決戦と敗北
???「前回のあらすじ!
色々あった!
ステータス確認した!
レアと戦いを始めそう!」
黒人 「クズがぁ……まずお前から血祭りにあげてやる」
レアール「やめろクロリー落ち着け!それ以上魔力を高めるな! ピロロロロロ」
???「もうだめだぁ……おしまいだぁ……勝てるわけがない!あいつは伝説のスーパー合成人なんだどぉ!」
黄泉「なにこの状況?ふざけてんの?」
「「さぁ、始めようか!」」
その言葉と同時に、俺は身体強化をして、眼前のレアを見据える。
多少強くはなったとは言え、真っ正面から戦っても絶対に勝つことは出来ない。
ならば、俺は頭と運で勝つ。
無駄に回る頭と、情け無いが運に頼ってやるしかない。
つまづいたっていいじゃないか。
にんげんだもの。
……………………。
レアも今回ばかりは本気で来るつもりか、身体強化を使用している。
やっぱりLV10のスキルは伊達じゃないようだ。
さっきとは比べ物にならない程強烈な威圧感が俺を襲う。
ただ向き合っただけで体中から汗が滝のように噴き出してくる。
若干の幼さを感じる中にも、凛々しさを感じさせるその顔付きは正に真剣そのものだった。
あれ?そういやレアって何歳なんだろう。
ハーフエルフだから童顔なのか?
そんなことは置いておいて。
ただ、目の前で対峙しているだけで、俺の本能が"勝てない"、そう告げる程の圧倒的な実力差を感じる。
【所有】を使えば簡単に終わるだろう。
命を所有するでも、心を所有するでも、勝ちようは幾らでもある。
だが、俺はそんな手を使いたくない。
何故なら、それはレアール・カラニフェンという人物にとっての最大の侮辱だから。
気がつくとレアは俺の目の前にいた。
煌びやかな光を放つ刀身が俺の体を切り裂かんと振られる。
咄嗟に、ありえない速度で横に振られる剣の腹に向かって、右拳を突き上げる。
そうだ。
今の俺は1人ではない。
何百人もの人が集まって出来ているのが今の俺だ。
戦闘技術は受け継いでいる。
剣を逸らすと俺はその後、上へと大きく振られた右腕を振り下ろす。
が、その瞬間レアの右腕が一瞬霞む程のスピードで動き、俺の右腕の肘から先を切り落とす。
「ぐぅっ」
苦悶の声を上げつつもバックステップで離れるが、それを予期していたレアが更に追撃を放ってくる。
そこで俺は武器錬成を使い、足元の地面を槍のようにし、レアへと向かわせる。
レアは圧倒的な反射速度で槍を避けると俺に向かって突っ込んでくる。
不味いな……
距離を取らせないつもりか。
俺とレアとでは身体能力に差がありすぎる為、近接戦闘を続けたとしても俺が勝つことは出来ない。
どうしたものか。
レアの幾千にも及ぶ剣撃が眼前に迫る。
出し惜しみしている余裕なんて無い。
俺はよく分からないスキルである、魔帝を使用した。
「っ!?」
その瞬間俺の体から黒い靄のようなものが吹き出し、レアが後ろに飛ぶ。
「おいクロ、それは一体何だ?」
「さぁな。俺にもよくわからん。ただ、俺は戦いに入ったのを後悔しているよ。逃げてれば良かったかも知れない。」
「今からでも逃げればいいのではないか?」
「嫌だね。だってそれはレアに対する侮辱じゃないか。俺がそんなことをするとでも?」
「ふっ。やはりお前は私の事をよく知っている。出会い方さえ違っていればもっと別の関係に、それこそ恋人にだってなっていたかもしれない。」
「今からだって遅くないかもよ?」
「それは光栄だが、無理だろうな。私には騎士団長としての使命がある。」
そこまで言い切ると、レアは様子見の為か、炎魔法である、ファイアランスをこちらに向け放ってくる。
黒い靄でファイアランスを包み込むようにして受け止めると、ファイアランスは霧散した。
どうやらこの靄には魔法を打ち消す効果のようなものがあるらしい。
俺は実験の為、武器錬成を靄に向かって使ってみる。
すると、真っ黒な一つの長剣が俺の手に現れた。
その剣は長年使い続けてきた愛剣のように、俺の手によく馴染む。
この剣は、まさか……
いや、そんなことはない。
俺は首を左右に振って一瞬だけ戻ってきた謎の記憶を振り払う。
黒い靄が武器錬成に使えることがわかった。
ならば……
俺は黒い靄を翼のように纏うと、レアに突貫した。
俺の突きを剣で止めようとするその瞬間、俺の右翼から真っ黒な短剣が何本も発射される。
さぁ、どうする?
