明鏡のポーション
カラン、カラン…
日中にもかかわらず人気の無い店、そんな寂れた場所のドアを開ける者が一人。
その者の装いは黄緑色の目以外の全身が暗い布で隠されており、非常に不審に見える。
「よう。薬売り」
少し渋い男の声が耳に届く。
「やぁ、情報屋。何かいい情報は入ったかい?」
「いい情報ってよりかはきな臭い情報がいくつ…って誰だ?その不気味なやつは」
不気味…あぁ、エイノアのことか。確かに始めてこのマスクを見るときは不気味だって思うよな。
「俺の弟子だよ。エイノア、挨拶を」
「こんにちは。師匠の弟子のエイノアです」
「お前が……弟子を…?」
エイノアの声色がいつもと違うような気がするけど…気のせいか?
「挨拶は返すものだよ?」
「いや…それは、悪かったが…(弟子?実験体の間違いじゃないのか?)」
「失礼なこと考えているだろう、君」
「いやだって、お前が弟子をとるとこ何て、考えられなかったからよ」
「ま、誰にでも気まぐれというものはあるもんなんだよ」
納得行かないという感じが伝わってくる。
まぁ、金さえ積まれれば何でも話すようなやつに本当の理由は言わないのだが。
悪いがその理由で納得してくれ。
「それで、今日はどんな情報をくれるんだい?」
「あ、あぁ。まず、これな」
カウンターに数枚の紙束が置かれる。
「エイノア。これがこの情報屋への依頼だよ、紙の内容はポーション調合について新しい情報があったか、世界情勢はどうか、最近の流行とかは何なのか、あとこの店の評判を調べて紙に書いてもらっているんだ」
「お金の無駄じゃないですか?」
「俺もそう思うよ」
「ひでぇーな!安くしてやってんだろ!?」
「ごめんごめん、冗談だよ。彼の情報には助かっているんだ。仕事の合間に手に入る情報なんかとは質と量が違うからね」
「お、お前の口からそんな言葉が出るとは……やっぱへんなもんでも食ったか?それとも自分のポーションで自滅したか?」
「どっちも違うよ…多分」
「記憶も残らないポーションか…恐ろしいな」
「情報屋さん。一つ質問いいですか?」
「んぁ?なんだ?」
「師匠のイメージってどんなものなんでか?」
エイノアに質門をうけた情報屋は俺にアイコンタクトをおくってくる。
話していいのかどうかということだろう。
別に好きに話してもいいけど…エイノア、それ、本人がいるところで聞くことなのかい?
「好きなように言うといいさ」
「お前がいいならいいけどよぉ……薬売りの印象っていやそりゃあ、腕は確かな外道だろう。どこまで取り繕っても、そいつのポーションが何人もの人族を苦しめた。ついでにいや、苦しめられるのはいつも弱者だ。強者しか買えねぇからな。値段と道徳的に」
思ったより容赦が無かった。まさか、一言で印象を表して追撃で詳細をいうとは。
俺は思ったより嫌われているのかも知れない。
「では師匠のポーションは人を救うことがないと?」
「そういうことじゃねぇが。善意より悪意の方が耳に入るし記憶に残るだろう?」
「なる程、分かりました。ありがとうございます。情報料、必要ですか?」
「いや、要らねぇよ。それより、俺が薬売りのこと悪く言ったから怒ってんのか?何かちょっと、言葉に棘を感じるんだが」
「そんなことはありませんよ、師匠が悪名高いことなんて重々承知でしたし」
「そうか?ならいいんだが」
確かに何となくだが、棘、のようなものを感じる。
まさか、エイノアの奴隷時代にこいつとの面識があった…?
