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望む物へと伸ばす手は届きを知らない  作者: てと
一章 バラバラの願い
4/12

バラバラの願い 1

???「前回のあらすじ!

騎士団長と戦いました!

以上!」


黒人「俺はもう何も言わねぇ。」


レアール「随分と苦労しているようだな……」


黒人「なっ……何故ここに!?」


レアール「それが私もわからないのだ。気がついたらここにいてだな。そしたらクロトの思念がだな」


キュルルリィン!!


黒人「この感じ……ニュータイプか!」

 

 俺は、何処かで軽視していたのかも知れない。


 そうそう事件なんて起こるはずもないと。


 そう高を括っていたのだ。


 俺は忘れてしまっていた。


 世界がどれだけ残酷なのか。

 そして人は何処まで行っても愚かなのだと……!


 俺は皆と一緒にいつものように訓練場に向かっていた。


 だが訓練場に入った瞬間、そこら中から兵士が集まってきて、俺を取り囲み


 ある者は剣をこちらに向け


 ある者は憎しみを孕んだ視線をこちらに向けつつ槍を構え


 そしてまたある者は人間ではない物を見るような目でこちらを見、


 そしてその言葉を発した。


「勇者、いや大罪人クロト・シダ!王暗殺の容疑がかかっている!連行されろ!」


「は?王暗殺?何を言って……」


「待て、兵士長 彼が、クロトが本当にやったのか?証拠はあるのか?」


 レアールさんは俺を庇う発言をした。


「証拠ならある。王を襲った暗殺者が大罪人クロトの名を告げた。」


「それだけでは証拠にならないのでは無いだろうか」


「それだけじゃない。こいつの部屋からは様々な物が出て来た。毒だったり暗器だったり。明らかに王を殺そうとしている!」


「それだって彼がやったとは限らないだろう?事実訓練の最中なら部屋に入れるぞ?」


「いや!犯人はこいつだ!間違いない!」


 一体何処からそんな自身が湧いてくるのか……


 クラスメイト達はざわついている。

 あいつそんなことをしていたのかよ と俺を軽蔑するやつや、そんなことするはずがないと庇う発言をするもの。

 特に何の反応も見せないもの。


 その渦の中、俺は……()()()


「ははは……ふふふふあははは」


「な、なんだ!?」


「気でも狂ったか!?」


「勘違いするんじゃねぇよ?誰の気が狂っただって?俺はただ、嗤っていただけさ……どうしようもなく世界が残酷で、人は何処までも愚かで……!あーあ!嗤えてくらぁ!再確認したんだよ。これだから俺は()()()()という生物が大っ嫌いなんだ!何処までも他人を陥れ!他人の不幸を嗤い!生きる為の努力を嘲笑い!そして踏み付ける!」


「お、お前も人間だろうが……」


 その兵士は怯えていた。


「ああ!そうだよ!俺だってクソッタレな人間なんだよ!それを考えるだけで虫酸が走る!鳥肌が立つ! 吐き気を催す!全てを破壊したくなる!やるならやればいい!俺はただじゃ死んでやらねぇぞ?死にたくねぇからな!」


 そうして俺は連行されていく。


 世界が、全てが変わる処刑場へと……


 〜〜〜〜〜 恵


 私には好きな人がいた。

 名前は志田黒人。


 あの人はとっても優しい。

 皆は不気味とか暗いとか言っていて、私に彼と話すのはやめろと、言ってくるけど、それは出来ない。


 彼は、きっと忘れてしまっているだろうけど。

 あの人は《私にとってのヒーロー》なのだから。


 あれは私が中学校に上がったばかりの頃だった。




「わ、私の名前は相良恵です!料理が得意で、趣味は裁縫と読書です。」


 私は中学校で、様々な感情ーー新しい出会いにワクワクと不安を、新しい出会いに期待ーーを胸に抱えて、


 この時私は楽しんでいけるだなんて、どうしようもないことを思っていた。


 そんなに甘くはなかったのに。


 やっと中学にも慣れてきたかというある日。

 それは突然起こった。


「あんたってさぁーちょっと見た目がいいからって調子乗ってるよね?」


 私に話しかけてきたのは、クラスの人気者だった。


「そうよ。みーんなあんたのことを気に入らないって思ってるのよ」


 皆が皆私を罵倒する。


「そ、んな……」


 誰も止めようとしない。

 それどころか楽しんでさえいるのではないか


 そんな疑惑が溢れてくる。


 皆が私を嘲笑っているかのような、そんな感覚に陥る。


 それと共に涙まで目から零れ落ちる。


「キャハハハ!こいつ泣いてるし!」


「うっわキッショ 泣けば解決するとか思ってるやつじゃん」


 そんな剥き出しの悪意の前に、慣れてなんかいない私の心はズタボロだった。


 それからというもの、ジュースを買いに行かされたり、万引きを命令されたりーーお店の人に見つかり怒られ、危うく両親にバレるところだったーーお金をせびられて、トイレに連れ込まれて水をかけられたり……


