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難産
「もしかしたら、ダメかもしれない」
妊婦を診ていた医者がそう言った。
この村では、1番の名医だが
彼でもどうにも出来ないなら、もう他に手は無い。
500年に一度の神の器
…これを逃したら次は500年後
「たのむ!なんとかしてくれ!」
男が叫んだ。
男は、妊婦の旦那で神の器となる者の父親だ。
この者、いや、この村には次を待つ余裕は無いのだ。
年々、作物が不作になる事が増え、若者が減り、
伝染病が流行りかけた時は、その一族の家ごと燃やした。
皆、この神様にかけていたのだ。
村の歴史は長く。
これまで様々な神を祀っては、その恩恵を受けてきた。
ある時は、石を金に変える神様
またある時は、どんな怪我も病も治してくれる神様
遥昔、最初に顕現した神様は、
村人達と契約を交わした。
願いを叶え、助ける代わりに
神様が決めた約束、決まり事を守ること
それが守られなかった場合、村は滅びるだろう。
藁にもすがる思いで助けを求めた神様が現れ、
救いの手を差し伸べて下さるのだ。
村人達は、二つ返事で了承した。
こうして、村には神様が決めた風習が出来た。