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賑わう街にて募る思いをひた隠す


日が天高く登った頃。


「エイノア、漸く王都が見えてきたよ」

「おお…って、外壁しか見えないじゃないですか」

「ははは。ごめんごめん、後もう少しで着くよって言いたかったんだ」

「言葉って難しいですね」

「そうだねぇ」



山賊に囚われていた人達に必要最低限の物資やお金を与え、近くの村まで送り届けた俺達は、それから数日、漸く王都に到着するところだった。



街の西門に着いたが、雑用係や商人や旅人による列ができていてすぐには中に入れない。俺達も、衛兵の指示に従って列に並ぶ。


「どれ位で中に入れるでしょうか」

「そうだねぇ。トラブルとかが起きなければ、10刻(30分)程で中に入れるんじゃないかな?」

「意外と早いですね。あ、じゃあ。私も少しくらい馬車の操縦ができるようになりましたし、師匠はこの本読んでおいてください」


そういって『アインとフラン』を俺に渡してきた。


「いやいや、前の人にぶつけてしまうかも知れないし、それに何より、劇を見るときに予め内容を知っておきたくないタイプなんだ。俺」

「えぇー…まぁ、師匠がそういうのなら良いですけど…漸く人助けに賛成してくれるようになりましたし、私も自分の意見を押し付けるのはやめときます」

「あはは…わかってくれたようで何よりだよ」


さらっと、『俺が今まで意見を押し付けていたと』嫌味を言われてしまった。


 割と真っ当なこと言ってる筈だったんだけどなぁ。だって、実際人助けに足元をすくわれる人もいるんだし…。


「師匠、また捻くれた事考えてるでしょう」

「そんなことないさ」

「本当に?」

「…エイノアは感がいいね」

「やっぱりぃ。師匠の考えていることくらいお見通しです」

「ははは。エイノアにはかなわないなぁ」


いつもの様に取り留めの無い会話を楽しむ。


一組、また一組と王都の中に入っていきついに俺達の番がやってきた。


「そこで止まれ。許可証は持っているか?」

「ええ、こちらです」


手に持った許可証を検問の衛兵を渡す。

ただ、これは一級指定要注意人物に指定されたことで渡された許可証であり、初めて使う物なので少し不安だ。


「これは…先ずは先程の言葉遣いを訂正させていただきます」


そういって衛兵は頭を下げた。

一体どうしたというのだろうか。


「それで、ですが。ここは一般の列でして、この許可証を持つ方であればあちらの貴族門から入場することができますよ…?」

「へぇ…まぁ、次からそうさせていただきます」

「ええ。順番待ちの時間も退屈でしょうし、そうされるといいかと。宿はどうされますか?決まっていないのであれば、指定の宿までご案内しますが」

「は、はぁ。じゃあお願いします」

「分かりました。おい!お前はこの方達を指定の宿まで案内しろ!…では、ここからはこの者が案内しますので」

「どうも」


心配とは裏腹にすんなりと王都へと入ることができた。しかもガイド付きで。

あの許可証、渡された時は胡散臭いというか何というか、あまり良さそうなものじゃなさそうだと思っていたけど、存外いい物だった。


「ごめんねエイノア。もう少し早く入れたみたいだよ」

「何で知らなかったんですか…」

「いやぁ、あれを貰ってから王都に来たことがなかったから。まさかここまで厚遇される物だとは知らなかったんだよね」

「師匠って、ポーションのこと以外は本当にテキトーですよね。まぁ____」

「うん?ごめん。最後の方聞き取れなかった」

「…聞かなくていいことですよ」

「そうかい?」


 たまにこんなふうに態と俺に聞こえないように喋るときがあるよなぁ。どうしてなんだろう。



少しして、大きな建物に到着した。

庭は広く噴水があり、建物の窓は全てガラスでできているようだ。いや、それどころかエントランスのドアまでもガラスでできている。

何というか、物凄く高級そうなところだ。


「こちらになります!受付にあの許可証を渡せばその者が対応する筈です!では私はこのあたりで!」


元気にハキハキ喋って帰ってしまった。

すごい早足なところを見るに、面倒な仕事から早く逃げ出したいとでも考えていたのだろう。


「行こうか」

「そうですね」


受付にあの許可証を渡すと速やかに部屋まで案内された。

馬車は車庫に入れておいてくれるらしい。


 …一級指定要注意人物なんていう不名誉も、意外と悪くないものなのかも知れない。


「凄い広いお部屋ですね!」

「そうだね。でも、ベッドが大きいの一つしかないみたいだし、もう一つ部屋を_」

「私は別にいいですよ?それに、もう一つ部屋をとると凄いお金かかりますよ?多分」

「いや、良くはないだろう。いいかいエイノア。普通は_」

「師匠ならいいって事ですよ。私だって、誰とでも一緒のベッドで寝ようとは思いません」


 ……信用…されている事はいい事かもしれないが、やはり駄目なのではないだろうか。

 いやでも、これでまたなんか言ったらそれは、意見の押し付けになってしまうのかな?

 ……婆さん。俺はいったい、どうすればいいんだ?


