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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第10章「傲慢上司」
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1話 エグいねぇ

 深夜のとある小さなコンテナヤード――

 コンテナに囲まれた空間の中に何人もの人影があった。

 黒富士組系の暴力団・長峰組の組員数人と組長の長峰ながみねだ。

 長峰は40代後半で、左手に杖を持っている。

 その取引相手はチャイニーズマフィア・蝙蝠ビイアンフグループの構成員、そしてボスのシュウだ。

 蝙蝠グループはマフィアとしてはそれほど大きくは無いが、徐々に戦力を増やしているグループで、現在日本進出を狙っている連中だ。

 人目を避けるために、灯りはテーブルの上にあるキャンプで使うような折り畳みができるランタンしかない。

 そのテーブルの上に、長峰がアタッシェケースを置いた。

 ケースの中に入っていたのは、とあるファイルだった。

 これは、とある日本の大手製薬会社の極秘ファイルで、現在特許取得中の新薬について記されている。

 マフィアの方も同じようにテーブルの上に大きめのアタッシェケースを置き、それを開いた。

 中に入っていたのは1億円の札束。

 それを確認した長峰もアタッシェケースを開け、マフィアの方へ向ける。


「確認しろ」


 長峰が組員に向けて言うと、組員はライトを手に札束の確認を始めた。

 取引しているとはいえ、何か小細工されては大損しかない。

 相手のマフィアもファイルの内容を慎重に確認する。

 ファイルを見ていたシュウも頷き、笑顔を見せる。どうやら納得しているようだ。


「本物です」


 組員が長峰に向けて報告する。


「長峰サン、イイ取引デキタ、トテモ嬉シイ、コノ後モヨロシイ取引シタイデス」

「これからもよろしくお願いしますよ」


 長峰は手を指し伸ばすと、シュウもその手を取り満面の笑顔で握手をした瞬間。

 

 バンッ!


 一発の乾いた銃声と共に、テーブルの上に置かれていたランタンを撃ち抜かれた。


「なんだ⁉」


 突然の暗闇に長峰は勿論、組員やマフィアたちも動揺を隠せず、あたふたしていた。


「おい、灯り探せ灯り!」


「《はい、どうぞ》」


 機械を使ったかのような低い声、どう考えても身内ではないその声が聞こえ、組員たちがあたふたしながら周りを見渡した――真っ暗で見えないが……。

 すると、何かが転がる音が聞こえたと思った瞬間、凄まじい光が現れた。

 閃光弾だ。

 暗闇からの突然の凄まじい光に、目が焼けるような痛みに、組員やマフィアたちは一斉に目を抑えた。

 その瞬間、連続するけたたましい音と共に組員やマフィアたちの手や足に痛みが走る。

 音の正体は銃声だ。まるでマシンガンのように連続して聞こえた。

 銃声が止んだところで、閃光による目と撃たれた手足による痛みで動くことが出来ない。

 後は、とどめを刺される、と覚悟した。

 

                 〇

 

 怪我して動けなくなった組員やマフィアを見渡す2つの人影。

 ブラックウィザードとホワイトウィッチこと、タケルとレイだ。

 武は両手に拳銃ファイブセブンを持っていた。あのマシンガンのような連続した銃声は武の二挺拳銃と早撃ちによるものだ。

 組員やマフィアたちとは違い、武はサングラスの暗視機能をレイは暗視ゴーグルを着けていたので、暗闇でも相手の位置が把握できたのだ。


「《はい、終わ……りー……》」


 武の視線の先には、いたるところを切りつけられた長峰組の組員やマフィアたち。

 マフィアの方は重傷だが、怪我で済んでいるのに対し、組員の方は全員急所を切られて死んでいた。

 レイの方を見ると、両手からウィッチブレイドが伸びており、ちょうどそれが腕のガントレットグローブに収納されるところだった。

 武が撃ちまくっている間に、レイはウィッチブレイドで斬りつけていたのだ。


「《エグいねぇ……》」


 武はサングラスの中で、眼を細める。レイの憎しみは理解しているが、それでも容赦ない姿に少し引くものがあった。


「別にいいでしょ」


 そう言ってレイは武の目の前を横切り、テーブルに置かれていた1億円が入ったケースと資料が入ったケースを手に取った。


「《おーい、ネコババする気か?》」

「あら、寄付してくれるの?」

「《……》」


 当然だが無理だ。刑事の給料などたかが知れている。とても役には立たない。

 レイの活動資金については、武も前々から気になっていたが、こういうことだったのか、と納得した。

 闇取引の金額はあり得ない程の高額が多い。

 それを横取りすれば、当分活動には困らないだろう。


「《ところで、そのファイルはどうするんだ? まさか売り飛ばすのか?》」

「勿論これは返すわよ。こんな物売ったりしたら日本政府まで敵になるでしょ?」

「《当然だね――あれ?》」


 武はふと、テーブルの近くを見ると、長峰の姿が無いことに気づいた。


「ねぇ、もしかして左足を撃ったの?」

「《そうだ》」

「彼の左足は義足よ!」

「《それを早く言えよ‼》」


 武は駆け出した。

 一ヵ所だけ出入りが出来るようにコンテナの隙間があるのだ。

 そこを抜けると、左足を引きずりながらも駆け足で車に向かう長峰の姿があった。


「《待て!》」


 車に乗ろうとしている長峰を止めようと武が走り出した。

 しかし長峰はその場から逃げようと、車のセルを回し――

 

 ズガーン‼

 

 長峰が乗った車が中高く舞い上がり、地面に叩きつけられた後も爆発が起こる。

 武は悔しそうに地面を蹴ると、1台の大型バイクが走り去るのが見えた。

 ヘルメットで顔は見えないが、考えられる人物は、武が知る限り1人だけだ。

 鬼柳きりゅう


(にゃろー‼)


 鬼柳を追跡しようとする武だが、当然バイクに追いつくはずがない。


「何があったの⁉」

「《長峰が()られた》」

「何ですって⁉」


 すると、サイレンの音が武とレイの耳に入った。


「《警察が来た》」

「随分早いわね」

「《どうせ鬼柳()が呼んだんだろ。急いで逃げよう》」


 武とレイはそれぞれ小型タブレットを取り出し、アプリを起動。マシンたちを呼び出した。


「本当にちゃんと逃げられるの?」

「《任せとけって》」


 そう言って武はダークスピーダーに乗り込んだ。

 そんな武に、本当に大丈夫かしら? と首を傾げながらレイはレッドスピーダーに乗ると、2人はそれぞれ別方向へ走って行った。

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