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1.新たな旅立ちの準備

 リムールで冒険者となった俺と師匠は、修行等をしながら日々を過ごした。


 ここ、リムールへと辿り着いてから4日が経過し、ここでの暮らしにもある程度慣れたと言っても過言ではないだろう。


 そして現在、俺は買い出しにギムレットさんの店へと出かけていたその帰り道だ。

 師匠は宿屋で現在荷造りの真っ最中。

 俺達は今日、この街を出るつもりだ。


 俺が家出してから暫くの時が経過しようとしているが、今の所、驚くほどに音沙汰が無い処か、一国の姫である俺が家出した事など噂話にも上がってこない。

 バレていないはずが無いので、恐らく隠されているのだろうが、余りにも反応が無いので少し気味が悪い。

 王都とある程度の距離はあるが、そこまで離れていない事を考えると、そろそろここを引き払って別の街に移動したほうがいいだろう。

 まぁこの理由は師匠には話していない。

 家出してるから、もっと遠くに行っておきたいとは、言いにくいし。


 最もらしい理由としては、ここに居てもあまり仕事が無い事だろうか。

 ここは余り魔物の動きも活発では無いし、依頼は護衛や薬草採取などが多い。

 俺達は魔物狩りをメインにしたいという希望があるのだが、ここではゴブリンぐらいしか出ないのだ。

 そこで、もっと大陸の中央に寄った場所に行きたいという訳だ。


 ここ、リムールからずっと北東に進むと、4つの国の国境が交わる場所に大きな都市がある。

 7ヵ国に属さない独立都市として機能しているそこは、冒険者の街とも呼ばれている。

 そこに行けば、周りにある4つの国からの依頼は勿論、他の国からの依頼が届く事もあるほどで、国中から依頼が集まってくるらしい。

 目ぼしい依頼も、見つかるだろうという事だ。

 それと、まだまだ先の話ではあるが、その街で開かれる武闘大会の様な物があり、かなりの盛り上がりを見せる一大イベントだという話だ。

 参加するかは別として、そんな楽しそうなイベントを見物しない手は無いだろう!


 まぁその中央都市ハイエンドに関する情報を吹き込んできたのは、ユーリンだ。

 アルドとサミアとユーリンの3人は、どうやらそこを拠点に各地を転々としているらしい。

 因みにルルフレアもそこを拠点にしている様で、彼女は既にゴブリン騒動が終わった次の日にはそっちに帰ったらしい。

 そして、彼女等3人も昨日、中央都市へと向けて旅立っていったという訳だ。

 それで一緒に行かないかと誘われたのだが、師匠とユーリンが道中喧嘩をするのが目に見えていたので丁重にお断りし、別に向かう事になったのだ。


 丁重にお断りしたのだが、何故かユーリンは諦めず、出発する前に俺を誘拐紛いの方法で連れ去ろうとしたのはいい思い出?だ。

 俺以外の人にしたら犯罪だよ?俺だから冗談で済んでると言っても過言じゃないぞ?

 彼女は本当に本能のままに生きているようだ。


 まぁそれはさて置き。


 宿屋へと帰ってきた俺は、受付の女性に軽く会釈をして階段を上がり、部屋へと帰ってきた。

 どうやらもう荷造りは終わったようで、ベットでくつろぐ師匠の姿が目に入る。

 俺が部屋に入ると、此方へ振り向き、いつもの微笑みで出迎えてくれる。


 なぜかその微笑みに、少し俺を責めている様な気配を感じるのは恐らく俺だけだろう。

 そして何故か少し怒っている様だ。

 暫く一緒にいる事で、俺にはそのいつも通りに見える微笑みに隠された裏の感情が少しだけ読める様になって来た。


「お帰りなさい、エミリー。どうでしたか?」

「ただいま、師匠……。ちゃんと、買ってきましたよ」

「それは良かったです。あれでは全然足りませんよ。……一緒に行って選びたかったのに、な、ぜ、か、留守番だったのは納得していませんが」

「……分担したほうが効率がいいじゃないですか。それに、こっちは私の私物もあった訳ですし……」

「えぇ!?エミリーの私物は私の私物だと言っても過言では無い物ですよ!?そんな他人行儀なっ!」


 おい、待て、なんだそのジャイ〇ン見たいな物言いは。

 俺の物は師匠の物ってどういう事だよ。コレを俺と師匠でシェアするのか?

