第22話 高価だけど即効性のある精霊石と、安価だけど遅効性の力ある石
私が忙しくなろうとも、それで亡くなる人が減るのなら、良いのではないだろうか。
人は、死んでしまったら終わり。
私は忙しくても、生きられる。
だったら、私が忙しくなったとしても、人々を護る方が……
『だ、か、ら! それはダメって言っているでしょ! 前に居た国の事を覚えてる? 確かに初めは国を挙げてリディアの事を皆褒め称えたよ? だけど、それも暫くすると、リディアに護ってもらう事が当たり前になって、感謝どころ無駄遣い呼ばわりまでされていたじゃない!』
(え? そうなの?)
『……リディアが気付いてないだけで、酷い人は酷かったの。あの、第四王女なんて典型的じゃないか』
(だけど……)
『とにかく、ダメったらダメ! 聖女様ってチヤホヤしてくれるのも最初だけだよ。後で絶対に後悔するから!』
エミリーと話し合いながら街の門へ戻ってきた。
一先ず今は、私たちのやるべき事をやろう。
『シルフッ!』
エミリーに頼んで風の精霊の力を使ってもらい、軽傷の人たちを一斉に治していく。
すると、今ので元気になったのか、一人の騎士が近づいてきた。
「リディア様! ありがとうございます。リディア様のおかげで、想定よりもかなり負傷者が少なくなりました」
「え……あ、スコットさん。隊は大丈夫ですか? 随分と門から離れた場所に、騎士さんたちが居られましたけど」
「はい。その……お恥ずかしい話で、こういう場合は門で魔物を食い止めるのが鉄則なのに、僕の指示を聞かない部下が何人か居て、飛び出してしまい……」
「あー、ですよね。どうして、わざわざ門から離れたんだろうって、不思議だったんです」
「すみません。前にもお話した通り、僕の足を引っ張ろうとしているんじゃないかと……」
んー、前からスコットさんはそんな事を言っているけど、自分の命を危険に晒してまで、人の邪魔をするかな?
何か理由が有る気がしてきた。
「そうだ。スコットさんから伺った話を基に作ったアクセサリーがあるんです。こんな場所でなんですが、どうぞ」
「あ、ありがとうございます。……おぉ、剣帯ですか」
「えぇ。その剣帯に付けた空色縞瑪瑙――ブルーレースアゲートには、人間関係を改善する効力があります」
「なんとっ! 凄いですね!」
「ですが、即効性がある訳ではなく、スコットさんから人間関係を良くしようとする努力が必要です。改めて、騎士さんたちの話を聞くようにしてください」
「分かりました。部下とのコミュニケーションを心がけるようにします。ありがとうございます!」
スコットさんが渡した剣帯を早速身につけ、他の騎士さんたちの所へ歩いて行った。
そんないきなり!? 精霊石じゃないから、即効性は無いんだけど……って、談笑し始めた? もの凄く笑顔で、互いに肩を叩きあったりしてる。
(あれ? 困っているって言っていたけど、めちゃくちゃ仲が良さげだよね)
『リディア。ふと思ったんだけど、この国で取れる石って、かなり質が良かったよね』
(そうね。というより、アメーニア王国で使用されていたのが、見た目を重視して綺麗にカットしたり磨いたりして、質が落ちていたっていう感じだけど)
『まぁ何にせよ、石に込めた精霊の力の効力が以前よりも高くて……もしかして、遅効性だと思っていた力が即効性を持っているんじゃないかな?』
(なるほど。その可能性はあるかも。だから、人間関係で困っていたスコットさんが、アクセサリーを身につけた途端に、そんな様子が微塵もない訳だね)
改めてエミリーが呼び出してくれる精霊の力が凄いと思っていると、
「リディアちゃん、貴方やるじゃない。石の鑑定だけじゃなくて、魔道士でもあったのね」
見知らぬ綺麗な女の人がやって来た。
「……あの、どちら様ですか?」
「何よ! 酷いわね。ほんの少し前まで王宮で喋っていたのに、私の顔を忘れたの!?」
え? 本当に誰なの? 凄く綺麗な髪の毛は長くてサラサラしているし、肌は水を弾きそうなくらいにツヤツヤしてる。
でも、何だか変な喋り方で……
「ちょ、ちょっと待って! まさか、ロ……ロビンさんなんですか!?」
「まさか……って、そのロビンに決まっているでしょ? 失礼しちゃうわね!」
「いえ……何というか、その、女性だと思ってしまって。……って、どうして魔物を倒しに来たのに鎧を着ていないんですかっ!」
「何を言っているの!? 鎧なんて着たら、私の美貌が損なわれるじゃないの。でも、女性みたいだなんて……リディアちゃんも嬉しい事を言ってくれるじゃない」
目の前に居るのはロビンさんなんだけど、ロビンさんじゃない。
別人……とは言わないけれど、髪と肌が綺麗になると、こんなにも印象が変わるんだ。
「……って、そうだ! そうだわっ! これなら、皆を護れるっ!」
(え? ど、どうしたのさ、リディア)
突然変わったスコットさんとロビンさんを見て、私は私でありながら、人々を護る方法を思いついた。