「それより師匠。地下にはポーションの調合もできる部屋があるらしいですよ!しかもそこにある素材や物は全て使い放題ですって!見に行きませんか?」


 確かに案内の人がそんな事を言っていたけど…。それより、と、片付けていい話なのかな、この話。


「……そう。だね、行ってみようか」



最新の設備が整った工房を見て回った後は町に遊びに行くこととなった。


王都の建物は俺たちが住んでいる街のものと全然違っていて、何処か遠い国に来たような気分にもなる。


露店の品々は見たことのない物も多く、出店の食べ物もあの町の物より美味しく思える。

それに何より賑わいが違う。

勇者がこの町にいるからか、俺の記憶にあるものより大分賑わっていてエイノアの声が聞こえにくいくらいだ。



「師匠!これはなんですか?」

「うん?ああ、これは箸っていって料理をこの二本の棒でつまんで口に運ぶんだ。極東の島国の伝統的な食器だよ」

「へぇ…。この棒で…」

「俺も一度試してみたんだけど、なかなか難しくて全く料理を食べれなかったよ。記念に買ってみるかい?」

「いえ、どうせならその国にいったときに買いましょう」

「そうかい?じゃあまた……」


『また今度』と言いかけて口ごもる。そんな日が来るかどうかわからないからだ。


 いや、いいだろう。どうせあれが完成すれば口約束なんてなんの意味もないんだから。


「師匠?」

「ごめん少しボーッとしてた」

「歳ですか?」

「ははは。酷いこと言うなぁ、俺はまだ20代だよ」

「本当ですかぁ?実はポーションの影響で若返ったお爺ちゃんだったりして」

「ないない。あ、エイノアこの帽子なんか似合うんじゃないかい?」


そう言ってキャスケットを指差す。

すると、「本当ですかっ?」と元気な声を出しそちらへかけていく。


 一般的に帽子はあまり普及しているイメージはないけど、つけている人がいないわけではないし、探せば帽子の専門店なんかもあるんだよなぁ。

 特に王都は色んな人がいるから帽子も結構つけている人いるし専門店なんかも多そうだよな。


「どうですか!?」

「ああ、すごく似合ってるよ。店員さん_」



会計を済まし、また商店街をぶらりぶらりと回っていく。

ふと、辺りに注目して見ると先程より人が多くなっているように思える。


「エイノア、人が凄く多いから気をつけてね」

「わかって_!っとっとっと。えへへ、言われたそばから転びそうになっちゃいました。…その、師匠。腕につかまってもいいてすか?」

「ああ、もちろん」

「ありがとうございます」


照れた表情をしながら腕を組み、また色々なものに目を輝かせながら歩く彼女が愛おしく思えてしまうが……それを押し殺し平静を装う。


「師匠!あそこのクレープ食べてみたいです!」

「あはは。まだ食べるのかい?夕飯食べれなくなってしまうよ」

「今日は良いじゃないですか。ね、一緒に食べましょう?」

「んー、ま、たしかに今日はそういうこと考えるほうが野暮か。それで、エイノアはどの味を頼むんだい?」

「それが、コレとこれで迷ってまして」

「じゃあ2つ頼んで交換しつつ食べようか」

「やったぁ!流石師匠!私の言いたい事よくわかってるじゃないですか!」

「あははは。流石にこれくらいなら察せるよ…」


………

……………


黄昏時。

