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お待たせしました。
お茶をどうぞ。
……続き、ですね。
………………。
そうですねぇ……。
どう話せばいいのか……。
あなたにとって、私の家族など退屈な話でしょうね。
けれど、私にとっては意味を含んだものだったのです。
ともかく、私は両親から具体的になにかを教わったことはあまりありませんでした。
ただ、私の心の中にはどこか、強迫観念のようなものがありました。
人との接し方、心のありよう、仕草……。
なぜか女の子らしく、あるいは女性らしくしなければならないような気がしていました。
それでも、学生の頃はやはりそこそこおてんばな所もあったのも確かです。
友人とケンカをしたこともありました。
相手を叩いて泣かせたことも……あったのですよ。
好きになった男性もいました。
ですが、それは一時期のこと。
今思えば、相手に本気になっていたわけではなかったのでしょう。
高校時代の思い出はほとんどありません。
人付き合いが苦手だったのはその頃も代わりがありませんでしたからね。
もちろん、友人はいましたし、話しをすれば普通に接することはできたのですが、深い付き合いをする気にはなれませんでした。
その中で、ある男性が私に告白してくれたことがありました。
その人は私が所属していた部活の卒業した先輩でした。
付き合いは……そうですねぇ、一年続いたかどうか……。
彼は優しい人でした。
ただ優しい人で……。
だからかもしれません。
私のほうが我慢ができなくなってしまったのですよ。
ここでも、ある意味強迫観念があったのかもしれません。
女性は淑やかであれ、そして男性は優しいだけでは女性を守れない。
……私は、男性の中に強さがなければならない、と思い込んでいたのでしょう。
おかしな話でしょう?
私の心はきっと、幼いままだったのかもしれません。
あるいは自分の殻に閉じこもっていたか……。
ともかく、私はそれほど多くの思い出がないままに高校を卒業しました。
進んだのは、専門学校でした。
そこで、私はある女性と知り合ったのです。
その人は多分、私同様、人付き合いが苦手だったのかもしれません。
クラスの中でも自分から友人を作ろうとしない人でした。
私は……。
本質は変わっていません。
ですが、クラスではわりと友人に恵まれていました。
というのも、そのクラスの中での成績がよかったからなのです。
担任の教師にも気に入られていました。
あら?
自慢に聞こえましたか?
でも、これは事実ですよ。
教師が作るテスト作成を手伝うこともあったくらいですから。
そのためもあったでしょう。
先ほど話した女性はあまり出来のいい生徒ではなかったため、なにかと私が教えたものです。
彼女は、たとえ表面だけであっても、私と話すときには真剣に向き合ってくれていました。
じつは、私は中学の頃、友人と交互に一つの小説を作っていました。
あなたは聞いたことがないかもしれませんが、私が若い頃は交換日記というものが流行していたの。
友人同士で口では言えないことや日常などを書いて相手に渡す。
翌日は渡された人が何かを書いてまた相手に渡す……。
私と友人は、それを小説にしていたのね。
だから、相手がどう展開してくるか、それをどう繋げるか、時には意地悪して相手が困るようなストーリーを作って渡したりしていました。
高校生になって、別々の学校にいってしまったために、その小説は立ち消えになってしまったけれど、私は彼女の許可を得て、一人で続けていたのですよ。
その小説を、専門学校で知り合った彼女は熱心に読んでくれました。
そして……。
彼女の高校時代の友人の一人もやはり小説を書いている、という話を聞いたのです。
ええ。
それがあなたのお母様です。