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俺の推しVtuberがまさかのバ美肉声した父親だったなって、そんなの俺は認めない!【読み切り版】

作者: 先生

えー、完全にノリの一発書きだったのですが、

なろう史上最大瞬間風速を記録いたしました。

この作品を【読み切り版】として【連載版】を作りたいと思います。

タイトルの一発ネタにはならない様に、死に物狂いで頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。

ヒロインの顔くらいは出せると思います。


たぶん木曜にはお示しできると思います。


大変のアクセス数ありがとうございました。


https://ncode.syosetu.com/n9547gz/ ← 連載版お待たせしました。

 「父さん、アイドルになるから」



 父親はそう言って家を出ていった。


 まだ八歳にも満たない俺と、四歳の妹と母親を残して。


 たぶん、俺の記憶違いだったかもしれないし、母さんに聞いても何も教えてくれなかった。


 母さんはよく、俺の左腕をさすりながら話してくれた。


「あの人は遠い国いっちゃっただけだから、必ず帰ってくるから、大丈夫よ」


「ほら見て、この痣お父さんにそっくり」


 父には俺と同じ痣があったようだが、俺はそんなことは別にどうでもよかった。


 幼いながらにして父は、母と俺と妹を捨てだんだと、理解できたから。


 父親の話をするたびに、悲しい顔をする母親を見て居られなかったから二度と父親の話はしなかった。


 








