表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超能力と推理  作者: 奏良
17/40

一:消失(16)

「そんな・・・!」

鈴は唖然としてそれ以上言葉が続かなかった。

大外は、あらかたかかわっている人物の話を聞いているのか、ふんふんと小さくうなずく。

「あくまで推測だが、おそらく秀夫が暇を持て余している松田に声をかけたんだろう。そして、水谷も巻き込まれ、最終的に加担した」

永遠はそこで言葉を切った。

「でも、何で、自分の娘を殺す必要があったの?」

「彼女には、多額の保険金がかかっていた・・・」

「保険金・・・?」

よく、ドラマなんかの殺人の動機で使われる「保険金」。

まさか、現実でそんなことが起きるなんて・・・。

「秀夫は、保険金目的で、娘を殺した」

永遠が苦虫を噛み潰したような表情で視線を落とす。

「そして、それを聞いて激怒したのが沼市だった」

「え?」

「沼市はな、有理の実の父親だったんだ」

鈴も、大外も驚きで声も出なかった。

「自分の娘が殺されたことを聞いて、沼市は秀夫をバーに誘った。二人がバーに酒を飲みに来たことは、バーの店員が証言してる。そして、有理を殺した犯人を聞きだした。まさか、目の前で酒を飲んでいる男が、犯人だと思いもしなかっただろう。酔いつぶれた秀夫は、軽々と娘を殺したことを告げた―――――」

自分の娘を殺された悲しみ。

私には、わからない。でも、肉親を失った悲しみは、知ってる。

鈴は、思わず涙ぐみそうになって、あわてて下を向いた。

「そして、秀夫は、高校生に手伝ってもらった、と、告げたんだ」

永遠が正面に向きなおり、鈴を見据える。

「沼市は、復讐を誓った―――――。そして、その日から数日後、秀夫がまた金目的の犯罪を犯そうとしていることを知った。今度は、誘拐事件を起こして身代金を取ってやろうと考えていた。そして、誘拐する対象にあたっていたのが、緒方雄二だった」

「え?」

「沼市は、緒方雄二を誘拐したんじゃない、守ろうとしたんだ。

あの、職務質問があった日。緒方雄二は、公園で遊んでいたらしい。沼市は、その身を案じ、絶対に家に送り届けようと思った」

きっと、沼市は彼を守ることで頭がいっぱいだったはずだ。

今度は、娘のようにむざむざと殺させはしない、と。

そんな状態で、職務質問を受けて、きちんと答えられるはずもない。精神状態によっては、警官が、秀夫に見えてしまっても、おかしくはないのだ。

「そして、緒方雄二を家に送り届けた後、沼市は警察に秀夫のことを告発した。

道中有理殺しは、洗いなおされ、秀夫は警察に捕まった」

永遠はそこで言葉を切った。

「そのことに、松田と水谷は焦った。自分たちが加担したことが、ばれてしまうと思った。だから、あの日、あの廃墟に忍び込んだんだ。そこに、沼市がいることも知らずに」

「・・・」

「おそらく、秀夫に加担したことの写真でも取られていたんだろう。自分のことをばらしたら、お前たちも終わりだ、とかで脅されていたんじゃないか?そして、沼市はそのことを知った。あの日、沼市が二人に言ったんだろう。あの廃墟に、証拠の写真が置いてあるらしいぞ。秀夫の仲間を装って」

そして、沼市は二人を襲った―――――。

「緒方雄二は、あのあともたびたび廃墟を訪れていたはずだ。沼市と約束でもしていたんだろう。学校がなくて、親が家にいない日は、あの廃墟に来いと」

イメージのはずなのに、その光景が、鮮やかに鈴の脳裏に浮かぶ。


おじさんが、守ってあげるから。


聞いたこともないはずの、沼市の声が聞こえた気がした。

「そして、あろうことか僕と君は、あの廃墟に入った。沼市は、また松田と水谷が来たと勘違いした。だから、緒方雄二を守るために、僕らを襲ったんだ」

松田と水谷の精神状態がおかしくなったわけがいま、わかった。

そして、少年が消えた謎もいま、わかった。


あれは、沼市の愛情だった。

この子だけは、守る。

そのたった一つの決意だったんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