挿話9 食あたりに苦しむ新米メイドユフィ
――ッ!?
異変を感じ、目が覚める。
「……痛っ! どうして!? お腹が……」
何故かは分からないけれど、物凄くお腹が痛い。
昨日はあのバカ女の部屋に入る為に慣れない料理をして、普段よりもかなり寝る時間が遅くなってしまった。
なので、夕方まで寝て過ごそうと思ったのに、昼前くらいに目が覚めてしまったようだ。
とりあえず、寝室として使っていた部屋の近くにあるトイレまで何とか移動し、一体何が原因なのかを考える。
「昨日食べたパンや肉が腐っていたのかしら? それとも野菜? まさかフルーツが原因って事はないわよね?」
おそらく、キッチンにあった食料は、あのバカ女も食べているはず。
……まさか、私に毒を盛る為、予め手に取り易そうな食材に毒を仕込んでいたとか!? だから、昨日は私が作った料理を後で食べると言い、そして自分は予め部屋に用意しておいた、毒を盛っていない食べ物を食したって事!?
あのバカ女……もしかして、私がアメーニア王国の第四王女だと気付いたとか?
いえ、あのバカ女が私の変装に気付く訳がない。
とはいえ、この辺りの真偽も、バカ女の部屋を調べれば分かるはず。
今は学校で居ないはずだから、今すぐバカ女の部屋へ移動……
「って、どういう事!? トイレから離れられない!? しかも、お腹だけじゃなくて頭も痛い。……やっぱり、これは毒!?」
出来ない。
悔しいけれどトイレから離れられず、頭痛もして……もうっ! どうして私がこんな目にっ!?
一先ず、お腹の具合がマシになったので、ベッドに戻って横になり……
「と、トイレーッ!」
再びトイレへ。
それから、またベッドへ行って、トイレに戻ってきて……を繰り返す。
トイレへ駆け込む頻度が多すぎて、もうパンツとスカートを脱ぎ捨て、下半身を露出させたままベッドとトイレを行き来している。
……どうせ、あのバカ女の家だし、このままで良いわ。誰か客が来る訳でも無いだろうし。
そのまま暫く横になっていると、少しマシになってきた気がするので、何とか一階へ降り、何か薬が置いてないかとリビングを探し回る。
正直、薬を探すのも辛いのだけど、何かしらの体調を治す手段が無いと、ずっと寝込む事になってしまう。
大きめの棚を開け、上から順に漁っていると、
「あ、リディア様の所に来られたメイドさんですか? 王宮からのご依頼で、キッチンの食材を補充しておきまし……でぇぇぇっ!?
背後から商人風の男性の声が聞こえてきた。
なるほど。食材はバカ女が買いに行っている訳ではなく、王宮御用達の商人が定期的に補充しているのね。
だったら尚更食材が痛んでいたという可能性が低くなり、バカ女に毒を盛られた可能性が高くなる。
「で、では、私はこれで! あ、あの、私は何も見ておりませんのでっ!」
しかし、それにしても商人が何故かやけに焦っていたけれど、どうしたのだろうか。
とりあえず、バカ女に毒を仕込まれる前に、今補充されたばかりの食材を幾つか頂いて……
「って私、下に何も履いていないじゃないっ! ……お尻。あんな男に、私のお尻が見られたぁぁぁっ!」
自分の姿に絶望し、何も取らずに二階へ逃げ込む。
結局、ベッドとトイレを往復し、時々気合でキッチンから水とフルーツを手にする生活を五日間近く過ごす事になってしまった。
私の体調が悪いのも、見知らぬ男にお尻を見られたのも、全部全部ぜーんぶバカ女が悪いんだからっ!