 時は流れて八年後、四月十二日月曜日



「たぁああああ、そこ、タクマそこだよ! そこ赤コンの裏ぁああああ 」


「任せろ、アユムゥゥゥ、おし! ワンノック!」


「ナイスゥ!」



 東京から少し離れた郊外のワンルームで、34インチモニターと24インチ縦型モニターを眺める一人の男子大学生がいた。


「これ! わんちゃん!?ある?」


「ある? ある? 俺らチャンポンとっちゃうかもよぉ!?」


 装着したヘッドホンからは二人の男性の興奮した声が聞こえてくる。


 あー、この時間暇だ。


 画面に映る軽快にフィールドを爽快に疾走するキャラとは違って、俺のキャラが地面に足をついていた。


「盛り上がるのはいいが、早く俺を起こしてくれ、あとゲージがミリだ」


 このまま死にますよー私、あーって。


 机に置いてあった二リットルのコーラのペットボトルがいつの間にか空になっていた。


 あー取りにいかないと。


 わかってる、わかってるって、アユム俺セルまくから、コウダイを起こしといて」


「おっけー、了解って、うわぁああああ」


 あー、無理っぽいなー。


 所詮は大学生のお遊び、一人欠けてる状態で一人が叫んでだら、それはもう瓦解の合図だ。


「おい、どした!」


「敵! 敵! 敵! 崖上から三人降りてきた、降りてきた! ごめんダウンした!」


「おい、嘘だろ、マジかよ」


 ほらなー。


「俺飲み物取ってくるわー」


「ちょっ、コウダイ、まてよ、試合の途中だ……」


 俺は友人の忠告を無視してヘッドホンを外し、飲み物を取りに冷蔵庫まで歩く。


 一人暮らしには少し豪華な300Lの冷蔵庫を開けると、悪臭が俺を襲った。


「うっわぁっ、なにこれ。クッサ、えっ」


 あまりの匂いに顔をしかめ、一度扉を閉める。


「え、なに?」


 俺は突然の刺激に扉を閉めてしまったが、その原因を探るためにもう一度扉を開ける。


 よくよく冷蔵庫の中を観察すると、中段に身に覚えのないラップ掛けした器が鎮座していた。


「なんだこれ……うわっ。これやん」


 さらさらの液体の中に固形物が浮いているのが見える。


 息を止めて冷蔵庫から謎の物体Xを取り出して、ラップ越しに見ても正体がわからず、そのままシンクに流した。


 シンクに流し、流出物を見て正体を把握する。


「ラムネ、タコ、ヘドロかした何か……フリスク、ああ、昨日あれか」


 昨日友人二人(あいつら)やった闇鍋のやつか、というか誰だよ、昨日残りを冷蔵庫にぶち込んだ奴は。


 「まったくめんどくせぇことすんじゃねぇよ」


 悪態をつきながら、水道から水を出し、ゴミを洗い流し、換気扇の電源を付けた。


 俺は流れ切らなかった物体Xをそのまま、シンクを放置して、冷蔵庫から臭くなった紙パックのミルクティーを取り出しパソコンの前に戻る。


 画面には先ほど予想した通りに『部隊全滅』の文字がならんでした。


「おい、おい、誰だよ昨日の物体Xを冷蔵庫に仕込んだ奴は。マジ激臭なんだが、どうしてくれんの、殺すぞ」


そう言いながら、ヘッドホンを被りながら画面の向こうの悪友に問いかける。


「お、コウダイ帰ってきたなぞ、アユム」


「おい、コウダイ!聞けよ、すげぇぞ、さっきのやつ」


「すげぇのは、ウチの冷蔵庫の中身だよ、匂いマジやべぇんだけど」


 画面の向こうの悪友たちのしてやったりという大爆笑が聞こえてくる。


 「はぁっはぁっはぁっあはああああああああ!」


 「ふぅっはっはっはっはっはははは! はぁーぁーはあーあ、やっと気づいたのかよ、お前」


 「いや、普通気づくっしょ、冷蔵庫の中とか、お前どんだけ開けないんだよ冷蔵庫」


 「いやー、もう開けた後かと思ったわぁー」


 確かにもうこいつらとFPSを初めて四時間くらいは過ぎている、しかし冷蔵庫は今日初めて開けた。




「いや、俺はだな」


「それより聞けよコウダイすげぇんだって!」


「そうだ、そうだコウダイ」


「ん?」



「さっきのチームみりんちゃん達だったぜ! 『大黒天』の配信に、俺たち載ってるかも知んねぇよ!」



 こいつらの言っている『みりんちゃん達』というのは、ここ数年でYoutube業界で話題になったVtuberという配信者のことを指している。

 Vtuberというのは、Youtuberやほかの配信者と違い、普通に顔を出して放送するのではなく、トラッキング機能を使い、自身の顔の動きや、体の揺れなどを検知し、二次元のキャラを自分の代わりのキャラに動かし、ゲーム実況者や歌ってみたなどを行う形態の配信者。


 そして彼らの言う『みりんちゃん達』というのは、俺らの中ではアイドル的存在のVtuberであった。星の数ある中Vtuberの中で彼女達は別格だ、俺達の中では。


 彼女達の正式名称は、株式会社カレンダーが運営するゲーマー集団Vtuberチーム『大黒天』である。

 

 メンバーは、【ASMR】【モノマネ】【歌枠】【耐久配信】すべてを極めた、チャンネル登録90万人を超える圧倒的エース、トレードマークは鎌のマーク、『大鎌みりん』。

 

 【視聴者参加型】【お絵描き雑談配信】【凸待ち放送】とコミュニケーション特化の鬼、チャンネル登録71万人を超える株式会社カレンダーのムードメーカー、トレードマークは雲のマーク『天野かりん』


 【FPS】しか勝たん! その腕前はプロをうならせる。FPSゲーマーの申し子、チャンネル登録 52万人『マリー・黒島・オルゴール』。


の三人の名前から1文字づつ取ったチーム名である。何と言ってもすごいのはその実力である。彼女達のFPSの腕前は一流、動画配信者の中でもトップを走るスコアを生放送でたたき出し、今やFPSユーザーの中では知らない人はいないレベルだ。


 俺の悪友の二人である、三ヶ島歩夢(みかじまあゆむ)畔上琢磨(はんじょうたくま)は、その生配信に俺たちが映ったかもしれないと興奮しているのだ。





「まじかよ、ってそれ本物なのか? 確かにレートマッチじゃないとしても彼女達の偽物じゃねぇの?」


「いや、それは琢磨が放送を確認してきた! そしたら『大黒天』は放送してるんだ! まだアーカイブになってねぇから確認できないけどよワンチャンあるぜ!」


「まじかよ」


「マジ、マジ」


 だが俺らのやっているゲームは三人で一チーム形式で、二十チームが一斉に戦うバトルロワイアル形式のゲームだ。一置試合の平均時間は二十分前後で、三時間も生放送をすることもある彼女達とは、当たる確率は無くは無いのだ。


