第4話 精霊とのガールズトーク?
「あ、あの……呪いって?」
「あ……失礼致しました。実はこちらのシャルロット様は……あ、ある貴族のご令嬢で、数日前から突然声が出なくなってしまっていたのです」
「それが、呪い……ですか?」
「えぇ。というのも、数日後に迫った王……こ、コンテスト! そう、歌のコンテストがありまして、ライバルの方々から嫌がらせの呪いを受けたのではないかと考えていたんです」
歌のコンテストかぁ。
それだと、声が出ないと大変よね。
歌えない状態だと、そもそも何も審査出来ないし。
『えっと、リディア? まさか、今の話を信じるの!?』
(え? だって、クロードさんがそう言ってたよ?)
『歌のコンテストで、喋れなくなるような呪いなんて掛ける!?』
(んー、どんな事をしてでも勝ちたい人がエントリーしてるとか?)
『……そ、そうかもね。とりあえず、リディアはこれ以上関わっちゃいけないからね!? これからのアクセサリー作りの事を考えないと』
(そうだね。アクセサリーを作るのは好きだけど、商売の事とか、全然分からないもんね)
何故かエミリーが呆れた様子で私を見てくるけれど、一先ず血も止まっているし、一安心だと胸を撫で下ろしていると、
『……で、この二人はどうするの? ここに泊めるの?』
新しい問題が出てきた。
逃げて来た訳だし、今から追い出すのはどうかと思う。
けど、元々は私一人だけが寝る為の小さな家を作ってもらったから、三人で寝るのは厳しい。
そ、添い寝するみたいに、密着すれば、三人で眠る事は可能だけど。
今から家を大きくも出来るものの、流石に家を建てる程の力は、二人の目の前で使わない方が良いだろう。
ク、クロードさんが良ければ、私は添い寝でも良いんだけど。
「あの、お二人はどうされますか? 見ての通り、この小屋はちょっと狭くて、その、添い……」
「お嬢さん。夜分に押し掛けてしまって申し訳ないのですが、私は外に居りますので、どうかシャルロット様だけでも、ここに泊めていただけないでしょうか」
「で、でも、外で襲われたんですよね? それは危ないと思うんです」
「しかし女性の家に……しかも、一つの部屋に男が泊まるなど、騎士……商人としてあるまじき事ですので」
暫く話してみたけれど、クロードさんは怪我も治ったからと、断固として外に出ようとする。
それは危ないって話もしているんだけど、そもそもこんな小屋に山賊? 盗賊? 分かんないけど、そんなのが来るかな?
「我々がここに助けを求めてやって来たのも、この淡い光が外から漏れて見えていたからでして……ですので、ここに賊が来る可能性はゼロでは無いと思われますから」
あー、完全に密閉しちゃうと空気がなくなっちゃうからって、上の方に小さな隙間を幾つか作ってくれているんだけど、そこから光が漏れているんだ。
「だったら尚更ダメです! この家は頑丈ですから、中に居て下さい!」
「クロード。私たちの命の恩人がここまで仰って下さっているのです。ここは、素直に従いましょう」
「シャルロット様……で、では私はこの扉のすぐ側で、待機しております」
結局、クロードさんは小屋の中、扉のすぐ側に座り、そこで仮眠をとる事になって、私とシャルロットちゃんが横になって寝る事になった。
と言っても、毛布も何も無くて、本当にただ横になって寝るだけなんだけどね。
ただ、下が石の床で硬いからか、シャルロットちゃんが寝付けないみたいだ。
私は慣れているし、ヒンヤリとした石が気持ち良いんだけど、眠れないのは可愛そうなので、クロードさんもシャルロットちゃんも目を閉じている事を確認し、
(エミリー。イドちゃんをお願い出来る?)
『いいよ。……よく考えたら、最初からシェイドを呼べば良かったね。……という訳で、シェイドよろしくっ!』
エミリーに闇の精霊のイドちゃんを呼んでもらった。
(イドちゃん。何でも収納箱から毛布を二つ取り出して、あと、この二人を朝までぐっすり眠らせてあげて)
『承知。空間収納から毛布を取り出し、スリープの魔法を行使……成功』
(ありがとう! じゃあ、またね)
闇の中に姿を消すイドちゃんに手を振り、それぞれ毛布を掛けてあげると、チラッとクロードさんの寝顔を覗き……
『ふーん。リディアは、こういう人が好きなんだ』
(す、好きっていうか、今まで男の人と接する言葉が殆ど無かったから、ちょっと気になっただけで……)
『へー。その割には、毛布を掛けるだけなのに、結構ベタベタ触ってるよね?』
(そ、それは、風邪を引かないように、しっかり毛布を掛けてあげようと思って……)
『ノームが作った家だよ? 風通しも、湿度も、温度も快適だよ? それに、風邪を引いてもウンディーネや、ウィル・オー・ウィスプの力を使えばすぐに治るけど?』
(うぅ……エミリーがいじめる)
『あはは、ごめんごめん。リディアが仕事以外の事に興味を示したのが珍しくてねー』
暫くエミリーとガールズトーク? をして、私も就寝する事にした。




