表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超能力と推理  作者: 奏良
10/40

一:消失(9)

「でも・・・なんでこんな話を私に?」

鈴は永遠に尋ねた。

「別に、依頼人には、よく話してることだよ。みんな、冗談だと思って帰っていくけどな」

「ふぅん・・・」

なぜだろう。

自分で尋ねておきながら、こんな返事しか出来ない。

永遠の顔を見ながら鈴は思った。

ただ、他の返事がしたくても、出来なかったことは確かだった。

そう言って、ごまかすしかなかった。

「でも、参ったなぁ・・・あそこにいたっていう子供の正体も探らなきゃいけなくなった」

「すいません・・・」

「別に、前払いでお金もらっちゃったからな」

「それは、そうですね。3000円、ちゃんと渡したんですから」

口にしてから鈴は後悔した。

こんな事言ったら、突き放される――――。

衝動でそう感じた鈴は、反射的に謝った。

「ご、ごめんなさい!」

「は?何が?」

しかし、永遠は意味がわからないというような表情で鈴を見ている。

「いや・・・依頼してる側なのに、こんな事言っちゃって・・・」

「・・・」

永遠は鈴の目を見た。

「気にすることはない。もっとひどい罵声をずっと聞いてきたから」

「でも・・・」

「大丈夫だ」

それっきり会話が続かない。

二人とも、口を開こうとしなかった。

「私・・・見えるんです」

不意に鈴が口を開く。

永遠が顔を上げた。

「遠くにあるものとか、壁が突き抜けてるみたいに見えるんです。千里眼って言うんですけど・・・それは、人のことも同じで、骨が折れてたら、それが皮膚をすかして見える。本当は環子さんの状態のことも、見ようと思えば見られた・・・けど、出来るだけ、見たくなかったんです」

「やっぱり、そうだったか・・・」

納得したように永遠がつぶやく。

「時々、無意識に見たくないものまで見えたり・・・見たくないのに・・・目を閉じたって、見えて・・・」

鈴の目に、涙がたまっていた。

「私も、捨てられたんです・・・母に」

明白に鈴の頭によみがえってきた記憶。

忘れたくても、記憶という箱の中から、いっこうに消えてくれないものだった。


「こっちに来ないでよ、バケモノ!」

外では、雷が鳴り響いていた。

「何で・・・なんでそんなこと言うの、ママ!」

「ママじゃないわ!私は、あなたの親じゃない!私は、バケモノの親なんかじゃないのよ」

鈴は必死で母親の足にしがみつく。

それをなぎ払うかのように、母は足を振り回した。

「触らないで!」

アパートの一室で、ヒステリックな女の声と、むせび泣く子供の声が響き渡る。

「じゃあね、バイバイ」

「ママァァァァァ!」

母親は鈴をあざ笑い、部屋を出て行った。


「そうか・・・」

永遠はそれだけポツリとつぶやくと、鈴に自分のハンカチを差し出した。

鈴は涙をぬぐう。

初めて自分と同じような人を見つけた瞬間だった。


似た生い立ちを持つ永遠と鈴。

その生い立ちは、二人の性格を違うものに変えてしまった。

滅多に感情を表に出さなくなった永遠。

人におびえるようになった鈴。

そんな二人だからこそ、お互いを理解できたのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