長いこと街を歩きそろそろポーションの効果が切れそうなことにドキドキしていた頃、エイノアが今日1番興奮気味に声をかけてくる。


「あ!師匠!あそこに『アインとフラン』の劇の張り紙が貼ってありますよ!」

「あぁ本当だ……ねぇエイノア、よく見るとチケット完売って書いてあるけど。俺達チケット持ってないよね?」

「えっ!?……えぇー!!嘘、チケットが必要なんて知りませんでした…!」

「まぁ、チケットを売らないで皆に無料で劇を見せていたら、赤字とかいう問題じゃないだろうしね」

「確かに…私、行けば見れるものだと思考停止してました…」


 ああ…。物凄く落ち込んでしまった。俺も正直、入場料取られる方ではなくてチケットを前もって販売している方だとは思わなかった。それに、チケットだとしても完売するものでは無いと思っていたんだけど…。


「あ、明日の分とかは…?」

「ここを見てみな」

「一週間の公演分、すべて完売…ですか」

「ちなみにこの劇団、どうやら色々な街を転々としているようで、公演も一週間以上やるつもりが無いらしいね」

「そんなぁ…師匠、どうにかなりませんか…?」


 うっ…そんな上目遣いで言われても…。いや、手がないことは無いんだが…うぅむ、仕方がないか。


「少し、人を頼ってみようか」



思い立ったが吉日、俺達はとある貴族様の館に来た。

貴族様が館に居るかは分からないが。


「あのぉ」

「どうされた?」


兜を脇に持った大柄で厳つい顔の門番は、警戒しているようだが丁寧な口調で対応してくれそうだ。


「ラコロンド様に用がありまして、アズリーが来たといっていただければ通してくれると思うんですけど」

「アズリー…なる程、貴方が。そちらのお嬢さんとはどういったご関係で?」

「師弟です」

「師弟…!?ですか。な、なる程。所々ここでお待ち下さい」


 凄い驚いてたな。やっぱり、俺の印象ってどこに行っても良くないんだろうか…。


「貴族の方の権限で見させてもらうって…良いのでしょうか?」

「少しずるい気がするかい?」

「ええ、まぁ。他にも見たい方は沢山いるでしょうし」

「でもさ、俺達は誰かの席を横取りするんじゃなくて、あくまでスカスカの貴族席にお邪魔するんだ。そう悪く考える必要はないと思うよ、むしろ、俺達のチケットの分誰かが劇を見れるんだ。いい事じゃないか」

「なる程…そういう形で見させてもらうのなら良いかもしれません」

「だろう?」


 おや、知っている執事の人が早足でこっちに向かってくる。

 もう60を過ぎていたと思うけど軽やかな足取りだな。俺よりも体力がありそうだ。


「お待たせ致しましたアズリー様方。ご主人様がお会いになるそうです。どうぞこちらへ」


促されるままについて行き、豪華な両開きの扉が付いた部屋まで案内された。


コンコンコンコン…

「入れ」


重く、威厳のある声が扉越しに聞こえた。

一瞬の間を開け、執事の丁寧な動作で扉が開かれる。


「とうぞ」

そう、執事に促されるがまま部屋に入る。

部屋の内装は簡素だった。

本棚に覆い隠された壁に、部屋の中心に置かれたテーブルの両脇に座り心地の良さそうなソファーが一つずつ置かれており、テーブルを挟んで向こう側の窓際には仕事用の机が鎮座している。


机の上に積み重なった大量の紙束の一枚に何かを記入している、茶色の髪と揉み上げと鼻下と顎の髭が繋がっており、怖い顔と怖い目つきの50代後半程の男性。この人がラコロンドだ。