後で…確かめるか。
「さて、情報はもらったし対価を払わないとね。今回はいくらだい?」
「あぁ、それなんだけどよう。今日、俺女と飯食いに行くんだよ。そんでよぉ、まぁ、なんだ、好いた女でよ、失敗したくないんだよ。なんか、いい感じのポーションねぇか?」
「魅了のポーションか。何級を使う?」
「ちげぇーよ!俺は真剣に愛してんだよ。そんな外道じゃなくて、他のねぇのか?」
ポーションに頼ろうとしてる時点でどうかとは思うが…。
「なら……これ、明鏡のポーションはどうだい?感情の起伏が抑制されて、思考能力も上昇するよ。落ち着いて的確に場を盛り上げる話をしたいというのならこれがおすすめかな」
「いいのあるじゃないか。それを報酬としてくれ」
「いいけど、これ飲むと性欲も抑制されるよ」
「駄目じゃ…!いや、その…」
「肉欲のポーションを飲めば打ち消せるけど…どうする?安くしておくよ?」
「……いくらだ?」
「10万で売ってあげるよ」
「たけぇーよ。いや、普通よりも安くなってるのはわかるけど、もっと安くしてくれ」
「分割でいいよ?」
「もっと安くしてくれ。今日の情報はいいもん揃えたんだぜ?」
「へぇ…じゃあ5万に負けてあげよう。後で読んで本当にいい内容だったら、払ったお金返してあげるよ」
「マジかよ気前がいいな。…なにか裏があるのか?」
「ないよ」
「……助かる」
交渉も終わったところで、後ろの棚から灰色の液体が入った瓶を取り出し、透き通る程透明な液体が入った瓶と、灰色の液体が入った瓶を袋に入れる。
「どうぞ」
「あぁ、助かる。じゃあな」
「ええ、またのお越しをお待ち申し上げております」
カラン、カラン…
男は少し足早に店の外に出た。
「エイノア、彼と面識でもあったのかい?何となくだが、いつもとは違う気がしたけど」
「いえ、面識はないんですが…あの人の魔力が少し不気味で…何か、得体がしれない感じがしたんです。だから、警戒しちゃって…」
なる程ね、空見の魔眼には、彼は不気味に映るのか。
「彼は色々なところに潜入する事があるからね。バレないために魔力を含めて自分を偽っているんだよ」
「普段から偽装する必要はあるんですか?」
「そこが面白いところでね。彼、なまじ偽装の才能があったから、偽った人格も性格も声も口調も魔力も、どれも馴染んでしまってね。偽り続けている間に、もう最初の自分が分からなくなってしまったんだよ」
「…思ったより、可哀想な人だったんですね。…師匠ならどうにかできるんじゃないですか?」
「彼があれで良しとしているのなら、良いいんじゃないのかな?愛する人も見つかったみたいだし、余計な手は加えないほうがいいだろう」
「そう言われると、確かにそうですね」
そう言ってエイノアは情報屋の記事を手に取る。
あ、それ俺が読もうと思ってたのに…。
「エイノア、数枚ちょうだい。俺も読みたい」
「どーぞ」
受け取った紙の内容に目を通す。
❖
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聖皇国、勇者の召喚に成功。表向きの理由は魔王の復活が近いとの信託が下ったため。しかし異星人と思われる者が一人、エインシエル王国(この国)に入国。
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一級指定要注意人物マルブ・スピオラ消息をたつ。
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隣国アイガッド王国にて、行方不明者続出。
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大陸全土での魔物の総数が増加しているとの報告あり。
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一部だけでもこれだけ沢山の不穏な情報に思わず眉をひそめる。
勇者っていうのは正直一度見てみたかったし良いとして、あの死霊術師が消息をたったって、怖くて夜道を歩けなくなぞ…。それに行方不明者に死霊術師が関係していたら最悪だ。
あとは_
「師匠!これ見てください!」
「ん?」
エイノアか指を指している部分を読む。
