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なぜ、友人が急にそのようなことを言い出したのか、私にはわかりませんでした。
ただその時は、あなたのお母様はきっと、新撰組に興味があったんだ、と漠然と思っていたのです。
……違いますよ。
お母様はさほど興味はなかったの。
だから、初めて会ったときもそのような話は一切しませんでした。
あなたのお母様は料理がとても上手ね。
初めて会ったとき、私は友人とともに彼女の家に誘われたんですよ。
そこで、彼女の手料理をいただきました。
とはいってもラーメンでしたけれど。
あら、おかしいですか?
いいえ。意外ではなかったのよ。
なにしろ、鶏ガラからとったスープで作った、本格的なものだったのだから。
時間をかけて作ってくれたの。
あなたのお母様の家も、うちと同様にご両親が共働きをなさっていたのです。
そのため、短大に通っていたお母様がお料理をなさることも多かったと聞いていました。
その日は、初めてということもあって、私はほとんど話をすることはできませんでした。
その代わりに、お母様は大層楽しそうにお話してくれました。
……ええ、そうです。
初対面だというのに、お母様は本当に気安かった。
私にとって、相手がおしゃべりであったことは心安まるものです。
まして、あなたのお母様は、自分というものを誇示することはありませんでした。
ひたすら私の小説を褒めてくださいましたよ。
なのに、自分の小説のことなど一言も口になさらない。
とても楽しい時間を過ごさせてもらいました。
帰り道で、私は友人に、また会いたいことを言ってみました。
けれど、友人は不機嫌でした。
きっと、今回のことも彼女は本当は、会わせたくなかったのかもしれません。
ならばなぜ、彼女のほうから会わないか? と誘ったのか、私は後々までそれがわかりませんでした。
今ならメールなどで簡単にやりとりをすることはできます。
ですが、私が若かったころはまだ携帯電話などありませんでした。
固定電話の番号は聞いていましたが、お母様とはその当時、さほどのやりとりはしていなかったの。
何故か? ですか?
そうね……、きっと、私もお母様も友人に気を遣っていたのかもしれません。
今だから言えることですが、彼女はの友人は私とお母様くらいしかいなかったようです。
それに、独占欲が強かった。
私が新撰組の人という奇妙な夢を話したことで、自分の興味を私に押しつけることが多くなっていきました。
そう、新撰組に興味があったのはお母様ではなく彼女だったのですよ。
彼女は、私に余計な知識を話すようになっていました。
けれど……。
恐らく、それは私にとって必要なことだったのでしょう。
たとえ当時、迷惑なお話だったとしてもね。
そこには、お母様のことに触れる内容はありませんでした。
ならばどうして関係のないお母様に会うことを勧めたか、という疑問がありますね。
まだお話は続きますが、その前にひとつお聞きします。
……あなたは、ご自分に霊感があることを知っていますか?