 忙しそうだけど…この人。普段は何やっているんだろう。俺達要注意人物の対応も仕事のうちということは知っているけど…。


「久しぶりだな、サボり魔。まぁ、この町に来て初日に俺のところに来たことは褒めてやる」


 サボり魔、とはきっと。この前招集の手紙を貰った時に何の連絡もなしに行かなかったことを根に持たれているのだろう。

 あの時はエイノアが来る前で、ただ面倒くさかったから行かなかったのだけど…うん、嘘の言い訳をさせてもらおう。


「ご無沙汰しております、ラコロンド卿。以前の招集の件は申し訳なく思っております。何分、僕にも弟子ができたもので」

「…それがお前の弟子か」

「はい。凄く優秀な子です。エイノア、ご挨拶を」

「エ、エイノアと申します。以後お見知りおきを」


ラコロンドが睨みつけるようにしてエイノアを品定めする。


「そんな怖い顔でエイノアを睨みつけないでくださいよ」

「この目つきは生まれつきだ、睨みつけているわけではない。…と、前にも言っただろう」

「……?そんな事ありましたっけ」

「初めてあった時にな」


 そう言われればあったような気がする。


「それで、今日は何の用でここに来たんだ?どうせ以前俺が言った『王都に来たらまず最初にここに来い』という言葉も忘れていたんだろう?こんな時間だしな」

「あはは…。今日はその、お願いがありまして」

「ほう?かの調合師様がただの人に何を願うんだ?」

「今度王都の劇場にて『アインとフラン』という物語の劇をやるのですが、そのチケットが既に完売しておりまして…ラコロンド卿に貴族席に招待していただければなぁと」

「いいだろう。俺の言う条件を果たせたのなら招待してやる」


 (!)まさか即決だとは…俺を何かに招待するって、他の貴族連中から遠回しに嫌味を言われてもおかしくないことだろうに。でも条件ってなんだ?


「条件とは?」

「実は、私も妻とその劇を見に行く予定だったのだが、死霊術師マルブの失踪、魔物の活発化に加えマルブの置き土産と思われる死霊の強力な個体が各地で発生した。そのせいで始末書やら現地に赴いて対応やらで忙しくてな。勇者や冒険者達に協力をしてもらってはいるが、少なくとも劇がやっている期間に型がつきそうにないから、俺の妻も相当ご立腹だ」


ラコロンドの怖い顔が少し崩れ、嫌気が差しているような顔になる。


「お前には、死霊の討伐をして欲しい」

「あの人が作ったものなのでしよう?相当強力な個体なのでは?それこそ、勇者と称される存在でなければ対応できないほど」

「いや、そうでもない。勇者でなくとも実力のある冒険者であれば対応できる程のものだ」

「…数は?いったいどれ程存在するのです?」

「残り8体だ。お前にはその内5体を倒してほしい」

「僕一人で半数以上相手にするのは非効率的では?」

「何を言う。お前なら自慢のポーションで縦横無尽に国を駆け回れるだろう」

「いや、エイノアが居ますので無理ですよ。彼女にはポーションを使った戦闘訓練なんてさせてませんし」

「ならばその子は私が預かろう。丁重にもてなしてやる故心配する必要はない」


 ……エイノアを貴族に?正直嫌なんだが…。だからといって断ってどうする?条件を別のものにしてもらうか?

 いや、殺し以外の事を俺がやろうとしたらそれこそ全体の効率が悪くなる。多分だが、勇者はそれ程の機動力が高くないし、冒険者も同様か、それとも一体倒すのに相当時間がかかるのだろう。

 であれば、俺が報告書を書くわけには行かないし、大陸の魔物の間引きをしても死霊が残っているのならラコロンドは劇を見に行くことができないのだろう。

 だからといって、エイノアを貴族の下に預けるのは……。


「師匠?私は大丈夫ですよ?」

「エイノアが良くても、俺が嫌かな。貴族というのは大半が碌でもないものだからね」

「それを俺の前で言うか」

「ええ、貴方様に遠慮は不要なのでしょう?」

「そういうことだけは覚えているのか……。はぁぁ……。お前がその娘の事を大切に思っているのは理解したが、安心しろ。その子には一切不快な思いをさせはしない」

「師匠、お気持ちは嬉しいのですが。貴族様もそう言ってますし…私だって、師匠から教わった自衛手段や貰った装備もありますし、過保護にされなくても大丈夫ですよ」


 か、過保護…か。確かにそうなのかもしれない。このままじゃむしろエイノアに悪影響か…?