何々?❖王都にてゼアトラ劇団による『アインとフラン』開演❖ねぇ。
「見に行きたいのかい?」
「はい!11日後にやるみたいなんですけど、駄目ですか?」
顔を近づけ俺の手を取ってお願いしてくる。
「とりあえずマスクが顔に突き刺さりそうだから少し離れてくれ」
「あ、ごめんなさい」
さて、どうするか。王都といえば最近勇者の一人が滞在しているらしいし、俺は王都の騎士団に敵視されている。そして何より死霊術、こいつの狙いが大量虐殺であった場合、人の集まる王都で暴れる可能性は高い。勿論物騒な目的で潜伏していない可能性もあるが、最悪な状況を想定しておきたい。
「長い間お店をしめることになりますし…駄目、ですかね?」
俺の顔が曇っているのを見て望み薄だと考えたんだろう。エイノアの声色が少し暗くなった。
うっ…。エイノアのささやかな願いくらい叶えてあげたいが…まぁ、王都には強い人多いだろうし、入ったら安全だよな?多分。
となると問題は行きと帰りか、片道4日かそこら、それだけ気をつければいいか。
「いいよ、行こうか。エイノアが来る前から店を長い間しめるのはあったし」
「本当ですか!?やった!」
余程嬉しかったのか、小さくガッツポーズまでして喜んでいる。
それを見て何故か俺まで嬉しくなる。
「それじゃあ、いつ出ますか?」
「そうだねぇ……4日後かな、道中何が起きるかわからないし、大事をとって早めに出よう」
「4日後ですね、わかりました」
「明後日は用があるから、明日か明後日以降に遠出に必要な物を買いに行こうか」
「用って何ですか?」
「俺の装備を出すのと領主の屋敷に行くんだよ」
「どうして領主様のお屋敷に?」
「定期的にポーション売っているんだ。ま、詳しいことはまた今度教えてあげるよ」
「分かりました」
あぁそうだ、もう定期的に呼び出されるのも時間の無駄だし、領主との契約も明後日で終わりにするか。
❝
ときは少し遡り、
エインシエル王国王城の謁見の間にて、国王と相対する黒髪の青年がいた。
「ほぉ、お主が異星の者か」
王は興味深い眼差しを青年に向ける。
目には確かに力強さを感じるが、もう60を超えている王の髪は白く、顔もシワが目立つものとなっている。
「はい!俺_」
「頭を上げていいと誰が許可したか!」
「あ!ごめんなさい」
王の問いに対し青年は元気に返事を返したが、作法がなっておらず、宰相より叱責を受けた。
しかし王は気に留めていないようで、青年の無礼をゆるす。
「よい、ゆるす。皆の者、この者は異性の地より降り立ちし者、礼儀作法なども違っていよう。ゆえに、今日この場でのこの者の無礼は全て不問とする。よいか?くれぐれも余に恥をかかせるでないぞ?」
「「「はっ!!」」」
控えている、身分の高い者共がみな一斉に返事を返す。
「して、少年。名をユキハルと、いったか?」
「はい」
「うむ。ではユキハル。そなた、余に仕え、余の為に死ぬことを誓うか?」
王は青年に問う。己が臣下に加わるかと。
しかして、青年は困惑する。他者の為に死ぬなど考えたことがなかったからだ。
「どうした?余の臣下に加わるのは不満か?」
「俺、俺は……国民の、人々の為に戦います!申し訳ありませんが、王様の為だけには戦えません」
迷った末、青年は人々の為に戦うと大見得を切った。
一見、王の誘いを断った無礼者のように見えるが、この場にいる誰もがその言葉に満足していた。
「そうか!国民の為に戦うか!その意気や良し!レティシエ!」
「はい!」
クリーミーブロンドの髪をハーフアップにした髪型で、キリッとした空色をした目を持つ妙齢の者が声を上げる。
「異星の者は自由を好むと聞く、そなたもずっとこの王宮にいては退屈だろう?この者はこの国の元第二騎士団の副団長、名をレティシエと言う。そなたにこの者を預ける故、何かあれば全てこの者に聞け。レティシエ、良いな?」
「謹んでお受けします」
「うむ。ユキハル、お主はどうだ」
「あ、ありがたく存じます」
「そうか、ならば良い。あぁそうだ、この者は今よりお前のものだ、好きに使うといい」
「は…?はい。ありがとうございます…?」
好きに使え、とは言葉通りに好きに使えという意味なのだが、青年はそれをイマイチ理解していない。
「ではこれにて謁見を終了する!」
……………………………
謁見の間より退室し、客室へと向かう途中、廊下にて。