「まあ、今日はラッキーだったんじゃね。偽物かもしれないけど」


「いやー、崖上からの、かりんちゃんのヘッドショット神だったわー」


「あれがマリーちゃんの一発ならもう満足死だわ」


 友人二人は憧れの推しVtuberと思われるプレイヤーに殺されたことが大層喜ばしいらしい。


「コウダイ、おいお前、もうちょっと喜べよ! 『大黒天』だぜ、『大黒天』」


「『大黒天』かもしれない、だろ、もしかしたらそうかもしれないけど」


まあ、そうなのだろうよ。でもただ殺されただけだぜ。


そして俺は言ってやった、俺の必殺の決め台詞を。


「俺は『星空ヒカリ』ちゃん一筋なんで」




「ああ、そういえばお前はあの年増ファンだったな」




「てめぇ、その発言訂正しろ! ヒカリちゃんは年増じゃねえぇよ!」


「いや、正直年増でしょ。声はかわいいけどさ、歌枠の選曲が……あっ察しって感じ」


「そうだよなー、ちょっと古いんだよね、俺達でも若干な曲たまにあるし、ワンチャン年上」


「そんなことねぇよ! 『星空ヒカリ』ちゃんは星空高校の高校二年生! 好きな食べ物はあんドーナツ、趣味は動物を愛でること! 苦手な物はお化け、廃校してしまう星空高校のために広報部部長として広報活動を頑張るけなげな高校生なんだよ! その言葉訂正しろやぁ!」


「いやー、流石に属性盛りすぎっていうか」


「ねぇ、高校二年生は流石にダウト」


 確かに本当にそうとは思ってはいないけれども、本当は二十歳くらいのおねぇさんかもしれないけど、俺はその設定の彼女を推してるんだよ!しかしそれを含めてファンなんじゃないのか! じゃあやってやるよ戦争だよ。



「そんなこと言ったっら『大黒天』だって! 実はゴーストプレイヤー疑惑あるだろ!」


 あり得る話である、ゴーストプレイヤー。Vtuberは顔が見えない。プロのFPSプレイヤーであれば、自身の手元を移すカメラを用意するが、Vtuberはその性質上手元も見せることができない。有名で多芸であればあるほど、その疑惑は尽きない。実際にそういったことが行われていたこともあったのだ。


「はぁー、それを言ったら戦争なんだわ、俺のマリーちゃんがそんなことするわけないだろ。というか生放送してる時点でそれはあり得ないんだわ」


「そうなんだわ、みりんちゃんは正真正銘のFPSゲーマーなんだわ。じゃなきゃこの前の大会で優勝した時にあんなに号泣しないんだわ、本当なんだわ!」


彼らのゆうことは確かにそうだ、普通のゲームやお絵描き放送と違ってFPSは非常にゲーム展開が早いゲームだ。やられた瞬間に自身がリアクションをしなくては、不自然になってしまう。別取りの録画放送であればいくらでも編集はできるが、彼女達は生放送がメインだ。