 ……それはちょっと、遠慮したいかな。


 まぁ何を言っているのかと思うだろう。

 一先ずその話は置いといて、取り合えず、俺は買って来た物を袋から出して行く。

 まず、これから旅に出るに当たって、道中の食料や簡単な調理器具。

 包丁、鍋、調味料、等だ。

 食料は日持ちする様な物をメインに、後はパンぐらい。

 続いて、初級、中級ポーションを数個。

 稽古が始まってから目に見えて減っていくのだ。

 俺が望んだ事なので文句は言えないが、魔物との戦闘で使ったこと無いのに、稽古で減っていくってどういう事だよ。

 本当に文句は無いよ?ただね、俺を攻撃する時に顔を上気させて嬉しそうな微笑みを浮かべるのは止めて欲しいかな?

 俺がぶっ飛ばされた後等に必死こいて立とうとしてる時とか、あからさまだ。


 どうやら師匠は宣言通りのSになった様だ。あ、師匠のSですよ?勿論俺はMじゃないぞ?弟子だからDかな?よし今日から俺をDと呼べ!


 まぁ現実逃避もここまでだな。


 次々に俺が袋から出した物を、師匠は最近買ったばかりの自身のアイテムボックス(中)に、大して確認せずに放り込んでいく。

 心なしか急かされている様だ。


 あ、因みに師匠が買った奴も袋タイプで俺のより容量がデカい。

 金貨120枚の所を、ギムレットさん価格でなんと98枚で購入出来ました。100枚を切りました!お買い得ですよ!

 解ったよー。出ーすーよー。睨むなよー。


 ダラダラしてると師匠に睨まれたので俺は袋の底へと手をやり、私物を取り出す事にする。


 そもそもの発端は、俺が荷造りをしていた時に師匠が覗き込んできた事だ。

 今日街から出る事が決まり、俺と師匠はそれぞれ荷物を片していたのだ。

 これが終わったら街を出る前に、一緒にギムレットさんの店に寄るつもりだったのだが、荷物を片してアイテムボックス(小)に放り込む俺を覗き込んで師匠は言った。


「え?それだけしかないのですか?」

「え?いや、十分でしょう?洗い替えでこれだけあれば……」

「すぐに傷んでしまいますよ!買いに行きましょう!私が選びます!」


 と、言い出したのだ。

 まぁ何を見てそう言ったのかと言うと、俺の下着の数が少ないと言い出したのだ。

 それでまぁ、選んでもらうのは流石に遠慮させていただいて、俺が1人で買い出し次いでに買いに行ったという訳だ。


 なんでこんなに俺の下着に熱心なのか謎すぎるが、恐らく同じ女の子としてというお節介だろう。

 ありがた迷惑、とは流石に言えないのである程度は従うが……。


「……まぁ、いいのがありましたよ。一目で決めました」

「ほほう!それは興味深いですね!」

「これです!」


 得意げにパンツを取り出す俺、ってなんだかバカみたいだが、目を伏せておいて下さい。

 真面目な感じで取り出すのも恥ずかしいし。


 まぁ本当にコレは一目で決めたのだ。

 まさかこれがあるとは思わなかった。

 流石ギムレット店の品揃えには度肝を抜かれるぜ!


 見よ!この伸縮性!通気性もバッチリ!ピッタリとした履き心地!高い安定性により、立ち座りのズレを軽減する事に成功したと言う新商品!

 見れば見る程そっくりだ。これぞ、前世でも愛用した、ボクサーパンツ!


 これを会計に持っていた時の、女性店員さんの何とも言えない表情は記憶に新しいが、後悔はしていない。

 まぁ確かに小さい少女が買うには少し変だったかもしれないが。


「……」

「……」


 師匠はベットの上に出した数着のボクサーパンツを眺め、手に取り、俺の顔とボクサーパンツを交互に見る。

 なんだよう。

 色や柄も色々あったが、シンプルな一色物をメインに揃えてみた。


「……これは、男の子用に見えますが……」

「……そうなんですか?両用じゃないですかねー。きっと」

「そうなのですか……」


 うん、きっとそうだ。

 師匠は俺の言葉に少し考えた後、ボクサーパンツを俺の腰辺りに少し当ててみたりする。 


「……、アリかもしれません……」

「ん?」

「いえ、まぁ、エミリーがこれを気に入ったと言うのならいいでしょう」

「そうですか」

「……俺っ娘、ですか……」

「え?何っ娘?」

「いえ、なんでもありません。さぁそろそろ出ないと行けませんね」

「そうですね」


 何だか良く解らないが、俺のパンツ達は合格したようだ。

 シェアはしないよ?これは俺のだよ?


 なんかもう、ちょっと前から下着の話題ばっかりな気がするな。もう下着の話はいいよ。


 そして、俺は荷物をアイテムボックスの中に放り込み、宿を後にするのだった。





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