梅雨、文化祭へ
午前までは快晴だったのに、気がつくと雨が降っていた。そろそろ7月も終わる頃だ。2学期の期末試験の返却が迫る中、クラスは文化祭の話題で持ちきりだった。
「日時計を売ろうぜ!タピオカの次はコイツだ!」
「ちょっと捻って焼きそばとかどうかな…」
「私はジェットコースター派かな」
「セガサターンごっこどうよ??」
華やかさに欠けるこの学校において、最大のイベントが文化祭だ。挙手の雨は一向に止む様子がない。
タピオカブームを超えるべく日時計を猛プッシュする集団「天照」と、ジェットコースターに無常観を見出した強者集団「八岐大蛇」。
クラスの約半数がいずれのどちらかに所属した。他クラスの力を借りようとするグループまで現れ、混沌を極めた。
このままでは、収拾がつかない。ここで、担任が動いた。彼女は、キャリーバックから計40個のフォーチュンクッキーを取り出した。
かと思うと、徐ろにそれを貪り始めた。無惨にも床へと散りゆく「8」や「25」たち。無事だった最後の1つは、教卓の上へ載せられた。
「委員長、貴方が食べなさい。そう、クラス中の期待を背負ってね」
壇上へ上がった。額に汗が滲む。手刀が炸裂する。外郭が砕ける。
中から見えてきた文字を、高らかに読み上げた。
『草薙剣』
ヴォォォォォォォォォ!!!!!!!
「八岐大蛇」内部の反乱グループ、「草薙剣」。彼らの活躍によって、雌雄は決した。
「天照」全員による雄叫びが校内中に響き渡った。咳払いで一旦それを鎮める。私は窓に背を向け、言い放った。
「天照」の勝利である!!!!
ヴォォォォォォォォォオォォォォ!!!
雨は止み、雲の間から光が漏れる。ユミによると、まるで後光が刺しているかのように見えたという。
二度と自分で読まなければ、黒歴史にはならないはず