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一変聖人エデン 1

 鎌倉デートから数日後。清人と真子、さらには健次郎・善幸・一花の五人が一緒に帰り道を歩いていた。


 学校はテスト期間に入り、部活も休みに入ったため久しぶりに五人で帰ることになった。


「早いな、もうすぐ中間テストか」健次郎は言った。


「そうだね~」


「新聞部の活動ができないのは本当に困る! 事件というのは24時間営業なのに」


「まあ、たまには休みなよ善幸」


「テスト勉強しなければならないから休むこともできない!」善幸は叫ぶように言った。


 真子は四人の会話をただ聞いていてしばらく黙っていたが、駅に近づくと急に


「ねえ、みんな」と言った。


 四人は一斉に真子に注目した。


「どうしたの、春川さん」清人は答えた。


 真子は少し考えてから


「五人で勉強会とかやらない?」と言った。


「ああ、そういえばそう言ってたね」


「良いねそれ! 勉強会しよう!」一花は乗り気だった。


「でも誰の家でやるよ?」


 健次郎がそう言うと、五人はしばらく考えた。


「俺ん家は五人で集まるにはちょっと狭いんだよな」と健次郎。


「俺の家は藤沢駅からさらにバスに乗り換えたりして面倒だ!」と善幸。


「私の家は小学生の弟がいるから、あまり集中できないかも」と一花。


「私の家は鎌倉駅が最寄りだから一番遠いわね」と真子。


 四人は一斉に清人を見た。


「……うちでやる?」清人は答えた。


「マジでか! ありがとう清人!」


 四人は次々に感謝の声を述べた。


 四人から言われなくても、清人は元々自分の家で勉強会をしようと考えていた。


 清人の家は藤沢寄りの大船にあり、五人の家のちょうど中間地点に位置していた。それに、親もあまりいない半一人暮らし状態だったので勉強会をするには好都合だと思っていたからだ。


 こうして急遽清人の家で勉強会をすることが決定した。五人は茅ヶ崎駅で東海道線の電車に乗り、大船駅を目指した。


「……清人ん家久しぶりだな。夏休み以来か?」


「ああ、それぐらいだったね」


「賀野君の家ってどこにあるの?」一花は尋ねた。


「大船駅から歩いて15分くらいかかるんだけどね。藤沢も近いんだ」


「へえ、そうなんだ」


「近くのバス停で藤沢駅行きのバスもあるから、帰りやすいとは思う」


 五人はそんなことを話していると、電車は大船駅に到着した。五人は西口出口の方へと向かった。


 西口の歩行者デッキに出るとすぐに、大船観音が見えた。


「あれが大船観音?」一花は指差した。


「そう。駅からすぐ見える位置にあるんだよね」


「やっぱり大きいね」


「まあ俺は見慣れちゃったけどね。特に山の上にあるから大きく見えるんだよ」


 五人は少し立ち止まって大船観音を見上げた。善幸などはスマホを取り出して写真を撮り始めた。


「本当に綺麗ね。美しい白さで、柔和な表情をしているわ」真子は口を開いた。


「そうだね。鎌倉の大仏と比べると歴史は浅いけど、俺は大船観音も好きだ」清人は答えた。


 五人は駅を出て15分ほど歩き、清人のマンションに到着した。マンションに入りエレベーターで6階に到着すると、エレベーターのすぐ前602号室に『賀野』の表札が見えた。


「ここが賀野君の家?」


「そう」


 清人は家の鍵を開け、先に中へと入っていった。3分ほどしてから、四人に「どうぞ」と答えた。


「お邪魔します!」


 四人は次々に家へと入っていった。清人は玄関先で待機していた。


「じゃあ、リビングに案内するよ」


「あれ、清人の部屋でやらないのか?」


「さすがに五人で俺の部屋は狭すぎるよ」


 清人はリビングの方へ四人を案内した。リビングはきちんと整理されていて、大きな机と椅子が五人分用意されていた。


「まあ疲れたらソファーに座っても良いし、台所の方の椅子と机を使っても構わないよ」


 五人は部屋の隅の方にそれぞれの荷物を置いて、荷物の中からテキストや筆箱を取り出した。


「うし! 早速取り掛かるか!」


「何からする?」


「まずは数学からだな」


 こうして五人は勉強に取り掛かった。五人とも根が真面目なので途中でスマホをいじる訳でもなく、誰かの邪魔をする訳でもなく黙々と勉強を進めた。


 特に真子は皆から頼られた。学年三位の成績でどんな教科も卒なくこなす真子は四人に合わせて丁寧に勉強を教えた。


 得意教科の時は善幸や一花も教えたが、とても真子には敵わないぐらいだった。


 こうして勉強を進めている内に壁の時計の針は4時半を指していた。


「……一旦休憩する?」清人は尋ねた。


「そうだな、少し休むか」


「あ、そういえば春川さん門限は大丈夫?」


「大丈夫よ。勉強の時は家に一本連絡を入れれば問題ないの」


「そうなんだ、それは良かった」


 清人は台所の方に向かい、冷蔵庫や棚の中を探った。飲み物はあったが、お菓子類などは無かった。


「うーん……どうしよう」


「いや、気を遣わなくても大丈夫だぞ」


「そういう訳にもいかないよ。ちょっとコンビニで買ってくるわ」清人は外出の準備をした。


「俺たちも行こうか?」


「いや、一人で大丈夫。何食べたい?」


「えーと…じゃあ適当に甘い物で」


「あ、私も」


「俺も」


 清人は玄関の方へと向かっていった。玄関の方からはドアが閉まる音がした。


 残された四人はソファーなどでまったりしていたが、善幸は天井を見つめ、何か考えている様子だった。


「どうした善幸?」


「……三人ともちょっと良いですかな」


「どうしたの?」


「……清人の部屋の中って見たくないか?」


 善幸は真剣な、思い詰めた表情で三人に言った。


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