 俺もそんなことは、わかっているが自分の推しに泥を塗られたらもう戦争しかないのだ。


「あーぁ!? やるかぁ!?」



「そういえばコウダイ、もう一七時二十分だけど、ヒカリちゃん配信予定じゃなかったっけ?」



「はっ!」


 畔上の発言で我に返る。パソコンの時計は確かに一七時二十分を示していた。


「うわっまじかよ! じゃあ俺落ちるわ」


「おいおい、いいじゃねぇかよ。まだやろうぜ、どうせ見ながらも出来るだろコウダイ」


「そうだぜ、お前んちデュアルモニターだろ、片方で流せよ」


「そしたら、コメントできねぇじゃねえかよ。星空高校の広報部部員として俺はそんなことできない!」


 広報部部員というのは『星空ヒカリ』が決めた、俺達ファンの総称のことだ。俺たちは彼女のファンになる事で彼女と一緒に星空高校を盛り上げていくという事だ。


「じゃあ、放送終わったらまた夜に入るかもしれねぇや! おつー」


「おつー」


「じゃあねー」


 悪友達との通話を切断し、俺は急いでYoutubeを開き、彼女のチャンネルのページに飛ぶ。


「やべぇ、乗り遅れた」


 やはり配信は始まっていた、開始時刻は十七時ちょうど俺らが試合を始めたくらいの時間だ。


「しまったぁ、完全にすっぽかしてた」


 配信ページに入り、コメントをする。


 はんなり:うぉー、配信遅れたーごめんね、ヒカリちゃん


 登録者数30万人を超える彼女が、コメントに反応してくれるわけではない訳ではないが、ファンの一人としてそうコメントせずには居られなかった。


 今日の配信は久々のコラボ放送だ、あまり彼女はコラボ放送をしないというのに、それに乗り遅れるなんて俺はなんて失敗を。


 コラボ相手は『クリスタリア・ベール』ファンの愛称はベルちゃん。彼女はコラボをメインに配信をしているVtuberで、コラボをした相手に事前にファンから集めた質問を、インタビューをするのが主な配信内容になっている。質問の内容はファンならみんな知ってるという普通なものや、その魂に関わる際どい質問まで様々だ。台本があるとか無いとか噂はあるが、それは視聴者には知る由もない。


「うわ、俺の質問読まれたかな、アーカイブ確認してたい」


 そんな事はありないと思っているが、どうしてもわずかでも確率があるなら気にしてしまう。それがファンというものだ。


「えー、流石にそれは乙女の秘密です! やめてくださいよー女子同士でも流石にそれは恥ずかしいですぅ」


「いやいやーみんな気になってますよー、どうなんですかー」


 質問内は……今日のパンツの色だった。


「だぁあああ、誰だよこんなセクハラ質問したやつは! ありえるかよ! 俺たちのヒカリちゃんにそんな質問すんじゃねぇよ」


 まさに厄介オタクここに極まれりである。


「そんな糞質問より、俺の『ヒカリちゃんはポッキー派ですか、プリッツ派ですか?ちなみに僕は甘いものが好きなのでポッキー派です』って質問採用しろよぼけええええええええ」


 気持ち悪さはトントンってところである。


 部屋で気持ち悪い叫びをしていても、配信にもちろん聞こえないし、伝わらない。配信は続いていく。


「えー、じゃあじゃあ、パンツの色はあきらめるとしてぇー」


「だから、最初から言うつもりはは無いですって」


「じゃあ、じゃあ『星空ヒカリ』の由来を教えてくださいよー」


「えー」


 出たよ、メタ発言。ヒカリちゃんが企業じゃない個人勢配信者だからってこいつ、調子乗りすぎじゃないのかコイツ。


「えー、うーんそうだなー」


「おっ、おっ、もしかして聞けちゃいます? 『星空ヒカリ』ちゃんの誕生秘話!」


「誕生秘話ってそんなのないですよ、私はずっーと『星空ヒカリ』ですよっ! もう」


 そうだ、星空ヒカリちゃんは星空ヒカリちゃんなのだ。


「あーっでも、ここだけの話ですよ」


「おぉーお、お前達切り抜き準備だ! 準備はいいか!」


「もう、大袈裟ですよ、ママに聞いたんですよ。ママに」


「ほうほう、それでそれで」


「ママに聞いた話だと」


 やはり気になる彼女の由来、自分が1年以上は推しているVtuberだ。魂が気にならないわけではなかった。


 

「私、左の二の腕に星型の痣があるんですよ」




「――はぁ?」




突然の話に思わず、声が出る。


「そしてママとパパがこの星の様に輝いてほしいって、意味を込めてヒカリってつけてくれたらしいんです」


「へーって、星の痣ってそれってただのジョジョネタじゃないかーい!」


「あれ?、バレちゃいましたか?」


「もう、結局パンツも由来もはぐらかされちゃいましたねー、あっでもヒカリちゃんがジョジョ読んでるってことがわかったってことで、星空高校の生徒みなさんゆるしてくらーさい」


