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望む物へと伸ばす手は届きを知らない  作者: てと
一章 バラバラの願い
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異世界に行った日

初めて投稿するので、至らないところもあると思いますが、マリアナ海溝よりも深い心でご覧になって下さい。

 

 ざわざわと、うるさい教室内。

 女子の口から発せられる耳がキンキンするやたら高い声に頭を悩ませながら俺、志田黒人(しだくろと)は本を読んでいる。


 読んでいる本は所謂、異世界クラス転移物の小説だ。

 他の人と比べてとても弱い主人公が追放されてなんだかんだで強くなって魔王を倒すという良くある展開。


 こんなものを読みたくはないが、生憎といつも読むはずの本は妹の本と入れ替わっており、これを読むしかない。


 ならば本を読まなければいいじゃないか、とそう思うことだろう。


 だが、何処かのラノベのように親友なり幼馴染なりがいない上にかなり孤立している俺からすれば寝るか本を読むかしかやることがない。


 寝てしまうと授業の時間も寝てしまうことが容易に予想出来るので今こうして本を読んでいると言うわけだ。


 一応受験生ではあるが、なんとかなるだろうと理解しているため勉強などはやっていない。


 受験のために必死に勉強している人達からしたら殺意が沸くだろうが、出来るものは出来るのでしょうがない。


 そんなことを考えていたら女子が1人近付いてきた。


「おはよう!黒人君!」


「お、おはよう」


 この女子の名前は相良恵(さがらめぐみ)で、クラスのアイドルのような存在だ。


 身長は160ぐらいで活発な性格をしており、クラスの殆どから好かれている。


 顔がかなり良く、しょっちゅう男子に告られては振っているという現場をよく見る。


 こいつのよく分からないところは何故か俺に話しかけてくるということ。

 普通に考えるのなら


 1、孤立しているやつにも話しかけることにより自分はいい人ですよアピールをしている。


 2、実はめっちゃ天然であまりなにも考えていない。


 3、俺に好意を持っている。


 の三点辺りだろう。


 3は俺の事を好きになる要素が無いだろう。

 何故なら俺とこいつは高校で初めて会ったはずだ。


 好きになる要素が感じられないので違うと判断する。


 1は、見ている限りは、そこまで色々考えては無さそうなので多分2辺りが上等だろう。


 ちなみに俺は若干コミュ症気味なので円滑に会話を行うことが出来そうにもない。


「黒人君今日元気無さそうだけどなにかあったの?」


「いや、特に何も無かったけど」


 こうして話しているとそれだけでクラスメイトのヘイトがーーまるでMHで生命の粉塵を使いまくったかのごとくーー物凄い勢いで溜まっていくので出来れば放っておいて欲しいところだ。