「……………分かりました。討伐対象がいる場所の地図をください。すぐに終わらせて来ます」

「わかった。少し待っていろ、すぐに用意する」

「あぁ後、エイノアをこの館に滞在させるのであれば、宿に荷物がありますので取りに行かないといけませんね」

「それは後でこちらでやっておこう。それより、地図にマークするのは終わったぞ、どうする、今から行くか?」


 ……やっぱり心配だけれど、やらなくてはならないのだし早く終わらせたほうがいいか。

 仕方がない。少し、'頑張る'としようか。


「ええ。そうさせていただきます。エイノア、装備やポーションは肌見離さず持っておくんだよ?それと、貴族相手と言えど遠慮はいらない。嫌な目にあったら文句を言って、身の危険を感じたら迷わず殺すんだ。いいね?」

「そんな物騒なことしませんよ…師匠、心配性過ぎです。もう少し人の良心を信じた方がいいですよ?」

「ははは…。考えておくよ。それじゃあ、行ってくるね」

「はい。頑張ってください!」



エイノアと別れ宿に装備を取りに行く。

装備の中にポーションがちゃんと入っているか確認して、全て(・・)装備する。


「あぁ。初東雲を使うのは久しぶりだな…」


目を瞑りほんの少し懐かしいこの感覚に浸る。


「…さて、行こうか」


門から出るのも面倒なので外壁に跳び乗り、そのまま最初の目的地点へ跳び去る。


飛び去る時、外壁の一部を踏み壊してしまったけど…それもきっとあの人が対応してくれるだろう。



教会。その一室にて、黄金の髪の修道女が勇者と相対し重い口を開く。


「主より、信託が下りました」


間を使い、慎重に後を続ける。


「マルブ・スピオラの失踪と同時に、そのマルブ・スピオラの作成した死霊がこの国を荒らしている。と」

「俺達にその討伐を?」

「ええ、勇者様御一行でなければ倒せない程の死霊だと聞いております。ですので、是非そのお力を振るっていただければ…」

「わかりました、任せてください。それで、ですが…相談があるんです」

「何でしょう?」

「俺達のパーティには回復役が居ないんです。もし良かったら、俺に力を貸してくれませんか?」


その内にどれ程の下心が混じっていようと言葉だけは真っ当なものを選び、真剣な表情で勇者は告げる。

しかし、『真意の魔眼』を保持している修道女には勇者の狙いが筒抜けになっていた。


「申し訳ありませんが私は主に身を預けた身、ここを離れるわけには行きません。ですが、勇者様と動向を共にしたいという者がいないか、こちらで探してみます」

「絶対、駄目ですか?」

「はい。申し訳ありませんが」

「そうですか。ですが、気が変わったら何時でも声をかけてください」

「わかりました」


教会を後にした勇者達は各々任務のための準備に取り掛かる。


夜が更けた頃、女の部屋にそっと忍び込む影があった。

息遣いは少し荒く、脳は興奮に埋め尽くされている。


天蓋付きのベッドにそっと乗り込みタオルケットをそっと剥がす。

横たわるは透明度の高いキャミソールに身を包んだ女。季節の割に寒そうな物を身に着けているが、部屋が暖かいので問題がないのだろう。


はやる気持ちに負け更に息遣いを荒くしながら女の胸に手を伸ばす。


「んっ……」


女が反応したことで体をビクつかせたが、起きていない事にホッとし胸を撫で下ろし、再度女の体弄り(まさぐり)始める。


少しの間、一人で事を済ませようとしていると、流石に異変に気づいたのか女が目を開ける。


「……勇者…様…?」

「あっ…!ご、ごめん。俺、我慢できなくて。起こすつもりは無かったんだけど……その、またあれ、やってくれない…?」

「…仕方ありませんね。ですが、こういう事は事前に仰ってください」

「ごめん。次からそうする」


艶めかしい声で勇者をなだめ、勇者に奉仕を始める。


元とはいえ騎士団の副長、寝ているとはいえ体を触れれば気づく。

起きていながら少し泳がしたのはやはり、勇者の傀儡化に必要な事だったのだろう。

復讐のための'道具'、体のいい道具の'手入れ'。

果たして、過去に囚われた女の努力が報われる事はあるのだろうか。


エジィリィ

「最後まで読んでいただきありがとうございます」

エイノア

「良かったら感想、ブックマーク、評価等よろしくおねがいします!」

エジィリィ・エイノア

「それでは、またのご来店を心よりお待ち申し上げております!」


エイノア

「師匠、幾ら感情的になっているとはいえ、貴族様の前であれは失礼だと思います」

エジィリィ

「ははは。そうだったね。次からは気をつけるよ」

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