「えー、それでは次の質問へ……」



 何が起きてるんだ、今彼女はなんて言った。


『私、左の二の腕に星型の痣があるんですよ』


 彼女の言葉が脳内に再生される。そして幼いころに母に言われたことを思い出す。


『ほら見て、この痣お父さんにそっくり』


 俺はヘットセットをぶん投げて、洗面台に駆け込み、自分の左の二の腕を確認する。


 そこには二十年間ずっと見てきた、痣がある。



  『星型』だ。



 昔ネットでバズった呟きを見たことがある


『身体のどこかに痣がある人は、"来世貴方がどんな姿に生まれ変わってもその痣を頼りに迎えに行く" 』


「嘘だろ」


 全身が冷や汗を噴き出す。


「いや、そんなわけはない、彼女が偶然にジョジョネタをかましてきただけなんだ、そうだろ」


 そんなわけないんだ、彼女はまず女性だろ。というかありえないだろ、そんなこと。


「いやー、焦ったわー。マジ」


 冷静を取り戻して、自室に戻り再び配信を視聴する。




「……だから、虫は食べたことないですって」


「本当ですかぁ?」


 画面を眺めるとそこにはいつもの彼女が居た。相変わらず可愛い。癒しボイスだ。


 さっき自分がどんなバカな妄想に、囚われていたが笑えてしまう。


 「なに一人で慌ててたんだが」


 その後、俺は配信が終わるまで、ほかの部員と一緒にコメントをしながら放送を盛り上げた。





「いやー、今回も最高だったわ、星空ちゃんマジ天使」


 一時間半にもおよぶ配信が終わり、感無量であった。


「まさか、ヒカリちゃんの苦手な物がカニで、水泳が得意だったなんて、意外だったわ。水泳が得ってことは新衣装は……水着かぁ? やっぱりスクール? 競泳? もしかしてのビキニパーカーかぁ! なんちゃって」


 ボイスレコーダーで録画したら一生ゆすれそうなほど、気持ち悪い呟きがワンルームに響く。


「しかし」


 彼女が人気になればなるほど、嬉しいし、誇らしくなる。でも自分だけ知っている彼女が他人に取られ

るように感じる。


「スーパーチャットか」


 特に顕著なのはスーパーチャットの存在だ。

 スーパーチャットとは配信者に直接お金を振り込みながらチャットをする行為の事。上限は五万円でお金をかければかけるほど、一度に入力できる文字数も多くなり、画面にも残り続ける。そして彼女に印象も残る。


 それはそうだ、上限とはいえ五萬円は大金だ。大人が稼ぐにも1週間はかかる大金だ。そのお金を彼女に意思疎通をするために払うのだ。その行為は異常ともいえる。1時間の配信で累計五萬円のスーパーチャットが投げられば、単純計算で時給五萬円だ。たとえ配信もとに幾分か取られるとしても異常な数値だ。


 もちろんスーパーチャットが悪いとは思わない。俺みたいな貧乏大学生と違って、そういった人たちが彼女達の活動をさせているのだから。しかしスーパーチャットが投げられれば、投げられるほど彼女、『星空ヒカリ』の中ではんなり(自分)の存在が希薄になっていくのを感じる。


 最初の登録者数が少ないときには、より密に感じられた配信も、今では有象無象の一人なのだろうと感じてしまう。


 所詮俺は大学生、バイトはしているがぽんと1万円投げられる財力は無い。


 彼女が俺たちをおざなりにしている事は無い、未だに俺のハンドルネームを覚えていてくれている節はあるし、彼女のTwitterkaからフォローもされているし。しかしどうしても彼女が人気になり、スーパーチャットを投げるファンが増えれば増えるほど、焦りを感じる。


「おし! 次の配信で投げて見っか!」


 一万円くらいなら、来週までじり貧生活を送ればなんとかねん出できる。最悪、あいつらに借りるワンチャンある。


 そんなバカなことを考えながら彼女のTwitterを確認し今日の配信内容や、次の配信内容を確認するそこには。


【来たれ!星空高校生】これは自分だけって特技、エピソードをお持ちの星空高校の生徒さん募集!と書いてあった。


「これだよ、こういうところ好きなんだよなー」

 

 彼女は人気になっても俺たちを蔑ろなんかしない。俺たちのことをしっかりと考えてくれている。


「しかし、あれだな」


 なんか、あるか俺に。今まで平凡という人生を全うにあるて来た大学生二年生のオタクの俺に。しかしこれは、彼女の印象に残るにはこれはいいチャンスだ。俺は古参リスナーだから名前は覚えてもらってるしさらに印象をつけるチャンスだ。


