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WHITE WITCH(ホワイト ウィッチ)  作者: 木村仁一
第9章 魔女の涙
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8話 ボスの居場所は?

 黒富士くろふじ組系・片野かたの組の事務所――

 組長室に居る組長の片野が、席から立ち上がった。


「何、丸小野まるおのられた⁉」


 組員からの報告で片野は眉をひそめた。


「まさか、例の魔女の仕業か?」

「分かりません。警察サツもまだ判断が出来ないようで」

「次は俺たちが狙いか……?」

「恐らく……」


 片野はゆっくりと、椅子に座る。

 もう少しで立ち退きが終わり、大儲けが待っているのに、このタイミングで魔女に狙われるなんて。


組長オヤジ今夜の商談は中止にした方がいいですよ」


 当然の答えだ。そこを狙われる可能性もある。


「いいや。予定通りに行く」

「危険ですよ、組長オヤジ‼」

「せっかくの儲けを逃してたまるかっ‼」


 組員は呆れていた。自分の命より儲けの方が大切なのか、と。


「大丈夫だ。あの店なら安全だ」


 商談が行われるのは地下にあるキャバクラ。いつも行くときは貸し切り同然なので見知らぬ人間が入ることは無いだろう。

 だが、組員から見れば過信のなにものでもない。ただ不安が募るだけだった。

 

                 ○

 

 黒富士組に動きが無いと判断した県警が、タケルの行動制限と解除、現場に復帰することが決まったが、当然ながら黒富士組の件からは外されている。武としては全然嬉しくない。

 そしてお昼頃。

 武は白摩署の屋上で、1人コンビニのパンを食べていると、武の携帯が鳴った。相手は日下くさかだ。


「やぁオッチャン、どうしたの?」

『ようアンちゃん。ちょっと気になる話を聞いてな、白摩署の管轄じゃねぇのは分かってんだけど、伊坂署の管内でチンピラが死んでいた話を聞いたか?』


 恐らく松崎まつざきが伊坂署の先輩から聞いたという死体のことだろう。


「あぁ、小耳にはさんだ程度だけど、酷い殺され方だ、って。本当にチンピラだったのか?」

『それも片野組のな』

「片野組?」

『黒富士組の組だよ。元々伊能(いのう)組ってのが居たんだけど、組長が行方不明になって、後釜という形で入って来たのが片野組だ。その片野組の動きが慌ただしくなっていてな、チンピラの死が、例の魔法使いの仕業じゃないかって噂になっているんだ。アンちゃん何か知らないかと思って』

「確かに、この前あいつらと一夜を共にしたけど、あの2人の狙いのことは全然」

『そうか……わかったよ』


 当然だが、本当に知らない。

 少なくともレイが片野組のチンピラに手を出していないはずだ。

 もしかしたら鬼柳が報復したのかもしれない。


「そうだ!」

『どうしたアンちゃん?』

「オッチャン、鬼柳きりゅうっていう殺し屋に聞き覚えない?」

『きりゅう?』

「本名かは分からないけど、もし情報が有ればちょうだい。こっちも何か掴めたら知らせるから」

『分かった』


 ここで電話は切られた。

 恐らくレイは潔白だと思うが、一応連絡はしておいた方がいいだろう。

 武はレイに電話を入れる。


『はい武様』


 電話に出たのは野々原(ののはら)だった。


「レイは大丈夫ですか?」

『ご心配には及びません。今はぐっすり休んでおられますので』

「それは良かった」

『それで、ご用は?』

「そうだった。実は――」


 武は伊坂署のチンピラのことでレイが疑われていることを野々原に話した。


『お嬢様はここ数日、家から出ていません。恐らく――』

『――武から電話?』


 レイの声が聞こえた。


『もしもし武?』

「ああ、俺だ。体は大丈夫か?」

『もうバリバリに元気よ。それより、何かあったの?』

「伊坂署の管内で片野組のチンピラが両手両足をふっ飛ばされて頭に一発の状態で死んでいるのが見つかって――」


 武は周りを改めて見回す。


「――……俺たちが疑われてんだよ」

『確かに、私も次に狙っていたのは片野組だけど、まだ手は出していないわよ。それに、いくら黒富士組の人間が相手でも、そんな惨い拷問はしないわよ――黒富士なら別だけど』


(嘘つけ……)


 武は眼を細めた。


「――ってことは、俺たち以外で黒富士組の連中を恨んでいる奴の仕業……」

『私たちの知る限りだと、鬼柳ね。でも鬼柳がどうして片野組を?』

「分からないよ。だた拷問的なことをしたということは……」

『何か知っていたら完全に吐いてるわね』

「――ってことだな。それが一体何か? ――……レイ、今夜ウィザードになりたいんだけど?」


 周りに聞こえないように小声で話した。


『なってどうする気?』

「ちょっと調べたいことがあるんだ」

 

                 ○

 

 その日の夜。片野組の事務所では組員が寂しく留守番をして――


「スリーカード!」

「うわっ!」


 ――いや、あまりにも退屈なので弟分のチンピラと一緒にポーカーをしていた。


「アニキ、いかさましてないですよね?」

「するわけないだろ、もっ回やるか?」

「当然ですよ」


 組員がトランプを集めると、ドアが開く音が聞こえた。


「誰だ⁉」


 出入口の方へ向くと、ドアが開いているが誰も居ない。


「何だ?」

「俺が閉めてきます」


 チンピラが閉めようとドアに近づくと、チンピラの額に銃口が突きつけられた。

 チンピラは「ヒィ‼」と声を上げ後ずさりする。

 入って来たのは、サングラスを掛け、鼻から口元まで隠すマスクにロングコートを着た男、拳銃はFNファイブセブン。

 ブラックウィザード――姿の武だ。

 勿論、マスクのボイスチェンジャーも使っている。


「《そいつの横に行け》」


 武はチンピラに命令を出し、チンピラが組員の横に行くと、危機を感じた組員は、拳銃が隠されているトランプが散らばるテーブルの裏に手を伸ばした。

 バンッ!

 その前に武の拳銃が火を噴いた。

 武の放った弾は、テーブルの下に隠されていた拳銃に当たり、テーブルの裏から落ちてしまった。

 組員とチンピラも流石にホールドアップした。


「《ボスはどこ行った?》」

「し、知らねぇよ……」

「そ、そう。何時ものキャバクラに行ってるなんて、全然知らな――」

「――バカ野郎‼」

「あっ‼ すまねぇアニキ……」


(こんなバカ本当に居るんだな)


 漫画でしか見たことがないような間抜けなチンピラに武も内心呆れた。


「《まぁいい。ボスを死なせたくなければ店の住所を言いな!》」

組長オヤジがっ⁉」


 組員は武に片野がいる店の住所を教えた。

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