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元魔王のわんこと勇者  作者: 天戸唯月
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え?どういう事なの?

「王よ。魔王が治めていたあの地を…。私に頂きたい。」


 クェス貴様!あの地は魔物達の安住の地であるぞ!貴様…魔物達を皆殺しにしてお前の国を作ると言うのか!


 許さぬぞ!!たとえ勝てぬでも、吾輩が貴様を倒して、その野望を止めてやる!!

 こら、クェス!此処から出せぃ!


「クェスよ。この王にどう言うことか教えてはくれぬか?」


「簡単なことです。今のままの封印では、魔王は蘇ります。だからこそ、私はあの地に留まり、封印を施し続けます。そうすれば封印の力は弱まることなく、維持することができる。その間に、永遠に維持できる封印の術を組み上げたい。」


「何とクェスよ。世界を守った上に自ら犠牲になると言うのか…。しかし、お主があの地に留まらぬとも、我が国の賢者を送り込めば…。」


「あの地には、魔王に負けるとも劣らぬ魔物が未だにおります。奴らと戦えるのは、失礼ながらこの国には私しか居ないでしょう。私にしかできない仕事です。そして未来の者達のために、私はこれより長きに渡り、封印を強化し続けましょう。」


 うむ。吾輩と共に魔物達を守った我が使徒達。奴らが生きておるのか…。我輩に敵わぬまでも、十分に戦えたであろうは奴らくらい。奴らが生きておるなら、きっと吾輩の想いを継ぎ、あの地を守ってくれるだろう。だからクェスよ。貴様は再び、あの地に踏み入れてはならぬ!貴様の功績のためだけに我が民をこれ以上傷つけないでくれ!


「…分かった。勇者の言うことなら、きっとそれが最善なのであろう。だが姫はお主に恋慕しておる。連れて行ってやってはもらえぬか?」


「いいえ王よ。気持ちは嬉しいのですが、此処からは戦いの日々。姫を護り続ける自信はありません。願わくば、せめて生きて行ける資金を頂きたい。」


「うわぁん」


 あーあ、姫泣かせおった。もうちょっと言い方があるであろうに。姫はいらんから金よこせとは。それは泣くであろうよ。


「そうか…クェス。お主、未来のために命を投げ出す気だな。良かろう!お主のその想いに報いるだけの資金を出そう!」


「では、金貨六千枚ほど用意していただきたい。」


「ろ…、いや、良かろう。用意しよう。」


「ありがとうございます。王。王や姫の好意を無にした償い、きっと平和な未来を作ることでお返しいたします。」


 お前ら人にとっての平和な未来か。吾輩も、魔物達に約束したのだがな…。もう果たすことは叶わぬが。










ばしゅん



「さぁ、帰ってきたぞわんこ。狭かったな。」


 転移魔法の波動を感じたが、まさか、さっさと王城から飛んできたか。ん?此処は朝の宿屋の前だな。


「ルー。帰ったよ。」


 ガチャ


「あらお帰り。早かったのね。王様には報告できたの?」


 ふむ。此奴、魔物の地へ戻り、力なき魔物達を蹂躙する気である。ルーよ。クェスを止めてくれ!


「きゃ。わんこちゃんどうしたの?飛びついてきて…。心配したんだぞ。クェスと行っちゃうから…。あらあら、そんなに鳴いて…。」


「ああ、わんこお腹すいたのかもな。ルー、ミルクあげてくれない?」


「そっか。わんこちゃん、ご飯食べようね。」


 ルー!話を聞かぬか!…まぁミルクを飲みながらでも話はできるな。早く持ってこい。


「さて。明日、お金を貰って、色々用意して…五日後には出るかな?」


 ふん。金のために我が民を討とうと言うか。クェス。何が勇者だ。吾輩は貴様を軽蔑する。見ておれ。わんこの封印がもし解けたのならば、吾輩は今度こそ、貴様を倒して、魔物達に平和を……


 いや。吾輩はきっと封じられてなどおらぬ。わんことして転生し、力を失い、もはや貴様に太刀打ちすることすら叶わぬのであろう。


「お待たせ。わんこちゃん。ミルクだぞー。」


 だが…(ぺろぺろ)吾輩は(ぺろぺろ)腐っても魔王と(ぺろぺろ)呼ばれた者…(ぺろぺろ)このような姿になっても(ぺろぺろ)…もう一度、魔導の力を(ぺろぺろ)……


「あらあら。こんなに慌てて。わんこちゃん本当にお腹すいてたのね。」


 ルーよ。食事中に頭を撫でるな。心地良いが頭が揺れると食い辛いわ。


「なぁ、ルー。」


「何?クェス。」


「突然なんだが、俺と結婚してくれないか?」



 ……どういう展開か?


「いいよ?」


「いいよって…。俺随分と気合入れて行ったつもりだけど…軽いな。」


「子供の頃から、クェスのお嫁さんって決めてたからね。クェスも断られないって思ってたんじゃ無い?」


「…魔王と戦うよりも不安だったよ。」


「しょうがない。私がしっかり、クェスを守ってあげるよ。」


「じゃあルー。俺はお前を護り続けるよ。」


 これから魔物の地へ向かうのであろうに、今契りを交わしても、姫同様、連れてゆくことなど叶わぬであろうに。何を考えておるのだ?


「一緒にさ、新しい大地で、新しい国を作りたいんだ。」


 ふんクェスよ。貴様の野望を吐いて、ルーにも捨てられるが良い。


「昨日言ってたこと。本当にやるんだね。いいよ。私がクェスをしっかり支えるから。思うままにやると良いよ。」


「ありがとうルー。」


 なんじゃ!もう話を通してあるのか!昨日吾輩が寝た後で何かがあったのか!?

 こうなれば、ルーも敵であるな。


「魔物を救うための国造り。クェスらしいと思うよ。」


 へ?

 魔物達を救う?


「ありがとう。ルー。できるかはわからないけど、やるだけやってみたい。ルーが一緒なら、やれそうな気がするよ。」


 んん?

 話が見えぬが。

 クェス。もう少し吾輩にも詳しく教えぬか!魔物を救うとはどういう…


「わ、こらわんこ。そんなに顔舐めるなよ。分かったよ。わんこ。お前も一緒だ。安心しろよ。」


 そうではない!話せと言っておるのだ!


「しっぽパタパタさせて…わんこちゃん、本当にクェスの事が好きなのね。本当にクェスパパと思ってるんじゃない。」



 思うか。


 何やってもじゃれついているだけにしか見えぬようだな。


 何やろうとしているのか、教えてくれても良かろうに…

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