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人になり、初めて抱いたこの思い

今回はエイノア視点で進んでいきます。


「どうぞ」


コト…

執事の人が私の前に紅茶を置く。


「ありがとうございます」


鮮やかな赤色の紅茶。

手に取ると爽やか渋みの香りがすっと鼻を抜けた。


ゴクッ…

砂糖を入れるかどうか迷ったけれど、まずは一口その味を堪能する。


「美味しい…」

「そうだろう。俺はあまり紅茶の味が分からないのだが、これだけは別だ。あぁそう。言い忘れていたが礼儀作法は気にしなくていい。何なら口調も砕けて構わない」

「そう言ってくれるのは有り難いですが、流石に口調は…」

「まぁ、何でもいいが」


………。

しん、とした空間に耐えられずもう一口紅茶を口に含む。


 ど、どうしよう。凄い気まずい。師匠とだったらこんな時間も心地よく感じれるけど、この人初対面だし…。

 何か喋ったほうがいいよね。でも何を喋ればいいの?貴族の人どころか普通の人が喜ぶ話すらわからないのに…!


そっと、正面に座っている貴族の方へ視線を移す。


 ど、どうしよう。すごい睨まれてる…。いや、もしかしたら睨んでないのかもしれないけど、何にせよどうすればいいかわかんないよ…!


気まずさで頭がショートしそうになった時、横から思わぬ助け舟がだされた。


「ご主人様、エイノア様も困っております。本題に移られては?」

「……エイノアと言ったな。君を茶に誘ったのは、奴の話を聞かせてもらいたかったからだ」

「えっと、師匠の、ですよね?」

「ああ。俺のイメージでは…誰かを弟子に持つことはあれど、大切に思う事は無いと思っていたんだ。だが君は奴に大切にされている様にみえる。それこそ、貴族である私の前で無礼な口をきく程にな」

「あ、それは。私の方から謝らせていただきます。師匠がその…ごめんなさい」

「いやいいんだ。どうせ、奴にとっては貴族であろうとならず者であろうと、等しく取るに足らない塵芥なのだろうからな。外面だけでも丁寧に接しようとしているだけ良くやっているさ」

「は、はぁ…」


 ちりあくたって何だろう…?後で師匠に聞いてみよう。


「それで、だ。君から見た奴の印象や行動。それにできればで良いのだが、奴がどうして君を大事に思っているのか聞かせてほしい」

「そう、言われましても、師匠が私を大切に思ってくれる理由は分からないんですよね…。でも…もしかしたら、ですよ?本当にもしかしたらなんですけど」


カッ、と顔が熱くなるのを感じながら言葉を続ける。


「その…買った奴隷が思いの外自分のタイプで……ごめんなさい、やっぱり聞かなかったことにしてください」


今が誰かに頼られている状況に感じたのか、恥ずかしい妄想まがいな憶測を赤の他人に聞かせるところだった。

もう、殆ど言ってしまっていたけど。


「そうか。だがまぁ、これも私の独り言として聞いてほしいのだが。ありえない話だとは思えない。奴の弟子は確かに、貴族の娘に引けを取らない程可憐な少女だったからな」


それを聞いて更に顔が熱くなる。

もしかしたら本当に師匠は…。そんな妄想が頭を巡る。


自分でさえ『誰かを好きになる』という感情がよく分かっていないけど、私が師匠とずっと一緒に居たいと思っているように、師匠も私のことをそう思ってくれているかも…と、絶え間ない妄想が頭を駆け巡る。


「で、でも、ですよ?正直私は師匠の優しい面ばかり知っていますし、もしかしたら私でなくても、それこそ男の人相手でも弟子に取ったのであれば優しく接するのかもしれません」

「身内に甘い、と。そう思うのか?」

「はい…」

「だがな、その身内に選んだのは間違いなく奴なのだろう?ならば何故君を選んだのかが重要になる。人知を超えたポーションを作り出す怪物だ。俺達貴族もこれまでに弟子にどうだと何人も推薦したが、尽く断られた。その中には見目麗しい者もいたし、空見の魔眼の保持者もいた。勿論その両方も試してはみた」


 空見の魔眼保持者ってそんなにいっぱいいるんだろうか…?

