表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた  作者: 向原 行人
第2章 精霊と学校へ通う元聖女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/79

挿話10 家の中を漁る元王女ユフィ

「じゃあ、ユフィさん。学校に行ってきますねー!」

「私の名前はユフィじゃなくて、ソフィよっ!」

「ふふっ。行ってきまーす!」


 人の名前も覚えられないバカ女が、学校へ出掛けて行った。

 ふっふっふ……あの毒だか何だか分からない謎の腹痛も治ったし、バカ女は夕方まで家に帰ってこないし、今からこの家は私の家よっ!

 アメーニア王国の王宮と比べればもちろん小さいし、私の部屋とは比べ物にならないくらいに貧相だわ。

 だけど、この家全体を私の家と考えたら、少なくとも王女時代の部屋よりは広いわね。

 そもそも、一国の王女だというのに、一部屋しか無かった事がおかしいんだけど。


「さて、過去の話は置いておいて、あのバカ女の秘密を探らないとね。これまでは薬を探すくらいしか出来なかったけど、絶対に尻尾を掴んでやるんだから」


 先ずは一階の一番玄関に近い所にあるバカ女の部屋……は流石に鍵が掛かっているわね。

 この部屋は後に回して、他の部屋よ。

 リビングは薬探しの時に十分探したから、こっちの部屋は……あら、クローゼットかしら?


「へぇ。中々良い趣味をしてるじゃない。この、如何にも貴族って感じのドレスなんか、私にピッタリじゃない。……あのバカ女は、いつも同じ服ばかり着ていて宝の持ち腐れだし、きっと私が着てあげる方がドレスも幸せよね」


 スカートの丈が短く、膝上までしかない真っ赤なパーティドレスに身を包み、姿見の前でクルリと回ってみる。

 ふふ……うん。このドレスは私が貰っておきましょう。

 沢山あるから一着くらい……あら、こっちの黄色いドレスも良いじゃない。こっちのオレンジのも。

 ……気付けば、クローゼットの中にあるドレスの半分近くを、出してしまっていたけれど、まぁ大丈夫でしょ。

 あのバカ女はドレスなんて着ないから、絶対に気付かないわよ。

 手にしたドレスを全て二階へ運び、私の部屋にあるメイド服しか入っていないクローゼットへ。


「さて、思わぬ戦利品を獲た所で、続きね」


 私好みの赤いドレスに身を包み、上機嫌で一階の部屋を漁っていると、バタンと扉を開ける大きな音が響き渡る。

 あら? 誰か来たのかしら?

 前に私のお尻を見た商人だったら、一発殴ってやらないと。そんな事を思いながら部屋から出て、玄関の様子を見に行こうとした所で、


「なっ!? どうして聖女が居るんだっ!? この時間は学校じゃないのか!?」


 聞いた事のない叫び声が届く。

 聖女……あぁ、この男も、あのバカ女に騙されている口らしい。

 でも、私を見ながら聖女って言ったし……私の内から溢れる気品と美しさで、つい私の事を聖女だって思ってしまったのね?

 まぁでも、それは仕方がない事よね。だって、私は綺麗で美しいもの。


「いや、まぁ良い。逆に手間が省けた」


 そう言って、男が一直線に私に向かって来る。

 どこの商人かは知らないけれど、用件くらい言いなさいよね。

 まぁ今日は気分が良いから、許してあげなくもないけど。


「悪く思うな」

「えっ!? あ……な、何を!?」

「他所で聖女と呼ばれていたみたいだが、アンタはやり過ぎたんだよ。調子に乗り過ぎたな」


 突然、お腹に鈍い痛みが走り、思わず床に倒れ込む。

 いきなり殴られた!? どうして!? 私は元王女で聖女なのに!

 止めて……せっかくお腹が治ったのに。あぁぁ……何か出ちゃいそう。


「お嬢の方が無駄になってしまったが、こっちの方が人目に付かないから、結果としては良かったか。まぁ安心しな。命までは取らないさ。ただ、目が見えなくなるだけだ」

「何を言って……」

「はっはっは。この毒を目に垂らすだけで、一時間後には失明する」

「や、やだっ! やめてっ! やめなさいっ!」

「アンタの力じゃ、俺には勝てない。あぁ、そうだ。主様が、アンタのアクセサリーは良かったと仰っていたぞ。まぁ、それでアンタが本物だって分かったんだがな」


 男から意味不明な事を言われた直後、目に何かの液体がかかる。

 それから、私を押さえ付けていた男が離れたけれど、


「な、何これ」


 私の視界から、色が失われていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