「んー、FPSうまい? とか?」


 いやいや、そんな奴ごまんと居るし、『大黒天』のような超絶プレイではない。平均よりうまい程度だ。


「大学生は……居るだろうしなんか、そうだ!」


 今日の彼女の配信を思い出す。


「星型の痣だ!」


 彼女が今日の配信で、自分の名前の由来と言いながら、かましたジョジョネタを思い出す。


「これだ」


 ジョジョを読んだときには俺には波紋が使えると思ったもんだ。


 これなら彼女の言ったことだし絶対に印象に残る、ワンチャン採用だってあり得る。


「来たわ」


 俺は意気揚々と上半身裸になり、脱衣所に行きスマートフォンを構え、撮影を開始した。


「こうか、それともこうか。いや腋毛はまずいか」


 所詮は普通の大学生、体を鍛えているわけではなく、流石に上半身が入っていると写真で見るに堪えない。そしてなにより彼女にだらしないからだとバレるのも恥ずかしい。はんなりは彼女の中ではかっこよくありたいのだ。


 三十分のむなしい撮影会のすえ、結局腕と分かる画角で痣の写真を採用した。


「んー、どうする」


今度は写真を送る文章に悩む。


「いかに彼女に良い印象を与えながら、自分がどれだけ星空高校の部員としての歴が長いかを伝えるか」


 そうして一時間悩んだ結果


 ―――――――――――――――――――――――――――――


 ほっしっしー


 はんなりです、いつも放送楽しみにしてます!


 ヒカリちゃんの放送は初期の【絶体絶命】チャンネル登録数1000人行くまでホラーゲーム耐久から見てます!


 いつも星空ちゃんの可愛いいボイスに癒されまくりです。


 特に【安眠ASMR】のシリーズはいつも寝るときに聞いています!もう最高です!


 私は大学生二年生です。


 バイトとか勉強とかで忙しいからスーパーチャットはあんまりできないけど、いつもヒカリちゃんの放送は参加して応援してます!




 それで今回の企画なんですが、私には特技?というかすごいものがあります!


 [写真]×2


 あんまり鍛えてなくてごめんなさい。


 どうですかわかりますか? さっき放送のあったクリスタリア・ベールさんとのコラボ放送であった星空ヒカリちゃんの名前の由来?というかジョジョネタで話していた痣です。


 もちろん加工ではありません、念のため別アングルの写真も送ります。


 インターネットで痣は、前世の恋人がお互いがわかるようにって話がありますけど、俺はもしかして!?




 なんか恥ずかしいこと言った気がしますが気にしないで下さい。


 はんなり


 ―――――――――――――――――――――――――――――



 我ながら完璧な文章だ。自分が古参ファンであることを印象付けながら、彼女に好印象を与える文章だ。

 確実に厄介オタクの怪文章でしかないが、彼は憧れのVtuberへいかに自分を印象付けるかで頭がいっぱいだで、客観的に自分の文章を読む能力は無かった。




 何度も何度も文章を読み返したから大丈夫。


 恐る恐る送信ボタンを押した。


「うひょぉぉぉおぉぉぉおお、どうかななぁぁぁぁ」


 憧れのVtuberに、怪文章のDMをしたのにもかかわらず本人は羞恥に体をよじる。


「どうかな、どうかな、俺ワンちゃんあるかなぁ!」


 ワンちゃんというよりかスリーアウトだ。


 興奮冷めやらぬまま、キッチンで食事の準備を始める。


 昨日の闇鍋で冷蔵庫の中身は全部あいつらに使われてしまったしな、むしろ物体Xとかいう生ごみだけしか残らなかった。


 冷蔵庫を開けてみたが、未だ腐臭しか漂わずに、調味料しか残っていなかった。


 俺はあきらめてインスタントに頼ることにする。


「今日はーペソングか、夜道の焼きそばどっちにすっかなー」


 カップ焼きそばにお湯を注ぎ、いったんパソコンの前に戻る。先ほどのDMが返信が無いか不安であるら。


「まあ、あるわけないよな」


 ほんの数分前に飛ばしたダイレクトメッセージだ。そんなすぐに反応なんてあるわけないし、反応を返してくれることだってあり得るかもわからない。


「ほらなー。ん? 返ってきてる」


 何度、目をこすってみてみても、俺のTwitterの通知欄には1と通知がついていた。


「おい、おい、ワンチャンあるんじゃないの!」


 残念これでコールド負けだ。


 興奮して開いてみたTwitterには更なる興奮が待ち受けるメッセージが並んでいた。


 

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 ほっしっしー


 早速のネタ提供ありがとうございます、はんなりさん!