 そういえば私、誰かに目をえぐられたような…。というか、私って師匠が買った当時相当ひどい状態だったよね?そんな私を態々治して弟子にしたんだし…やっぱり何か理由があるのかな?


「何か気になることでもあったのか?」

「えっと、私って元々奴隷でして…」

「あぁ知っているとも、随分前状態の悪い…そうか。なる程、なぜ奴が君を態々治したのか気になるということか?」

「はい。詳しい事を言って良いかわからないんですけど、凄い高等なポーションを使ったらしいです」

「ふむ……」


ラコロンド様はまた難しい顔をして俯き考えを巡らせているようだ。


「まぁ、そこら辺は今考えても答えが得られないのだろう。次は君から見た奴について教えてくれないか?」


 私から見た師匠、って何を話せばいいんだろう。印象でいいのかな?


「そう、ですね。誰かを無償で助ける事とか、悪人や貴族様や冒険者の方への印象があまり良くなくて。優しくて、体力はないけど体に触れてみると男の人らしくて、何だかんだ甘えさせてくれて、ポーションのこと以外に関心があまり無い様に思えます。後は胸元の空いた服とか丈の短いスカートとかを身に着けると、たまに視線がそっちに行ったり、急にくっつくと鼓動が少し速くなったり、変なところで意地を張ったりするんですよ、そこが何というか、可愛いですね。

あ、誤魔化したい話になった瞬間に顔に出るので正直で分かりやすい人だと思います。でもたまに体内魔力の揺らぎすら殆ど起こさないでさらっと嘘をつくときがあるんですよね。後はあまり過去の話をしたがらないですね」

「そ、そうか……貴族の印象は昔から悪かったが、冒険者の印象が悪いのは初耳だ。何故印象が悪いか、理由はわかるか?」


確か…と、以前師匠に直接聞きだした理由を思い浮かべる。


「どちらも鼻につくから、だったと思います。あまりに簡素な答えだったので、それが全てかどうかは分かりませんが」

「鼻につくか、随分人らしい考えだが、君の目を持ってしてもそれが本当だと?」

「揺らぎは殆どありませんでしたが、それが全てではないと思います」

「なる程……」


また難しい顔をして黙り込んでしまった。


 うーん…突然言われたからあんまりあげられなかったな。今思えば味の好みとか癖とか、意外な一面とかもっともっと…いや、これは私だけが知ってればいいか。


「あの、ラコロンド様から見た師匠はどんな感じなんですか?たまに師匠の事を恐れている様な人がいるのですが、私から見れば犯罪で使うようなポーションを売っているだけで、皆さんが怖がる理由がわからないといいますか…」

「そうだな、君にばかり話させるのもなんだし、俺が奴と関わったときの話をしてやろう」


ラコロンド様はそう言って紅茶を一口飲み込む。

私もそれに釣られる様にして一口飲み込む。紅茶自体は美味しかったが、少し冷めてしまっていていた。


「私が奴と関わるようになったのは、この国の最高位の神官が神からお告げを頂いたからだ」

「一級指定要注意人物になる原因が確か、神官の方に神様から信託がくだるから、でしたよね」

「ああ。と言っても、その時に受けた信託は『人域 超えし 者 調合師 アズリー 人の子 気をつける』といった感じで、これの当事者は二級指定要注意人物になる」


 (?)アズリー?エジィリィではなくて?


