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頂上決戦!魔王vs逆さメイド

ユーニグルドの放った魔法の光が消えた頃、戦場に立っている者はいなかった。


暗黒魔法によって気を失ったアルフィーナやアイロやフィーネも力を使い切ったゴブリーやメルも、究極魔法を放ったユーニグルドも、そして…魔王ですら気を失って地に伏せていた。


「…勝った…のか?」


その様子を遠巻きに見ていた住民やプレイヤー達は困惑気味にそう口にした。


そして次第に確かに気を失い、動く気配がない魔王を見て、勝利を認識することができるようになったのか、誰かが大きな声で叫んだ。


「勝ったぞおおおおお!!!!!!」


そして皆が雄叫びのような歓声を上げた。


「国王!!ご無事ですか!?国王!!」


慌てて騎士達が国王達へと駆け寄る。


国王以外はただ気絶しているようだが、国王だけは様子が違った。


呼吸が荒く、顔色も急変し、激しくうなされていた。


しかし、それでも息はある。


国王の無事を確認すると街の人たちは勝利の叫びをあげた。


誰もが勝利に酔いしれ、いま生きていることに感謝と喜びをあらわにした。


「勝った!!勝ったんだ!!」


「うおおおお!!!凄えぜ!!国王!!」


「あの魔王に勝ったんだあああああ!!!!」


人々が口を揃えて勝利を讃える中、ユーキも安堵したかのように呟いた。


「良かった。…なんとかなった」


「活躍できなくて残念でしたね、ユーキ」


「醜態を晒すよりは断然マシだろ」


呑気にナビィとそんな話をしていると隣にいる世界の滅亡を望む少女はニタニタと汚い笑みを浮かべながら笑い始めた。


「くっくっくっく…馬鹿どもめ。せいぜい勝った気でいるんだな」


「…田中?どういう意味だよ?」


「なんだ?まだ気が付かないのか?。ほら、見てみろ」


田中がそう言って指を空にさし、こう言った。


「月は、まだ紅いぞ?」


するとその時だった。


この場は多くの人が歓喜の声で満ちているはずなのに…それ以外の声が聞こえる余地がないほど喜びで騒がしいのに…恐怖で身を震わすような邪悪な笑い声が確かに聞こえてくるのだ。


