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精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた  作者: 向原 行人
第2章 精霊と学校へ通う元聖女

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第20話 密着する乙女と騎士

「では、宜しくお願いいたします」


 第四騎士隊隊長っていう人の話を聞き終え、後はスコットさんに完成したアクセサリーを渡すだけなんだけど、戻って来ない。


「スコットさんはお忙しいんですね」

「そうですね。ですが、今日の予定ですと、もう戻って来て居てもおかしくないはずなんですが」


 クロードさんと雑談しながら待っていると、


「大変です! スタンピードが発生! 街の南部から魔物の群れが迫ってきており、近くを警備中だった第五騎士隊が街を守るべく準備中との事ですっ!」


 突然大きな声が響き渡る。

 声がした方を見てみると、大きな声で叫んでいたと思われる兵士さん――おそらく、ここまで走ってきたであるろう伝令の人が、ハァハァと肩で息をしていた。


「クロード。行くわよ」

「はい。リディア様……本日は危険ですので、家に帰らず王宮にお泊りになってください」


 ロビンさんに呼ばれたクロードさんが、慌てて駆け出そうとする。

 だけど、ちょっと待って。魔物の群れ? そんなの何度も退けてきたんだから!


「待ってください。クロードさん、私も連れて行ってください」

「いけません、リディア様。貴方にもしもの事があれば、大臣に蝕まれつつあるこの国を立て直す事が出来なくなります。魔物は我々騎士が倒す事が出来ますが、大臣を倒せるのはリディア様だけなのです」

「騎士さんたちだって、その『国』を担う重要な人です。国を立て直すのであれば、その『人』だって守らなければなりません! 私の力は初めてお会いした時にお見せしたはずです。その場で傷を癒す事が出来る者が居ると、負傷者を大幅に減らす事が出来ます」

「それは……ですが、万が一の事を考えると……」

「クロード様! クロード様は私の事を絶対に護ると仰ってくださいました。私はクロード様の傍から離れませんから、ご同行させてください」


 私の言葉でクロードさんが完全に足を止め、少し何かを考えた末、


「……そうですね。確かに、私はリディア様をお護りするとお約束いたしました」

「ん? クロード、何をしているんだ?」

「リディア様。決して、私の傍から離れないでくださいね?」

「おい、クロード。お前、リディア様をお連れする気なのか!?」

「はい、ロビンさん。リディア様は何があっても私が必ずお護り致します。ですから……」

「……いや、お前がそうまで言うなら、何か意味があるんだろ。それより急ぐぞ!」


 ロビンさんを含め、私が同行する事が承諾された。

 騎士さんたちも、街の人たちも、誰一人として怪我人を出させないんだからっ!

 走るロビンさんと、私に合わせて少しだけ遅く走ってくれているクロードさんについて行き、


「リディア様。申し訳ありませんが、急を要するため馬車ではなく、こちらで」

「はい。構いません」


 軍馬に乗せてもらう。

 馬車には何度も乗ってきたけど、馬に直接乗るのは流石に初めて。

 上手く馬を走らせる事が出来るのかと思っていたら、突然誰かが私の背後に乗る。


「では、参ります。リディア様、馬から落ちないように気を付けてください」

「えっ!? クロードさん!?」

「第二騎士隊出撃! 第一騎士隊の後に続き、先行している第五騎士隊と共に街を防衛する!」


 クロードさんの言葉に応じて、後ろの方から地鳴りみたいに大きな掛け声が聞こえてきた。

 いよいよ出発だけど、私は精霊石を用意しておかなきゃ。

 エミリーの力で魔物を退けた後に、魔道士の振りをするために……って、馬……馬の揺れが激しいっ!

 私が馬具から手を放して鞄を漁っていたから悪いんだけど、思いっきり落馬しそうになってしまった。


「リディア様っ! ……失礼。暫しお許しください」


 咄嗟にクロードさんが左腕で支えてくれたから大丈夫だったんだけど、私が危ないと判断したのだろう。

 小手を着けた腕で、思いっきり抱きしめられている。

 手が……クロードさんの手が私の胸にぃぃぃっ!


『いや、クロードは手を鉄製の小手で覆っているし、鎧も身に着けているから、リディアの身体については何にも感じてないと思うよ』

(そ、そうかもしれないけど、鉄板越しでも、お、乙女の胸に触れているし、私の身体と密着しているんだもん)

『……じゃあ、リディアはクロードの手や胸の温もりを感じるの?』

(た、体温は感じないけど、男らしいゴツゴツとした感じは……)

『いや、だからそのゴツゴツは鉄の小手と鎧だってば』


 エミリーに呆れられつつも、クロードさんに支えられ、落馬することなく目的地へと到着した。

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