「疑問を感じているな」

「え、えぇ。神様は本当にアズリーと言ったのですか?」

「あぁ、エジィリィではなく、アズリーとくだった。何故だかはまだ分かっていない。が、少なくともこの国にやつ以外のアズリーという名前を使っている調合師はいなかった」


 じゃあ本当の名前はアズリーなのかな?でも、名前を教えてもらった時、あの人の魔力は全く揺れて無かった筈。騙すにしたって理由がないように思えるし。


「話を戻させてもらうが、そのお告げに上がった者を野放しにするわけにも行かないので、俺や騎士の者達で奴に接触する事となった。

あった当初は物腰柔らかな少年にしか見えなかったよ。それ故我等も取り込みやすいと考えたのだが、この店を手放すわけにはいかないと頑なでな。幾らひ弱そうに見えても中身はどんな怪物かも分からないし、その時は『人知を超えたポーションを秘匿する』という契約だけ交わして俺達は一旦帰ることにしたんだ」

「え、では、私が知っている物は人知を超えたものでは無いと言うことですか?」

「いや、奴め最高位の契約魔法をいとも簡単に無効にしてな、次に奴に合った時には、『そんな契約しましたっけ?』なんて言ってとぼけやがったよ」


あの人らしい行動を聞いて、少し顔がにやけてしまう。


「まぁ、二級とは言え化け物であることには変わりないからな。仕方がないとその時は割り切っていたんだが、ある時奴を力ずくで抑えないといけない事態に陥った。それが2回目の神託、内容は『人域 超えし 者 アズリー 砂漠 神獣 殺す 人の子 止める』だ。神獣とは幻想種の事だ。知っているか?一応、世界最強の生物なんだが」

「ええ、なんでも神様の使いだとか」

「ああ、その神様の使いを殺そうというのだから神官達は大慌て、俺は一級指定要注意人物でもあるまいし流石に不可能なのでは無いかと思ったんだが、それでは神託が下った理由が分からなくなる。

一応、王都の守りを薄くしない程度にできるだけ戦闘力が高い者を連れて砂漠にいる幻創種のところに急いだんだが、俺達が着いた時には幻創種も奴もボロボロでな、取り敢えず幻創種が回復する時間か逃げる時間を稼ぐために奴を取り押さえようとしたんだが…」


そこまで言って、これまでで一番怖い顔をして口を閉ざしてしまった。

少しの間、重く苦しい時間が流れ、また、ポツリと喋り始めた。


「…まず、突っ込んだ騎士団の者達が一瞬で溶かされた。何かしらの装備でポーションを飛ばしたんだろう。

俺達も同じ目に合うわけに行かないから、魔力障壁や大地の魔法等で奴を封じ込めようとしたが、何故か全ての魔法が維持できなくなった。身体強化の魔法も全てな。

仕方がないから警戒しつつ囲んで奴を無力化しようとしたんたが、突然体が痺れて動けなくなり地面に倒れた。

言葉通り、なすすべが無かった。この国でトップクラスの実力者も、奴の前では赤子に等しかったよ」


絞り出すような最後の言葉に、何故だか私が責められている様な気になり、胸がキュッとなる。


 師匠が、そんなことを…。


「溶かされた騎士の同僚が奴に復讐しようとしたり、裏社会の者達が奴にわからせようとしたり、その後も奴と敵対する者はいたのだが、地を這う虫を踏み潰すかの如く、容易く返り討ちにしてみせたそうだ。

…あの日から数ヶ月して、奴が一級指定要注意人物になる正式なお告げが下った。

奴が恐れられる理由は、『奴と敵対した者が必ず痛い目に合う』と言うものが一部の者で噂になり、またその噂にヒレがつくようになり、『奴と関わったものは酷い目に合う』なんて言われるようになったからだ」


何だか、重たい話をされてしまった…。

紅茶を入れてもらった時よりもずっと気まずい時間が漂う。

ここまでの話を聞いて一つ懸念を覚えたが、中々言い出すことができない。


「少し重い話になってしまったな、まぁ奴の話をする時はいつもこうなのだが…。ここ数年は奴も大人しくしている様だし、元々手を出さなければ火傷をする事もない。他国の一級よりは断然扱いやすいヤツなのも事実だ」