 だが、そんなことを言ってしまえば更にクラスメイトのヘイトが溜まってしまうことは明白。


 ならば誰か助けが来るまで話すしか方法は無さそうだ。


「恵またこいつと話してんの?こいつ何考えてるか分かんないし暗いし気味悪いからやめた方がいいよ?」


 そんな時助けがやってきた。


 やってきたが、心にグサグサと刺さる言葉を言ってくる。


 この乱入者の名前は坂井黄泉(さかいよみ)であり、俺のことをまぁまぁ嫌っている恵の親友である。


 かなり珍しい桃色の髪をしており、見る人によってはおとなしげで可愛いロリっ子と考えるであろう容姿をしている。


 実際は全く違うのだが。


 ちなみにロリと言うと殺されそうになるので要注意。


 なんでこんなに嫌われているのかはよくわからないが、こうして恵を止めてくれるので俺の中では結構評価が高い。


 最初あった時に昔何処かで見たような気がして話しかけたらナンパと勘違いされてそれからやたらと俺に"だけ"毒舌を発揮している。


「おーいお前らいい加減に静かにしろよー?」


 少しだけ悲しくなってきた時、先生が教室に入ってきた。


 しかし先生の言う事など聞かずに生徒は話し続ける。


 俺はだんだんと部屋の温度が上昇していくのをひしひしと感じとり、これから起こることへの恐怖で体を震わせた。


「お前らいい加減にしろーっっ!」


 突然、教室の至る所から火柱が吹き出して皆を驚かせる。


 不思議と回りに燃え移ることは無かったが、炎に慣れてない俺はガクブルと震えていた。


 ここのクラスの担任は運が悪いことに"能力者"だった。


 能力者とは、今から100年ぐらい昔にあった大地震の後から突如現れ始めた存在で、普通の人じゃまずありえないことが現象を起こせる人のことを言う。


 最初は少なかった能力者も、だんだんと増えていき今は約80%が能力者という現状だ。


 能力が無いからと馬鹿にされて蔑ろにされることは無かったが、それでも多少は無能力者にとって生きにくい世界になってしまったことは言うまでもない。


 その力は異能力と呼ばれ、国に検査されて能力によっては投獄されたりするという人にとってはあまり嬉しく無いものだった。


 異能力はランク付けされており、下からE D C B A S SS SSS とあり、Sランク以上行くと大体自由に生きることが出来なくなり、特別な学校へ行かされることとなる。


 俺は、無能力という訳ではなく、ちゃんと異能力を所持していた。

 が、その能力とは【所有】というもので、ランク付けされるとすれば間違いなくSSランクを超えるものだった。

 下手をすればSSSだって行くほどの。


 だから無能力の烙印を押されてでもその能力を隠しているし、絶対に周りにバラす気もない。


 その能力は、人1人につき、一つだけ何でも自分の物として【所有】するというもの。


 この能力を使えばきっとなんでも出来るが、わざわざそんなことをしたいとも思えないし、やる気もないのでそのままなのだが。


 この能力の危険なところは"何でも"所有出来るという点だ。


 その気になれば総理大臣にだってなれるし、金だって幾らでも手に入る。


 それに人だって……


 この能力が発現したのは多分、俺の頭からスッポリと抜け落ちている小学生の時だろう。


 どう頑張っても思い出せないので諦めているが。


 と、いつもの日常が始まると思ったその時、それは起こった。


 突如として、教室中が光り輝き、足元には魔法陣。


 ここまでくれば最近の学生なら真っ先に思い浮かぶものがある。


 異世界の勇者召喚。


 きっと今からそれが起きるんだろう。




 まさかそういう本を読んでいる時にそんなことが起こるとは思ってもみなかった。


 このままではまず間違いなく異世界に移動してしまうだろう。


 そしてその後あり得ることとしては、


 1 ー 1人だけやたら弱くて殺されかけてから復活して最強になる、もしくは殺されてから生き返り最強になる。


 2 ー 平均の能力を持っているが、失言をして追い出される、もしくは1のパターンを手に入れた人の物語のモブと化す。


 3 ー 万に一つどころか京に一つもありえないが、勇者になって皆を導く。


 この三パターンだろう。

 さて、ここまできて俺の反応は、













 絶対に嫌だ!






 異世界なんて行ってたまるかァァァァァッッ!!!




 俺の反応は、4 [異世界転移を全否定]だ。



 俺は立ち上がって椅子を掴むと窓に向かってフルスイングする。


「絶対にいきたくねぇぇぇぇぇぇ!!!」


 何度も何度もドカドカ叩くが、その度に謎の力によって弾かれてしまう。


「異世界なんてめんどくさいことこの上ないんじゃボケがあぁぁぁぁぁ!!!!」


 俺が狂乱状態に陥っているのにも関わらず、無情にも光はどんどん強くなっていく。


 俺は最近の学校にしては珍しい、かなりでかめのーーそれこそ人が入れるぐらい大きいーー通風孔を椅子で殴って無理矢理こじ開けると、まるでゴキブリの如く四肢を使ってカサカサと聞こえそうなぐらいの動きで移動していく。


 しかし、現実はとても非情で、一瞬の浮遊感と共に俺の意識は途絶えてしまった。





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