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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第10章「傲慢上司」
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9話 昭和の刑事ドラマ?

 鬼柳きりゅうの乗るバイクが路肩に止まると、ヘルメットを被った。さすがにノーヘルでは手配されていなくても警察の厄介になってしまう。

 幸いにもタケルたちの追跡が無いのも大きい。

 それよりも鬼柳が許せないのが情報屋だ。

 警察は引き上げた、などと曖昧な情報のせいで刑事に顔を見られた。恐らく弾も回収されてしまっただろう。

 後で情報屋をしめてやろうと考えていると、パトカーのサイレンが耳に入った。

 前方からパトカーが2台来る。

 手配されてしまったのか、それとも別の件で現場に向かっているだけなのか。

パトカーたちがバイクの横を通り過ぎる。


 

                 〇

 

 パトカーの助手席に座る警官が、シルバーのバイクが横を通り過ぎたことに気づき、バイクのナンバープレートを確認した。

 

 ――C-013

 

 無線連絡にあったバイクのナンバーと同じだ。


「おい、例のバイクだ! ――こちら白摩3号車。手配中のバイクを発見、追跡します!」


 警官は無線のマイクを取って、連絡を入れた。

 突然通り過ぎたパトカーがUターンした。


「前方のバイク、ゆっくり左に寄りなさい」


 バイクに向けて警告を出すが、当然止まるはずがない。


「ダメだ、全然聞かない!」


 すると、無線に着信が入る。


「はい」

『こちら白摩22。バイクの現在地は?』


 無線から武の声が聞こえた。


「現在、埠頭に向けて南下中です」

『了解。ただ気をつけてくれ、あいつはミラー越しでもバリバリ当ててくるから』

「当てるって何を?」

『銃だ』

「何ですって、武装しているんですか⁉」

『その通り』

「了解」


 警官は無線のマイクを置いた。


                 〇

 

 鬼柳のもとへ向かう武と鹿沼の覆面車。


「ここから近い埠頭と言えば……」

「お懐かしの白摩埠頭。あそこい思い出が無いんだよな……」

「大下にとっちゃそうだろうな」

「トシさんは何かい思い出が?」

「無いよ」

「ですよねぇ……」


 そう、危うくレイと一緒に前尾まえお組に消されそうになったあの場所だ。

 しかし、今回は追う側なのと応援のパトカーも居るので、少なくとも気が楽……かもしれない。


「埠頭の中でのカーチェイスは勘弁してほしいな。レ……ゴホン、ホワイトウィッチの車みたいに何か武器が付いてる訳でも、防弾でもないし」

「一体どこで車検受けてんだ、あいつらの車は?」

「受けるわけないでしょ……」


 さすがに冗談にしても面白くない。

 武も目を細めて呆れていた。


「ところで大下。『ミラー越しで当ててくる』って一体どういうことだ?」

「鏡を使って、後ろの敵を撃つテクニックがあるんだ」

「それを鬼柳が?」

「相当の腕だよアイツは……って()()()が言ってた!」

「なるほど」

 段々この状況も慣れてきた。

 大体ボロが出そうになった時に『ブラックウィザード』に関連する単語を出せば何とかなることに。

 

                 〇

 

 鬼柳の運転するバイクは、埠頭の側の広い道路に差し掛かった。

 バイクの後ろには、しつこく荷台のパトカーが追いかけてくるが、更に追い打ちをかけるように前方からも2台のパトカーが近づき、そして道を塞ぐように横滑りして停車した。挟み撃ちだ。


(面倒だな)


 それでも鬼柳は諦めない。リアブレーキを踏み込み、後輪がロックされると、スピンする勢いで方向変換。

 その間に鬼柳は、左手で腰に差した拳銃を抜くと、後ろを走っていた2台のパトカーと向かい合わせになった瞬間、それぞれハンドルを握る警官に向けて弾を飛ばすと、弾を受けコントロールを失ったパトカーたちは、止まっているパトカーに突っ込み、もう1台は勢いで、でんぐり返りする形でクラッシュした。