「…その、最近勇者が召喚されたんですよね…それで、その…」

「…奴が討伐される可能性は今の所低い。この国に来た勇者も、一級の者共を仲間にすると豪語していたしな」


それを聞いてホッとする。

あの人はよく自分が居なくなった時の事を話すけれど、あの人に死なれてしまったら、私はどうすればいいのかわからない。

いっそ、私も…。いや、それはあの人の望むことではないのだろう。


「さて、そろそろラフィリア達も帰ってくる。トッド、この館の案内をしてやれ」

「畏まりました」

「あ、あの、お茶、美味しかったです。師匠の話もありがとうございました。また師匠のお話を聞かせてくれると嬉しいのです」

「構わんよ。俺の方こそ、君から見た奴の印象は聞いていて面白かったくらいだ。また機会があれば共に茶を飲もう」

「ええ、その時は師匠も一緒に」


突然に終わったお茶会に少しだけ名残惜しさを感じつつ。トッドと呼ばれた執事の人に連れられ部屋をあとにする。



…………



「さて、館のご案内は終わりましたが、何か疑問に思った事などはありますか?」

「大丈夫です」

「左様ですか。では夕食時にお呼びしますので、それまではどうぞご随意にお寛ぎください」

「分かりました。ありがとうございました」


トッドさんは一礼だけして去っていった。


 ……本でも読もうかな。


案内された客室の窓から空を見ると、黄昏時だった。

あの人は今、何をしているのだろう…。そう、考えずにはいられない。


「はぁ…」


ため息を付きベッドに横たわる。

何故だか本を読む気も起きず、ただ目をつむりボーッと時間を潰す。


いや、ボーッとというのは違うか。

何故なら私の頭の中は、あの人の事でいっぱいなのだから。


 どうして、こんなにエジィリィの事を考えちゃうんだろう…。


ふと、いつからこんなふうになってしまったのか思い返してみる。


 ……わからない。最初からこんなようだった気もするけど、初対面の人にこんな想いを抱くなんてありえないし…。

 私が奴隷じゃなくなった日以外、何か特別な事もなかったように思えるし…。

 街に出たときからかな…?うぅうん。もっと前から、エジィリィの事を目で追っていたと思う。

 じゃぁ…一目惚れ…とか?いや、もしかしたら師匠が私に魅力のポーションを使ってるかも。って、そんなわけ無いか。


「はぁ……」


何度目かもわからないため息をついた時、

コンコン…

と、ドアがノックされた。


 あれ、もう夕食の時間かな?


そう思い窓の外を見ると、先程よりは確かに少し暗くなっていた。

何にせよ取り敢えずと、返事を返す。


「どうぞ」


ガチャ……

扉が開かれ、豪華ではないけれど青と白の綺麗なドレスを着た、美しい女性が部屋に入ってきた。

女性の髪は長く水色で、ハーフアップにされている。肌は色白く、黄金色の目はおっとりしていて、引き付けられる感覚を覚える。


 綺麗な人…メイドさんじゃ、絶対ないよね。ラコロンド様の奥さんにしては若く思えるし…。


「はじめまして、(わたくし)、ラコロンドの妻、ラフィリアと申します。どうぞお見知りおきを」

「…あ、わ、私はエイノアといいます。エ…アズリーの弟子をさせて頂いてます。その、お見知りおきを」


突然の自己紹介に少し動揺してしまった。

それにしても随分歳の差があるように思える。


「ふふっ。そう固くならなくて構わないわ。口調だって気を使わなくていいわ」

「わかりました…」

「可愛らしい方。ごめんなさいね、こんな突然押しかけて。あの方の弟子と聞いて直ぐにでも合ってみたくなってしまって。許してくれるかしら?」

「勿論。…その、師匠がやはりご迷惑を?」

「そんな…!迷惑だなんてとんでもない。あの方のポーションにはいつも感謝しいるわ」


 師匠のポーションに感謝?持病でもあるのかな…?いや、美容のポーションの方かな?


