第17話 ヒアリング
クロードさんから、騎士隊長さんたち個人に見合ったアクセサリーを作って欲しいと依頼され、早速王宮へ。
騎士隊長さんたちは、それぞれ任務に就いているので全員居る訳ではなく、一先ず王宮に居た二人分を作る事になった。
「……って、その一人目がロビンさんなんですね」
「そうよー? なぁに? 私に合うような力ある石が無いって事なの?」
「いえ、そういう訳ではないんですよ。ロビンさんは既に精霊……というか、力ある石をお持ちですよね? 石には相性があって、複数の種類の石を同時に持って居ると、効果が増幅したり、逆に減衰したりしちゃうんです」
「へぇー、そうなの? でも、今身につけているのは、外したくないわね。今まで、ずっと身につけていた訳だし、今更外すとなると違和感があるわよ」
「あ、大丈夫です。そういう事も加味して考えますので」
残念ながら、石に宿る精霊の相性問題は結構難しいんだよね。
火の精霊サラちゃんは、水の精霊のディーネちゃんと仲が悪い訳ではないんだけど、相性が悪い。
だけど組み合わせもあって、そこに光の精霊オーちゃんが居ると、何故か相性の悪さが中和されるというか、相性問題が解決したりする。
『こればっかりは、ウチにも分からないからねー。ある程度予想は出来るけど、最終的には実際に精霊を組み合わせてみて、ちゃんと本来の力が発揮できるかどうかを見てみないとねー』
(確か、アメーニア王国の第二王子様だったかな? 相性の話をしても聞く耳を持ってくれなくて、「とにかく俺の言う精霊の力を全部揃えろ!」みたいな人が居たよね)
『あー、居たねー。誰かは覚えてないけれど、「精霊石の力が発揮されていない! 手を抜いている!」とかって言っていたよね』
第二王子は何度か遠征に行った後、どういう訳か途端に王宮で見る事がなくなったけど……戦いが好きな人だという噂を聞いた事があるし、きっとどこかで戦っているのだろう。
それよりも、先ずはロビンさんを何とかするのが先だ。
「ロビンさんは、自分の長所を伸ばしたいとか、欠点を補いたいとかって希望はありますか?」
「長所を伸ばしたいっていうのはあるわね。けど、私に欠点らしい欠点なんて無いわよ」
「す、凄いですね。じゃあ、ロビンさんは長所を伸ばしたいっと。それで、どんな長所を伸ばしたいんですか?」
「……ん? それだと、私の希望に従って、どんな精霊の力でも得られるみたいだけど、石に宿っている精霊の力は、元から決まっているのではなくって?」
あ! しまった。
ついつい聖女と呼ばれていた時の事を思い出してしまっていたけれど、今の私はエミリーにお願いして精霊の力を扱う事が出来るっていう事を隠していたんだった。
「えっと、先ずはロビンさんにお話を聞いて、それに近い石を選んでこようかと思いまして」
「ふぅん。じゃあ、やっぱり私の美貌を向上させる事かしら」
「で、でも、既に月の……じゃなくて、白蛋白石――魅力を引き出す石を身につけられていますよね? 同じ石を複数身につけても効果が重複する訳ではないので、他の長所を伸ばしましょう」
同じ石を複数身につける……厳密に言うと、同じ効力を複数身につけても意味が無いのは本当なんだけど、例外もあって……まぁこの話は別にいいや。混乱させちゃうだけだしね。
一先ず、ロビンさんに他の長所について教えてもらおうと思うのだけど、
「うーん……私の美貌以外で伸ばしたい長所ねぇ。髪の毛をサラサラにする……とか?」
「すみません。流石に、そんな効力の石は無いんじゃないかと」
具体的な回答が出てきたものの、なかなかに困った要望が出てきた。
というか、ロビンさんは騎士隊長なんですよね?
美貌とか、髪の毛のキューティクルとか、本来の趣旨からずれていませんか?
『リディア。髪の毛を綺麗にする精霊……いるよー?』
(え、そうなの? でもそういうのって、ルーちゃんでしょ? 同じ精霊なのは構わないとしても、既に魅力を向上させるっていう力を使っているから、重複しちゃうよ?)
『ううん。月の精霊ルナ以外にも居るんだよー。金の精霊アウラが、髪や肌を美しくさせるっていう能力を持っているよ』
(何それ!? アウちゃん、そんな事出来るの!? 私もして欲しいんだけどっ!)
『とりあえず、ロビンに教えてあげたら? あと、リディアは今でも十分綺麗だと思うよ?』
(そ、それは嬉しい誉め言葉だけど……と、とりあえず、ロビンさんに言おうか。随分と悩んでいるみたいだしね)
美貌以外に興味が無いのかウンウン唸っていたので、求めている効果がある石があった事を思い出したと伝え、一先ずロビンさんのヒアリングが終了した。