 パトカーを避けた鬼柳は走り出す。

 これでひと段落……と思ったが、再びパトカーのサイレンが耳に入る。

 サイドミラーで後ろを見ると、今度は1台の覆面車が居た。

 

                 〇

 

 武と鹿沼が乗る覆面車は、パトカーの情報から白摩埠頭付近に到着していた。

 そこで2人が目にしたのは、大クラッシュした4台のパトカーたち。


「おいおい大丈夫か⁉」

「うわぁ……()()()()()()()()みたいになってんじゃん……」

「早く捕まえないと」


 鹿沼はアクセルを踏み込んだ。

 武は無線のマイクを取り、現場に救急車の手配をしてマイクを置くと、武の視界に鬼柳を捉えた。


「もうトシさん、こうなったら()()()()でも止めた方が良いんじゃないですか?」

「おい大下! いくらなんでもそれはマズいだろ⁉」

「このまま逃げられたらそっちの方がマズいでしょ? この先住宅街ですよ?」

「……」


 武の言うことも一理あるが、このままに逃げられたら一般人にも被害が出る。アメリカなら当たり前のように追突するだろう。

 しかしここは日本、そんなことをすれば、正当な判断だと証明されない限り、逆に非難を浴びる。

 本当に面倒くさい。


「おい、応援のパトカーはまだかよ⁉ このままじゃ逃げられちまうぞ⁉」

『現在2台向かっています』

「急いでくれ!」


 武は乱暴気味に無線のマイクを置いた。

 

 住宅街に近づくと、鬼柳の乗るバイクの前に、応援のパトカーが到着した。


「これで袋の鼠だな」

「そうかなぁ?」


 確保できると確信する鹿沼に対し、鬼柳の腕を知っている武は腕を組んで心配している。

 しかし嫌な予感というものはよく当たる。

 鬼柳は再び前から迫るパトカーに向けて拳銃を発砲。

 ハンドルを握る警官は弾を受けコントロールを失ったパトカーは、もう1台のパトカーを巻き込んでクラッシュ。

 その隙に鬼柳は逃げてしまった。


「仕方ない!」


 このままではマズい、と鹿沼はアクセルを踏み込み、鬼柳のバイクに体当たり。

 それを受けた鬼柳は、バランスを崩して転倒、鬼柳は道路を滑って行った。

 その時、転んだ鬼柳を避けようとして鹿沼は急ハンドルを切ったため、こちらもバランスを崩し、スピンしたあげく道路の側溝に後輪が落ちてしまった。


「……大下、大丈夫か?」

「……痛いけど死んではいません。そっちは?」

「……頭がクラクラする」


 頭を打ったのだろう朦朧もうろうとする鹿沼に比べて、武の方は意識がしっかりしている。

 武は無線のマイクを取り、救急車を呼んだ。

 その間に、鬼柳は黙々と立ち上がった。上手く受け身を取ったのか、それほど大きな怪我は負っていないようだ。

 バイクに駆け寄りその場から逃げようとする鬼柳だが、故障したのかエンジンをかけようとしてもかからない。

 仕方なくバイクを乗り捨て、住宅街の方へ逃げて行った。


「待て!」


 大下の声に、鬼柳が拳銃を撃つが、武は咄嗟に伏せ銃弾を避けた。

 その後、鬼柳は拳銃の引き金を引くが、カチカチ、と拳銃から虚しい音だけが響く。


(5発か!)


 鬼柳の拳銃の弾数が分かり、少しだけ気持ちに余裕が出来た武。

 それに対して鬼柳は、慌てて走り出した。


「逃がすかぁ!」


 武は鬼柳を追った。


「……待て、大下!」


 鹿沼は覆面車から降りることはできたが、朦朧とするせいで上手く動けない。

 その間にも武の姿は遠のいて行った。

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