「それに、今日は夫の仕事も肩代わりしていただいたようで、本当に、感謝してもしたりないくいよ」

「そ、そうですか。なら良かったです」

「ええ。ねぇ?エイノアちゃん、て呼んでもいいかしら?」

「え…?構いません、よ?」

「そう?ありがとう」


そう言うとラフィリアさんは私の後ろに来て頭を撫でて、顔を触ってきた。


 す、凄いくっつかれてる…。


「…はぁー。いい匂い…それにお肌もすべすべ…。……あっごめんなさい。私ったらつい…!」


ラフィリアさんはっとしたように急に私から離れる。


「その、ね?私の子供達は直ぐに親離れして嫁ぎに行っちゃったから、貴方みたいな可愛らしい子を見るとついつい体が動いちゃって」

「はぁ。私は別に大丈夫ですけど…」

「もぅいい子!そうそう。夕飯まで時間があるから貴女の話を聞きたくて。何でも聞かせてちょうだい?私、貴女の事がもっと知りたいわ」


 …最初は驚いたけど、ついつい甘えたくなってしまうこの感じは何なんだろう。


ラフィリアさんに手招きされるまま椅子に座り、話を始める。


 好きな物の話とかもいいけど、どうせなら……。



まるで、存在しないお母さんに相談するように、私はあの人への気持ちを告白した。

ラフィリアさんは、表情こそにこやかにしていたけれど、静かに私の話を聞いて、優しく柔らかな声でアドバイスをくれたり、自分の話をしてくれた。


 お母さんがいたら。こんな感じだったのかな?


そう思うと少しだけ胸が苦しくなるけれど。彼女はそんな苦しみさえも優しく解きほぐしてくれた。







黄昏時、グランパス山脈上空に立つ者がいた。

その者の背には大きな貯水槽の様な物がついており、身は白いオーバーコートに包まれ、顔には眼鏡に似た奇異な物をつけている。


「これをあの人が?趣味替えでもしたのかな…?」


眼前には50車(150㍍)を優に超える大きさの異形のモノが山そのものを喰い荒らしていた。

その体は喰い漁った大地でできているのか、形こそ人に似ているものの、肉は土や植物、石類でできている。


「やっぱり人がいるな…。(化け物の動向を報告するように遣わされた人達なんだろうけど、あの人達が居ると討伐の手段が限られるな…というか、生物でもない限りあんな巨体、爆破のポーション以外で仕留める方法があるのか?)」


命を持たない死霊の類は本来、その体と意識を魔力依存で保っているため、男の身に着けた装備を起動するだけで倒す事が可能だが、何分大き過ぎる為そうして倒そうとすれば無駄に装備を消耗するだけなのだろう。


このまま見下ろしていても戯れに時間を浪費するだけだと考え、男は大地へと降りる。


「なっ…!貴様!何者だ!ここは立ち入りが禁止されている!今すぐ去らぬと言うのならばその身を拘束させてもらう!」


白銀の鎧に身を包んだ声からして中年程の男が、突如舞い降りてきた青年に威嚇する。


「こんにちは。僕はアズリーと言います。ラコロンド様から化け物退治を仰せつかって参りました」

「……すまない。いつもと装いが違う故直ぐには気づかなかった。そうか、貴殿が来たのならば心強い。どうかあの化け物を始末してくれ(化け物に化け物をぶつけるとは、ラコロンド様も恐ろしい考えをするものだ)」