二人の男女が言葉をかわす。
「これからよろしくおねがいします、えっとレティシエ、さん?」
「ええ、こちらこそよろしくお願いいたします。ユキハル様」
「さ、様はつけなくていいよ。俺、そんな大層な人間じゃないし」
「いえ、貴方様は先程私の主となった身、これ以外の敬称は不適切でしょう」
「な、なら。命令ってことで、俺のことは呼び捨てにしてくれ」
「…かしこまりました」
「あ、後。もう少し砕けた喋り方ってできないかな?あんまり堅いと俺まで疲れちゃうよ」
「わかりました。できる限り努めましょう」
「うん。ありがとう」
静寂が訪れる。
青年は気まずく感じているようだが、女は気にしていないようで、綺麗な動作で歩いていく。
「あの、俺にこの世界の事を教えて下さい」
「それは客室にてお教えします。ご命令でしたら今すぐにでもお話しますが」
「…わかりました、後ででいいです」
再び訪れる静寂。
その後は会話もなく部屋についた。
「ここが客室になります。私は隣の部屋を与えられていますので。何かあればお声掛けください」
「分かりました。えっと、それで、この世界の事、なんですが」
「ええ、承知していますよ」
チリンチリン、と女がベルを鳴らす。
すると、扉が開きメイドが1名入ってきた。
「お茶を用意してくださる?」
「かしこまりました」
それだけ言って手際よくお茶を入れる。
「それでは、お茶をのみながら話すといたしましょう」
それから、淡々と女はこの世界のことについて、常識から多少凝ったことまでざっくりと説明していった。
「と、こんなところでしょうか。何か他に聞きたいことはありますか?」
「えっと、俺ってこれから魔王を倒す冒険に出るんだよね?最初は何からすればいいのかな?」
その言葉に、女は一瞬固まった。
魔王なんてもの、彼女は知らない。しかし、待ち望んでいた質問。質問されなければ自分から切り出そうとしていた話。
顔が崩れそうなのを抑え、冷静に答える。
「魔王、というのは先程も説明した通り存在が証明ができていないので、私も何から手を付ければいいか分かっていません。まずは、戦闘訓練だとは考えていますがね」
「でも、魔王に近い者たちはいるって、言っていたよね?」
確かに、そう言われる者たちはいる。彼女には到底屠れると思えない怪物たちが。
しかし、この青年は違う、何故ならば勇者なのだから。
最早願いに近い考えで先を話す。
「確かにいます。ですが、この者たちは一部を除いて全員が国に所有されている状態です。それに、そうでない者は所在が掴めていません」
「国が所有している?ってどういうこと?」
「そのままです。彼らは個人で戦争に勝利する事ができると言われるほどの戦力と叡智を有しています。そんな者たちを国が囲んでいるのですよ。周りの国に潰されないように」
「なる程ね、なら国同士の戦争以外は特に危険はないってこと?」
「そういう訳ではありません。国で所有されていない者もいますし、国で所有されているとしても、彼らがいつ我々に牙を抜くか分かりません」
「…あ、じゃあ!その人達を仲間にすれば良いんじゃないかな?頑張って説得すれば、きっとその人達も__」
「不可能です。彼らは、人の形をした化け物です。およそ、我々と同じ感性を持っていません。いくら説得しようとて、意味がないのです」
「でも、やって見なくちゃわからない。とりあえず、この国にいる人たちを教えて」
どう合っても仲間にする気でいる男に対して、僅かながら焦りを感じつつ一級、二級指定要注意人物についての説明を始める。
「この世界には等級指定要注意人物と呼ばれる者たちがいます」
「それが、魔王に近いって言わてる人?」
「ええ、そしてこの国にも一級が2人、二級が3人所属しています。二級指定要注意人物は、鍛冶師オラクル、天文学者ブライド、学長オーロラの3名が指定されています。この者たちは最悪反逆を行っても対処可能とされています。が、どのみち敵対関係になれば甚大な被害が出ます」
「その人たちも仲間にできないの?」
「可能性はありますが、こちら側に引き込んでもどのみち一級との戦闘になれば意味がないと思われます」
「えっ、一級ってそんなにやばい人なの?」
「ええ、それに、鍛冶師と天文学者は一級との接触が過去に何度も確認されています。最悪の場合、一級との戦闘時に寝返る可能性すらあります」
