第32話 普通の学校生活?
騎士さんたち向けのアクセサリーを完成させ、シャルロットちゃんたちとの会議に呼ばれた翌日。
途中で会議から外されてしまったので、最終的にどうなったのかは分からないけれど、一先ず普通に学校へ通い、一女子生徒として過ごして欲しいと、クロードさんから言われていた。
なので、いつも通り授業を受けているんだけど、
「リディアさん。算術で教えて欲しい所があるんですの」
「はぁ……あ、これなら、正弦定理を使えば簡単に……」
「くっ……また意味不明な式を持ち出してきて……こ、答えが合ってる!? 高等学院の入試問題なのに……こ、こほん。なるほど、ありがとうですの」
アーシェっていう女の子が、学校の授業で扱う問題よりかは、難しい問題を持ってきて教えて欲しいと言ってくる。
算術と魔導学しか教える事は出来ないと断っているからか、それとも普段の私の授業中の回答で知っているからか、他の教科は聞いて来ないけれど、おそらく上位の学校へ進学を希望している生徒なのだと思う。
なので、微力ながらも、お手伝いが出来るのであれば、協力してあげようと思っていた。
そして、魔導学の授業の後、
「リディアさんは、魔導学にもお詳しいわよね? とあるツテで手に入れた物なのだけど、ちょっと見て下さらない?」
アーシェが小さな筒を持ってきた。
上部に小さな穴が空いていて、万華鏡みたいに思える。
一先ず、何かな? と思いながら、覗こうとして、
『リディア、ストップ! それ、覗き穴の近くに毒が仕込まれてるよ』
(えぇっ!? 何それっ!?)
『毒液か毒針かは分からないけど、覗くとそれが飛び出すんじゃないかな? 効果までは分からないけど、おそらく失明……最悪、命を落とすかも』
(ど、どうして、そんな物が?)
『そこまではウチにも分からないけど、この女の子がリディアを狙ったのか、それともこの女の子も知らずに渡したのか……聞いてみるしかないね』
エミリーに止められ、慌てて顔から離す。
「あら? リディアさん。見てくださらないの?」
「……あの、この魔導具? って、どうやって入手したんですか?」
「それは、私の家のツテとしか言えないわね。それがどうかしたの?」
「じゃあ、アーシェさんは、この魔導具を私にどうして欲しいんですか?」
「言葉の通り、見て欲しいのよ。高価な魔導具だけど、壊れてしまっているので、魔導学に詳しいリディアさんに見てもらおうって思いましたの」
うーん。特段、おかしな所は無いのかな?
『そうかな? というか、もっとストレートに聞いちゃえば? もしくは、自分で見てもらうとか』
(それは、この子が何も知らなかった場合に、取り返しのつかない事になっちゃうよ)
『あー、失明なら何とかするけど、確かに命を落とす程の効果だと、ウチでも助けられないか』
一先ず、エミリーから教えてもらった、この魔導具の効果と共に、ストレートに聞いてみる事にする。
「アーシェさん。この魔導具は壊れてなんていません。遠く離れた場所を、近くに居るみたいに大きく見えるようにする効果がありますね」
「え? 壊れてないんですの? だったら、確認を……」
「ですが、使う事は出来ません。率直に言うと、この魔導具には毒が仕込まれています。良くて失明、最悪死んじゃいますが、一体これは、どうやって手に入れたんですか?」
「ど、毒っ!? そ、そんなハズはありませんの! 何かの間違いです!」
「いえ、本当ですってば」
「そんなに言うなら、私が使って確かめますの! これは私への……いえ、ガルシア家に対する侮辱ですのっ!」
そう言って、アーシェさんが私から魔導具を奪おうとして、私が防ぐ。
そんなやり取りを繰り返し……埒が明かないので、
(エミリー。お願い)
『はいはい。シェイドー』
闇の精霊イドちゃんの力で、少し眠ってもらう事にした。