「ええ、おまかせください。と言っても、貴方方がいては退治できないので、できればここから遠くに離れていただけませんか?」

「了解した。撤収だ!至急この場を離れるぞ!」

『はい!』


男の言葉に騎士団全員返事をし、直ぐにその場を去った。


気が遠くなるような思いで騎士団が遠ざかるのを見届け、青年は騎士団が全員十分な距離を取った事を確認してから再度天高く虚空を駆け上がる。


「念の為に持ってきてはおいたけど、本当に使う事になるとは思わなかったなぁ…」


そんな事を呟き、左腰に着いたレッグポーチから2つの細長い瓶をくっつけた様な形をした、手のひらほどの大きさの瓶を取り出す。

一方の瓶には透明な液体が入っており、もう一方の瓶にはグレイの液体が入っている。


「『レン』」


呟くように発し虚空を歩く。

やがて化け物の真上まで来た青年は、そっと手に持った瓶を落とす。


急激に速度をまして落ちていった瓶は、一瞬で化け物に触れ、パリンッ、と音を立てて砕け散った…。

それより一瞬後


___________________!!!!!!!!!


文字に起こせないような爆音と凄まじい衝撃波と共に、山脈の一部が消失した。

大半の動物達は逃げおおせていたものの、彼等の居場所はたった一瞬で消え去った。


「黒歴史がまた一つ…今度はどんな噂がたてられるのだろう…」


少しがっかりした様な声色で呟いた青年は、しばらくの間化け物が再生しない事を確認して、次の目的地に跳び去った。

空はすっかり、星々に覆われていた。


「(……次また同じくらいデカイのだったら作ってこなくちゃな…はぁぁ……エイノア、今頃どうしてるかなぁ…)」




青年が弟子の元に帰ったのは2日後の早朝であった。



グランパス山脈にて、災害とも言えよう怪物が討伐されて少し経った頃。とある緑地にてもう一体の怪物が討伐された。


「お、お疲れさまですぅ……勇者さま…」


明るい茶色髪をショートボブにした、まだ15にも届かないだろう獣人の少女が勇者に疲れきった表情で声をかける。


「ぅうん…ミアも、お疲れ様」


少女の声掛けに対し、勇者もまた地面に座り込んで返事をする。

近くには様々な人体が継ぎ接ぎされた見た目の異様な化け物が血の海に倒れている。


「お疲れさまです、勇者様。見事なご活躍でしたよ」

「ありがとう。レティシエ、傷の方は大丈夫そう?」

「はい。まだ違和感はありますが、帰還する間の援護ならお任せください」

「そっか。まぁ、俺も直ぐに体力回復するだろうし…あれ?帰還?次の魔物を倒しに行くんじゃないの?」

「…それなのですが……」


女は何か言い難い報告があるのか、口ごもり後を続けない。

表情は何かにい対して複雑な感情を抱いているようで、多少の怒りも感じられた。


「どうしたの?」

「実は……我々の任務はこれで終わりのようです」

「えっでも他の魔物は?まさか、マルブって人が帰ってきたの?」

「いいえ、もう一人の一級が、残り5体を対応するようです」

「それって…確かアズリーって人だったよね。やっぱり、悪い人じゃ無いんじゃない?」

「まさか。きっと何か裏があるに違いありません」

「そう…かなぁ?…まぁでも、そのうち聞いてみればわかるか」

「……」


女は、自分の仲間を殺した一級が今更改心した可能性を信じられず、疑念より生じた得も言われぬ感情にストレスを感じている。

そんな女の顔色をうかがうように、少女はそっと声をあげた。


「あ、あのぉ…」

「ん?どうしたの?」

「今から帰るってことは、もしかしたら劇を見に行けるかもってことですよね?」

「あ!そういえば、ミアは凄い劇を見に行きたがってたよね」

「はい。それで、その、レティシエさん?」


女は抱いた疑念から逃げるように思案する。


「…そうですね。最近は任務ばかりしていましたし、帰ったら劇を見に行くのもいいでしょう」

「やったーー!!」

「ありがとう、レティシエ」

「いえ、ミアも頑張っていましたしね」


エジィリィ

「最後まで読んでいただきありがとうございます」

エイノア

「良かったら感想、ブックマーク、評価等よろしくおねがいします!」

エジィリィ・エイノア

「それでは、またのご来店を心よりお待ち申し上げております!」

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