反刻(2分)に満たない沈黙。それぞれ別のことに考えを巡らす。
「一級の人はどんな感じなの?」
「まず一人目は死霊術師のマルブ・スピオラと言う者です。人を使った極悪非道の実験を数々行い、最近、完全な死者の蘇生を実現させたと報告が入っています。
この国が初めて積極的に接触した一級でもあります。が、その時、国土の十分の一程が死者の群れによって占領されたと聞きます」
「十分の一……ってどれくらい?」
女は壁に掛かっている地図に指さして説明をする。
「これがこの国です。そして、このあたりが全て死者の群れに覆い尽くされたらしいです」
国の面積は約1,200,000km2。その十分の一というのだから、相当な規模だろう。
「まぁ、200年以上前の事ですし、最近は静かにしていますので、問題はないかと」
「でもそれ、200年より前から生きてるってことですよね?」
「ええ、なにせ死霊術師ですからね。恐らく、自分の死体を魔力で操っているのでしょう。それが本当に可能なのかは知りませんが」
「な、なる程。じゃあもう一人の方は?」
胸が高鳴る。ようやくこの時が来た。
怪物を屠るに足る、そんな人物にようやくこの話ができる。
憎悪に駆られた彼女は、この日の為に身に着けた技能を思い浮かべながら、重い口調で言葉を綴る。
「…もう一人は調合師アズリー。人智を超えたポーションの数々を生み出す者です」
「ポーション?って傷を直したりするやつだよね?二級の人たちみたいにあんまり脅威にはきこえないけど…」
「ええ、一般的には。ただし、この者はポーションをただ魔力を保有する水だと曲解し、数々の危険物品を生み出している外道です。例えば、このティーポットに入った液体と同じ量あれば、一瞬で町を滅ぼすことが可能です」
「…どうやって?」
「簡単なことです。沸騰したお湯のように空気に溶けるポーション、それが入った瓶の蓋を開けるだけです。そうすれば、空気となったポーションは町を覆い空気を吸ったものは息絶えるのですよ」
「気体にすることによって……でも、この量の水じゃ町は覆えなくないか?いや、そこはファンタジーだし、魔力でどうにかなるのか…?」
男はぶつくさ呟いた後に、安易な考えを口にする。
「死霊って息してないだろうし、死霊術師の方を仲間にすれば万事解決かな?」
「それは考えにくいかと。調合師は、ありとあらゆる効果をもったポーションを作成できるとされます。……私の部隊は過去に彼と接敵して、半数以上が判別不可能になる程に溶かされ死亡しました」
彼女の肩書に'元'がつくようになった原因であり、彼女の胸の内が憎悪と復讐で満たされたあの日の出来事。
それに触れた彼は、声を出すことができなかった。
「そして、彼は不死身です。いかに切ろうが貫こうが、魔法で吹き飛ばそうが。意味がありませんでした。死霊なぞ、彼の前では例え束になろうと意味がないでしょう…ですが、」
彼女は突然テーブルに乗り出し、男の手を握った。
そして顔を近づけ、目を潤ませ、上目遣いで懇願するような声をだし言葉を続ける。
「ですが…!ユキハル様なら倒せるはずです!過去に魔王を屠ったとされる方と同郷の貴方様なら、きっと倒せます…!お願いですユキハル様。仲間の仇を、あの者のポーションで苦しまされている力なき人々の無念を!どうかそのお力で晴らしてください!!」
彼女の吐息が男にあたる。
男はそれ程に近づけられた顔に照れて、顔を赤くさせつつ大見得を切る。
「わかった、俺がそいつらより強くなるよ。絶対に。なんせ、俺は勇者だからね」
「…ええ、私がお支えします。一緒に、あの外道を倒しましょう」
その言葉の後に口づけを交わす。
彼女の騎士としての誇りなど、とうに捨て去られていた。
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エジィリィ
「最後まで読んでいただきありがとうございます」
エイノア
「良かったら感想、ブックマーク、評価等よろしくおねがいします!」
エジィリィ・エイノア
「それでは、またのご来店を心よりお待ち申し上げております!」
エイノア
「私、初めて王都に行くので観光もしてみたいです…!」
エジィリィ
「いいね。せっかくだし、遊びつくそうか」