だが、そんな俺の作戦をあざ笑うかのように、彼女はそれをやってのけた。
左手で俺の突きを弾き、右手の剣で黒い短剣を全て撃ち落とした。
これは参った。
化け物だとは思っていたが、想定外だ。
全く勝てるビジョンが湧かない。
これが、レベル200越えの力か。
俺の全身全霊を持ってしても、勝てるかどうかわからない。
俺は一瞬の硬直を狙い、左翼で殴ろうとする。
が、次の瞬間、俺のこめかみにレアの右足がめり込み、俺の頭は体から分かれ、処刑場の壁に埋まった。
そして俺は余りの痛みと、今まで感じたことの無い、頭と体が離れるという状態に挟まれ、意識を失った。
〜〜〜〜〜 レア
あるスキルを使って、急加速した私の蹴りがクロの頭を吹き飛ばした。
ドサリ、とクロの頭を失った胴体が倒れる。
その音を聞き、何故かとても悲しい気分になってしまった。
そんな気持ちは、とうの昔に無くなったはずなのに。
参ったな……
クロと会ってから感情が復活し始めてしまった。
この世界にやってきてからそんなものが消え、人形のようになっていたのに。
あいつは大罪人だな。
もしもあの世で会えるとしたら直々に裁いてやろう。
それにしても、一瞬とは言えあのスキルを使わせるなんて、やっぱりあいつはおかしい。
しかし、もう二度とあいつのことで驚けないのは、少し寂しいな……
私は踵を返し、処刑場を後にしようとする。
だが、そこで何か嫌な予感がして、それと同時に首筋にチクリと痛みが走る。
確認してみるも何もついてはいないし傷も無かった。
一体なんだったのだろうか。
気にしてもしょうがないだろう。
……私はこの時、もっと注意するべきだったのかもしれない。
そんなことはもう遅いが。
あと少しで城に付くというところで、私は外に出ているヨミを見つけた。
どうやら何か呟いているようだ。
耳をすませてみると
『やっぱり、どうしてもーーーなんだろうか。私では、私ではーーーなのだろうか』
肝心なところは聞こえなかった。
だがら何かを後悔しているかのような、そんな声だった。
何故か、その内容を知らなければいけないような、そんな気がしたので、話しかけてみることにする。
「ヨミか?こんな夜更けに一体何をしているんだ?」
『レアールさん……何故ここに?』
「私はちょっと散歩に出ていたんだ。それより、さっきなんて言っていたんだ?」
『さっき……?私何か言っていた?ずっと黙っていたと思うんですが』
おかしいな。
さっきのは確かにヨミが言っていた。
だが、ヨミは嘘を言っていない。
つまり、ヨミは何も言っていない。
ヨミ以外の誰かが、ヨミの体を借りて勝手に言ったことなのでは?
そういうことも無くはない。
あっちの世界でもたまに二重人格が居たりしたからな。
「そうか。何も言っていなかったか……気のせいだったようだ。」
『私は、星を見ていたんです。不思議なんですよ。何故か、星を見ているととても安心するんです』
「私も同じだな。星を見ていると古い友人を思い出す」
『すみませんが、その友人について話を聞いてもいいですか?』
「ふっ。そんなに面白い話でも無いのだがな」
「あれは……そう。私がもっと若く、ヨミ達と同じ年齢だった頃か」
『?レアさんってそんなに歳をとっていないですよね?』
「いや、私はハーフエルフだからな。こう見えても100は超えている。」
『そうなんですか……意外です』
「さて、話を戻そう。」
「あいつにあった時私は無力だった。」
「力が無く、ただ家族や村の皆が殺されていくのを黙って見ていることしか出来なかった。」
「遂に村の皆は全員殺されてしまい、隠れていた私が見つかってしまった時だった。剣が私に向かって縦に振られ、世界がゆっくりと動いてるかのように錯覚して、(もう駄目だ)と、そう悟った時にあいつは来たんだ。」
「あいつは私に迫っていた剣を楽々と弾き飛ばすとこう言ったんだ。【殺されたくなかったら大人しく殺されろ】ってな。」
『なんですかそれ。めちゃくちゃじゃないですか』
「そうだろう。私もそう思ったさ。(結局殺されるんじゃないか!?)と。そしてあいつは全員をあっという間に無力化すると、名前を聞いた私にこう名乗ったんだ。」
「【俺の名前は、リライトだ。】とね。」
『リライト……ですか』
ヨミはその名を聞き、一瞬だけ、過去を思い浮かべるかのような表情をしたが、すぐに消えた。
「そいつは名前には意味があって付けられていると、そう言っていたから、リライトの意味をいつか聞きたかったんだが、そいつが目の前で、私を庇って死んでしまって、遂に名前の意味を聞くことが出来なかった。」
『リライトって言うのは、書き換える、そういう意味なんですよ』
「そうか……書き換える……あいつが常に言っていた言葉か」
『ところで、その人は最後に何か言っていたんですか?』
「ああ。最後の言葉が【I will come back】だったよ……もしや、ヨミなら意味が分かるのではないか?」
『ええ。分かりますよ。その言葉は"戻ってくる"と、そういう意味の言葉です』
「そうか。じゃあ私は楽しみに待っていないといけないな。また、会えることを」
「それでな、私は目の前であいつが死ぬところを見て、真っ先に思った事が復讐だった。だが、まず勝てないと悟ったんだ。その時の私はまだまだ非力だったからな。精々、ヨミと10回勝負して3:7で負け越す程度だっただろう。」
『その後はどうなったんですか?』
「がむしゃらに特訓したよ。とにかく復讐だけを思って、時間も忘れて、己を虐げ続けてな。」
「そして十分に強くなったと理解した時、仇を探しに行ったのだが、やつは何処にもいなかった。 」
『その仇は何か名乗ったりしていましたか?』
「やけに興味津々だな……まぁいいが。やつは、確か……【Pleasure murderer】と、そう名乗っていた。」
「言葉の意味は分からなかったが、何か嫌な意味の言葉だったのは分かった。奴が心底不愉快な笑顔で言ったからな」
『快楽殺人者……そう言う意味ですよ』
「居なくなってからも私を不愉快にさせるとは……やはり奴は人を不幸にする天才のようだな」
☆☆☆☆☆
そうして願いが集められた日は終わった。
黒人はどう行動するのか。
復讐鬼となり国を滅ぼそうとするか、それとも国のことを無視するのか……それは神ですらも理解しかねないこと。
ただ一つだけ、言えることは
賽は投げられた。
もう、全てが遅いのだ。
レアのセリフが連続するところがあるので、
レアのセリフを「」、ヨミのセリフを『』にしてます。
これからも、同一人物のセリフが続く展開がある場合、人によって「」を変換するのであしからず。