一:消失(13)
「これしか・・・なかったな・・・」
鈴はさまざまな検索サイトで「沼市司」という名前を検索して回ったが、結局、あの事件のニュース意外ブログの情報しかなかった。
携帯電話を取り出し、今日教えてもらった永遠の携帯に電話をかける。
少しの着信音の後、
『もしもし?』
という声が聞こえてきた。
「あ、鈴だけど・・・永遠君?」
『何だ、君か。何かわかったのか?』
「あの、沼市司って人、職務質問中に逃走してるの」
『職務質問・・・それは、何かの事件に関連しているのか?』
「緒方雄二君って子が行方不明になった事件の検問」
『ふむ・・・』
電話越しに、永遠が考え込むようにつぶやく。
鈴は、永遠の次の台詞を待った。
『じゃあ、明日の9時にここに来てくれ』
「わかった」
そう鈴が言い終わるか、言い終わらないかのところで、もう電話は切れていた。
「9時・・・そっか、土曜日か・・・明日・・・」
どうも、最近環子さんの事件のことで、由梨と放課後は警察通いの毎日だったから、曜日の感覚がなくなってきている。
鈴はシャワーを浴びようと、部屋を出た。
「緒方雄二・・・か」
永遠はつぶやいてつい先ほど屋代が持ってきた資料をながめる。
「緒方雄二・・・沼市司・・・松田雄一・・・水谷環子・・・」
ぶつぶつとつぶやきながら資料を穴が開くくらい読み返した。
そして、一つの資料で手が止まる。
「道中有理」
その資料には、あの廃墟の近くで起きた幼児殺人事件のことが、こと細かく記入されていた。
道中有理という名の少女は、資料の中で満面あどけないの笑顔をこちらに向けている。
犯人は、すでにつかまっていた。
彼女の父親、道中秀夫だった。
その資料には、道中有理という少女の近辺の情報まで、全て記載されている。
それによると、今回の件で犯人としてつかまった、道中秀夫は彼女の母親の再婚相手で、彼女とは全く血縁関係が無かった。
「再婚の父か・・・」
永遠は、自分の考えを整理するように、机にひじを立て、目を閉じた。