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4.不意の再会②

「ごめんなさい」

「え?何がですか?」

「いえ、何だか無理に聞いたみたいだから。何だか言い難そうだし」

「あ~、いえ、構いませんよ。私も確かに、ルルフレアさんに見覚えがあるんですけど、どこだったかは思い出せなくて……」


考え込んでいた俺を見かねてか、ルルフレアは謝りながら頭を下げてきた。

どう誤魔化すかを考えていたのだが、いい案は浮かばない。

正直な所を話す事にして、家名を伏せれば大丈夫なんじゃないかなという期待を込めて……。

もしバレたら、その時は黙っていてくれるように頼むしかない。

それまでに少し仲良くなっておけば、頼みやすいだろう。


「それで、はっきりとは思い出せないんですけど、恐らくどこかのパーティーか何かで見かけたのかと……」

「パーティー……。貴女も貴族だったの?」

「えぇ、まぁ。少し事情がありまして、家を出たんですよ」

「そう……。パーティーね……」


そう言うとルルフレアは俺から目を外し、少し考え込んでいる。

俺はそれを横目にチラリと見て内心焦る。

パーティーという単語から何かを思い出そうとしているのは目に見えて解った。

これ速攻バレるんじゃ……。

まだ少しも仲良くなってないぞ。

顔見知り以上知り合い未満の関係だよ。

冷や汗を流しながらルルフレアを見守っていると、何かを思い出したのか、また俺の方へ顔を向ける。


「思い出せない」


思い出せないのかよ!

びびって損したよ!

まぁ思い出せないならいいか。


「私も思い出せませんね……。まぁ、いつか思い出す事もあるでしょう!」

「……そうね」


よし、何とか誤魔化せたな。

いつかは思い出すかもしれないが、今はまだ大丈夫だろう。

安堵の溜息を吐きつつ、少しでも仲良くなれる様に会話でも試みてみるか。

こんなところで会ったのも、望む望まないは別として、何かの縁には違いない。


「ルルフレアさんは、確か、中央都市に向かったって聞いたんですけど、どうしてこの街に?」

「噂を聞いて」

「噂、ですか?」

「そう、ここのダンジョンで竜を見たって」

「竜、ですか」

「そう、竜。でも多分勘違いだった。今日、討伐隊としてダンジョンに行ったんだけど、群れの中にロックリザートが居たから、多分それと見間違えた」

「へぇ~。ルルフレアさんは、竜を探してるんですか?」


少し興味が沸いた俺は、少し突っ込んで聞いてみる。

竜は以前のゴブリンイーターよりも情報が少ない。

昔は数多く居たらしいが、現在はもう絶滅しているという噂だ。


「そう。私は竜を探すために冒険者になった。貴女は何故冒険者に?」

「そうなんですか。私は……、そうですね……、手に職が欲しかったから?」

「手に職……?まぁ、確かに、貴方ぐらい力があれば、食べるには困らない、か」


竜か……。

少し考える。

まだ絶滅していないとなると、脅威度は最低でも8を超えるという噂だ。

小さい個体や、成長しきっていない子供だとして8、もし成長した個体となると、9か、10まで達する事もある。

だがしかし、浪漫だよね!

ファンタジーと言えばドラゴンだろう。

危険なんだろうが、見てみたいという衝動に駆られる。


「ルルフレアさんは、竜を見つけてどうするんですか?」

「ん……」

「あ、いえ!言いたくないならいいんですよ?余り根掘り葉掘り聞くのも何ですし……。友達でもないのに」

「友達?」

「え?」


俺の言葉に急に反応し、此方へ凄い勢いで振り向いた。

友達という単語に反応した様だが、何か気に障ったのだろうか。


うん。

それにしても、今までは忘れようと努力してきたが、やはり、距離が近い。

まぁ今更何も言うまい。


「友達、なら、何でも話す?」

「え?いや、どうですかね……。いくら友達でも、何でも大っぴらに喋る訳ではないかと……、親友とかなら別かもしれませんけど」

「し、親友!?」


何だよ!

顔が近いって!体もだけど!

更に身を乗り出す様に顔を近づけてくるルルフレアに、俺は腰を引いて身構える。

友達の次は親友という単語に食いついた様だ。

そして、急接近で腰が引けている俺に気付いたルルフレアは、ゴホンッと咳払いを一つして俺から少し離れる様に居直る。

此方を少しチラチラと見ながら何か話したそうにしているので、俺は引けていた腰を戻して、相手の出方を見守る事にした。


「そうか……。話すと、私と貴女は親友になると、言う訳ね」

「え?」


そうなの?

そういう話だった?

誰か今までの俺達の話、録音してないかな?もう一回聞き直したいんだけど。


「ん……?そういう、話でしょ?」


勿論そういう話ですとも!

俺は最初から解っていたとも!

決してこの隣にいる美少女の不安そうな顔にほだされた訳ではないぞ。


「そう、なりますね?」

「そう……、じゃぁ話す」


どうやら彼女は俺と友達になりたいらしい。

いや、親友か。

まぁどっちにしても、俺の正体がバレた時に友達になっておけば黙っていてくれる可能性が増える。


しかし……、もう俺は限界が近い。

流石に長風呂しすぎだ。

どうせ明日も暇なんだから、明日改めて話しよう。

彼女がいいならだが。


「あのー、すいません」

「ん?どうかした?」

「いえ、結構長風呂し過ぎたみたいで……、頭がボーっと……」

「そういえば、少し顔が赤いかも……。大丈夫?」

「はい。すいません、会話の途中で申し訳ないですけど、明日またお茶でもしながら話ませんか?ルルフレアさんが良ければですけど」

「えぇ!?外で……お茶をしながら……?」


今度は何だ。

気に入らないのだろうか。

俺をこの灼熱地獄から早く解放してくれ!


「ダメなら諦めますけど……」

「いえ!ダメじゃない。ただ……」

「ただ?」

「外でお茶なんて、……と、友達みたいだと、思って」


成程。

恐らくだが、ルルフレアは余り友達が居ないのかもしれない。

そういえば、俺もあんまり居ないな……。

今でこそ友人と呼べる人は少し居るが、城に居た時はゼロだったし。

友達が増えるのは素直に喜ばしい事だ。


「友達みたい、じゃなくて、私とルルフレアさんは友達でしょう?あ、親友か」

「そ、そうだった。……なら明日」

「はい。じゃぁ、明日の昼過ぎに組合の前で待ち合わせしましょうか」

「わかった。あ、私の事はルルでいい。敬語も別に構わない」

「そう?……解った。ならそうする。じゃぁ、私の事もエミリーでいいよ」

「ん、わかった。じゃぁ、また明日」

「じゃぁ私は限界だから出るよ。また明日ー」


そう言って俺は立ち上がり、直ぐに浴場を出て脱衣所へと向かう。


成程、これが裸の付き合いと言う奴か。

裸の付き合いをすると仲が深まるとは本当の話だった様だ。

俺は今日、友達をすっ飛ばして親友が出来たのだった。

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