


 武は咄嗟に転がりナイフを避けたが、その時に拳銃から手を離してしまった。

 その隙に銃口が武に向く。銃を持っていない武は、当然だが能力が使えないので避けることはできない。

 それでも武は自分の目に飛び込んできた銃口を見て、思わず右手を地面につけ、アクロバットダンスのように拳銃を蹴った。

 再び拳銃が遠くへ飛んで行くと、さすがに鬼柳も諦めたのか、立ち上がり、ヘルメットを脱ぎ捨てると、左手に持っていたナイフを持ち換え構える。

 武もスタンスを取り、鬼柳の動きを観察。何とか鬼柳の動きを封じて逮捕しなければならない。

 鬼柳が武に向かってナイフを突き出しては、武がそれを避けるか上着を巻いた右手でナイフの刃を逸らすくらいが精一杯。

 平行線の戦いと、逮捕しなければならないというプレッシャーに加え、一向に来ない応援に武の苛立ちが募る。

 すると、鬼柳が突き出したナイフの刃が武の右腕をかすめた。それほど傷は深くないが、その痛みが武の苛立ちをピークにした。

 もう容赦しない。

 再び鬼柳が武に向けてナイフを突き出した。

 すると、武は上着を巻いた右手でナイフの刃を逸らすと、拳を突き出し、それが鬼柳の脇腹に入った。

 怒りによってリミッターが外れたのか、鬼柳の動きが遅く見える。

 鬼柳が武に向けてナイフを突き出すと、武はそれを素早く避け、回し蹴りで鬼柳のナイフを蹴り飛ばした。

 武器を失った鬼柳は、喧嘩の構えを取る。

 レイからある程度格闘技を教わってはいるが、鬼柳はプロの殺し屋、力の差はゾウとアリだ。

 何度も鬼柳に拳や蹴りを受けながらも、武は武なりに打ち返しているが、やはり鬼柳には敵わない。

 やがて膝をついた武の首を鬼柳の腕が絞め付ける。

 薄れていく意識の中――


 ――必ずどこか隙ができるからそこを突く。

 

 武の脳裏にかつてレイに教わった言葉が過ぎった。

 腕で絞めつけるということは……。


(脇腹がガラ空きだ!)


 武は肘で鬼柳の脇腹に一撃。武の首から鬼柳の腕が離れた瞬間、武は半ば怒りに任せながら鬼柳に次々に拳を打ち込んでいく。

 それを受けた鬼柳も、次第に体がふらつき始める。

 そしてとどめと、振り向いた勢いをつけて回し蹴り、武の左足が鬼柳の顔に伸びた。

 

「――⁉」

 

 ところが、武は突然足を止めてしまった。

 その時に武の脳裏に過ぎったのは、かつて自分の蹴りで落とし穴に落とした塚元のこと。

 また殺してしまう……。

 そのトラウマが武の足にストップをかけてしまったのだ。

 その隙に鬼柳が武に向けて回し蹴り、それを受けた武は崩れるように倒れたところへ、鬼柳は武の腹に目がけて肘鉄を喰らわせた。

 それにより武は意識が飛んだ。

 すると、鬼柳は武に蹴り飛ばされた拳銃を拾い、武に向けた。

 次第に引き金を引く指が動き、今にも銃弾が発射されようとした。

 

「おい、あそこだ‼」


 突然の鹿沼の声に、引き金から指を離した。

 声の方へ向くと、そこには鹿沼の姿があった。負傷して動きは鈍いが、それよりも鹿沼の後ろから警官2人がこっちに向かって来る。

 鬼柳は仕方なく武を諦め走り出すと、対向車線を走る1台のバイクを見つけた。


「降りろ‼」


 鬼柳はバイクのライダーに銃を向けると、ライダーは驚いてバランスを崩し転倒。

 その隙に鬼柳はバイクを奪ってその場を逃げてしまった。

 当然だが、バイクのスピードに人間の足が敵うはずがない。


「大下⁉」


 鹿沼は横たわる武に近づくと抱きかかえた。

 武は息をしていたが、気を失っている。


「おい救急車だ!」


 鹿沼が警官に向けて言うと、武に向けて呼びかけを続けた。


                              第10章 END

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