救急車
郊外の大型スーパーに車で出向き、家族で買い物をした帰り道。
後方から大きなサイレンの音。
道行く車は後方からの緊急車両に道を譲る。
サイレンの音を響かせながら一台の救急車が走り抜けていく。
後部座席に乗った小学生の息子がそれを眺めて言う。
「あの救急車、車に文字間違えて書いてるよ」
「車を運転している人がミラーを通して見るとちゃんと読めるようになってるのよ」
一緒に後部座席で座っていた私が息子に説明する。
「そうなんだぁ」
息子は明日にでも学校で皆に『知ってるかい?』と自慢しそうな表情と納得の声。
そして、それに続く旦那の言葉。
「でも、英語が何て書いてあるか読めないんじゃ意味ないよな」
AMBULANCE。救急車、の意味だ。それ以前に読めなくても車を見ればわかる話。
私は頭を抱える。
「お母さん、大丈夫?」
心配して息子が声を掛けてくる。
すみません、救急車をもう一台ここにお願いします。
良くある話(短編的に)