 いつも配信来てくださってありがとうございます!


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「まじかよ! まじかよ!」




 彼女は俺の名前を憶えてくれていた。きたああああああああああああああああああああああ




 そのまま文章を読み進める。



 ―――――――――――――――――――――――――――――



 それで今回の写真なのですが、本人が特定できてしまうかもしれない写真なので


 ご提供にあたり、許可も兼ねて、お話をしたいと思うのですがいかがでしょうか。




 よろしければこちらにご連絡ください → 星空ヒカリ#212434


 ―――――――――――――――――――――――――――――




「おい、おいおいこれってヒカリちゃんのディスコードアカウント!?!?!」


 彼女と話せる! マジ! マジかよ! 神! 神ありがとう!


 そのまま俺はディスコードに彼女のアカウントを検索し、友人申請を繰る。すぐに返信がありチャットが飛んでくる。



 星空ヒカリ:早速の返信ありがとうございます。はんなりさん


 星空ヒカリ:それで、早速ですが詳しくお話を聞きたいので通話をしたいのですがよろしいでしょうか?


「やっべええ、ついに星空ヒカリちゃんととととととと」


 はんなり:はい!!!!こちらも大丈夫です!




 そして通話がつながる。




「ほっしっしー、星空高校の広報部、部長の星空ヒカリです!はじめましてー」


「はっはっはじめましてえ。は、はんなりです。あ、あのずっとファンでした!」


 放送と同じ挨拶だああああああああああああ。


 それはまるで、初恋の告白の様にしどろもどろになりながら挨拶を何とかかわす。


「あははー、はんなりさんいつも配信来てくれてありがとねー、それで」


「は、はい!ぼ、ぼくは昔からヒカリちゃん、いや星空ヒカリさんのことが」


 お、推しが俺の名前をおおおおおおおおおおおおおお。 


 それはまさに絵にかいたような、きょどり具合であった。突然のあこがれとの会話、何と手でも印象に残りたい、いい印象になりたいと彼なりの努力であった。


「それでね、この写真の事なんだけど」


「は、はい!」


「ちょっと詳しいこと聞きたいかなーって、エピソード的な感じなんだけど」


「は、はい!この痣は小さいことからあります! 嘘に聞こえるかもしれないけど、母からはお父さんにも同じ痣があって! あってでも親父はいまはいなくて、」


 一の説明でいいものを十まで説明してしまうのはオタクの佐賀なのだろう。


「お父様にも同じものが?」


「えっ?あっはい。話だけですけど。俺が小五の時に親父は『アイドルになる』なんて言って喪失しましたって、こんな話使えないですよね、すいません」






「おまえ、光代か」






「え?」


 先ほどのまでの可愛い声からは想像もつかないほど、野太い声が聞こえ理解が出来なくなる。


 え? あれか彼女の同居人的な? それにしてもコウダイっていわなかったか今。


「おまえの名前は 緑川光代(みどりかわこうだい)だな! そうだな そうなんだろ」


「え? っいや、俺の名前は細川光代(ほそかわこうだい)ですけど、ヒカリさん? なんか別の男の声が」


「ああ、母さんの苗字なのか、それはそうか」






「え?」






「俺の名前は、緑川大吉(みどりかわだいきち)アイドルVtuber星空ヒカリの魂兼、



 お前のお父さんだ」




俺はさっき送ったDMを思い出した『インターネットで痣は、前世の恋人がお互いがわかるようにって話がありますけど、俺はもしかして!?』そのまさかだった、俺の推しているVtuber『星空ヒカリ』の前世は俺の親父だった。

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