 今思えば誰か大人に相談すれば良かったのかも知れないけど、出来なかった。


 私はただ怖かった。

 人の悪意が。

 読めない人の心が怖かった。


 私はただ願った。

 私にとってのヒーローが来てくれることを。


 そんな生活が続いたある日。


 いつものように教室でお金をせびられていて。


「そ、そんな!昨日だって渡したじゃない!もうないよ……」


「へぇーあんた私達に刃向かうんだ?どうなってもいいんだ?」


「うぅぅぅ……」


 私は恐怖していた。

 これから起こること、それとその後の生活に。


 そんな時。


「うるせぇな」


 近くから声が聞こえてた。


 その声の主は、入学式の日から今日までしばらく休んでいた、何処か不思議な雰囲気を持つ少年、志田黒人だった。


「な、なによ!文句でもあるわけ!」


「それがあるんだよ。お前らがうるさくて落ち落ち本も読んでられねぇ。」


 彼は私にとっての希望だった。

 でも、その希望は次の瞬間に打ち砕かれた。


「やるなら俺がいないところでやれ。目障りだ。」


 あぁ……彼もきっと、他の人と同じなんだ。

 私には助けなんて無いんだ。


 きっと、私には、本中のお姫様みたいに、助けが来ることはないんだ。


「何言ってんの?あんた私に向かってそんなこと言っておいてタダで済むとでも思ってるの?」


「あぁ。思っているさ。思っているとも。それが何か?」


「あんた何よ!突然現れて!ヒーロー気取りでもしてるつもり!?はっきり言って鬱陶しいのよ!」


「違うね!俺は断じてヒーローなんて気取ってるわけじゃねぇ。俺はただ、お前が気に入らないんだ。」


 彼は、そう言ってリーダーに近寄り、そして……思いっきり顎にアッパーを食らわした。


 教室中が騒然とした。


 そうして彼は、その静寂に支配されていた教室で、言葉を発した。


「俺はさ、こういうのを見ているとイライラするんだよ。昔っからずっと、そうだった。他者を乏し、陥れ、それによって、自身の優越感を得る。そんな人間の愚かな部分を見せられると、どうしてもイライラが抑えられないんだ」


 リーダーはどうやら脳が揺れたようで気絶してしまって、泡をぶくぶくと吹いてかなり酷い姿をしていた。


 そして、皆を黙らせて、私を庇ってくれた彼に向かって、お礼を言った。


「あ、あの……ありがとう」


「あ?何言ってんのお前。てか誰だよ」


「うっ……あの……その………」


 しどろもどろになって何も言えない私に彼はこう言った。


「俺がやりたくてやったんだ。お前には関係ない。そして、俺が言いたいのはただ一つ。」


 そうして彼は私を変える一言を紡いだ。


「困った時は誰かが助けてくれるなんて思ってんじゃねぇよ。世界はそんなに甘くねぇんだ。自分で何とか出来る程の力を手に入れろ。自分一人でも抵抗出来る力をな。ただ、助けを待っているだけの奴には、誰も何もしてくれねぇぞ?」


 その時から、彼は《私にとってのヒーロー》になった。


 それからその騒ぎが原因となって彼は転校することになってしまった。


 だから高校で会えた時は嬉しかった。

 覚えられてないって知った時は悲しかったけど、それでもヒーローに会えた私は喜んでいた。



 そんな彼が、囲まれている状態で突然と笑みを浮かべ、嗤い始めた。


「勘違いするんじゃねぇよ?誰の気が狂っただって?俺はただ、嗤っていただけさ……どうしようもなく世界が残酷で、人は何処までも愚かで……!あーあ!嗤えてくらぁ!再確認したんだよ。これだから俺は()()()()という生物が大っ嫌いなんだ!何処までも他人を陥れ!他人の不幸を嗤い!生きる為の努力を嘲笑い!そして踏み付ける!」


「お、お前も人間だろうが……」


 1人の兵士からその言葉が発せられる。

 その言葉に対して、彼は更に言う。


「ああ!そうだよ!俺だってクソッタレな人間なんだよ!それを考えるだけで虫酸が走る!鳥肌が立つ! 吐き気を催す!全てを破壊したくなる!やるならやればいい!俺はただじゃ死んでやらねぇぞ?死にたくねぇからな!」


 彼は、この場全体に向かって、酷く憎しみのこもった言葉を、爆弾として置いて、連行されていった。


 私は……彼に助けてもらったのに。

 なのに私は彼を見捨てるの?


 嗚呼。私って最低だ。

 彼を庇うことも出来ない。


 彼を励ますことだって出来ない。


 彼に、彼の支えになることも出来ないんだ。


 私だって、彼の嫌う、最低の人間なんだ。


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