戦いは終わったはずなのに…背筋を凍てつかせる寒気が消えてくれないのだ。


やがて人々はその恐怖の元凶へと目を向ける。


そう、空に漂う人の形をした黒いモヤのような何かへと目を向けるのであった。


「くっくっくっく、あっはっはっは!!!!!」


その黒い何かはぬか喜びをする群衆を見下すように嘲笑う…それはまるで消えたはずの魔王のように。


「残念だったな、人間どもよ…我の魂はまだ消えてはおらんぞ?」


そう、魔王は…正確に言うならば魔王の魂は消えてなどいなかった。


ユーニグルドの放った究極魔法は悪しきものを消し去る最上位の光魔法…いかに魔王と言えどもそれをまともに食らえばひとたまりもないほどの魔法であった。


しかし、魔王はその魔法をくらう直前、セブンスジュエルの力によって動きを封じられた肉体を捨て、魂と分離させて回避したのだ。


「惜しかった…実に惜しかったぞ、人間ども。あと一歩で我を消し去ることができた…だが、所詮は下等生物のやることだ。これが当然の結果だ」


そして魔王は元の依代であったマオの肉体へと目を向けた。


「残念ながら、アレはもう使い物にならんな。光魔法で完全に浄化されてしまっている。魂を定位着させやすい体であったが…仕方あるまい」


魔王の魂は口惜しそうにそんなことを述べた後、周囲に群がる人間達を見渡した。


「せっかくだ、今度は強い肉体…一番レベルの高いやつに憑依するとしよう」


そして魔王は小高い丘の上に立つひとりの少女に目をつけ、ニヤリと笑ってみせた。


「いるじゃないか…良い器が…」


そう呟くと魔王は風の如く、田中に向かって飛び込んでいった。


「田中!!危ない!!」


それに気がついたユーキが田中に呼びかけるが時すでに遅し、魔王の魂は田中の間近まで迫っていた。


「いただくぞ!!その体!!」


そして魔王の魂は田中の身体の中へと入ってしまった。


それと同時に魔王の魂に取り憑かれた田中の身体が耳をつんざくような叫び声を上げ、それに呼応するように嵐のような突風が辺りに吹き荒れた。


「田中ああああああ!!!」


ユーキが田中に向かって叫び声を上げるが、嵐にかき消され、空中で泡のように溶けてなくなった。


さらに今度は突風と同時に今までとは比にならないくらいに邪悪で禍々しい気配が辺りを包み込む。


やがて叫び声が高笑いに変わった後…ピタリと風は止み、そいつが姿を表した。


姿形はいつもの逆さメイド…しかし、その瞳は血よりも紅く、そして鋭い瞳は睨まれるだけで気を失いそうになる程の狂気を帯びていた。


そして、人々を恐怖に陥れるほどの邪悪な声色で言葉を奏でた。


「素晴らしい…なんと素晴らしい肉体なんだ。力が…抑えきれないほどの力が全身から溢れ出てくる!。おまけに肉体との馴染みも良い。我を拒絶するどころか…まるで破滅を歓迎しているようにも思える」


そんな新たな肉体に乗り移った魔王の姿に人々は絶望を露わにした。


「最悪だ…まさか逆さメイドと魔王が一つになるだなんて…」


「こればかりは流石のユーキさんでもどうしようもない…」


「終わった…世界は終わったんだ」


誰もが世界の存続を諦め、抗うことすら放棄して崩れ落ちるようにその場に座り込んでしまった。


「少々身なりは悪いが、まぁ、それを差し引いてもいい身体だ。気に入ったぞ」


「田中!!しっかりしろ!!田中!!」


英雄と呼ばれているユーキも流石にこればかりは絶望しているのか、その声はどこか震えているようだった。


「くっくっく…残念ながら完全に魂と肉体は融合した。…もう終わりだ、人間ども」


魔王のその言葉に人々は生を諦め、ひれ伏すように地面に座り込んでしまっていた。


「これは…大変なことになりましたね」


前代未聞の非常事態なのか、どんな時でもふざけていた鬼畜妖精のナビィですらそういって固唾を飲んでいた。


「ナビィ、魔王が乗り移るとどうなるんだ?」


「肉体が魔王の力を得てステータスが大幅にアップするんです」


「そんな…レベル99の上にさらにステータスが底上げされてしまったら…」


もはや誰も逆さメイドを止めることはできない…ユーキがそう結論づけようとしたその時、ナビィが追い打ちをかけるかのように説明を続けた。


「あのマオという元の魔王の器ですらレベルは50ほどしかなかったんです。それでも魔王の力によってアレほどの強さまで底上げされたんです。魔王の力はそれほど強大なものなんです」


「そんな、あれで元はレベル50だと?。一体どれほどステータスがあがるんだ?」


もう誰にもどうしようもなく、最後のささやかな抵抗程度に尋ねたユーキの質問に、ナビィは迫真の声でこう答えた。


「具体的には…ステータスが元の4倍になります」


「ステータスが元の4倍…だと?。…………ん?」


ナビィの言葉にユーキが引っかかりを覚えているのを尻目に逆さメイドに乗り移った魔王がその口を開いた。


「ふっふっふ、このレベル99の力を試すにはいささか非力ではあるが…いいだろう、貴様らをこの力のサビにしてやろう!!」


そう言って魔王は力一杯腕を払いのけてみせた。


レベル最大、STR最大、そして魔王の力によって4倍もの補正がかかったステータスから繰り出されるその一撃はもはや神の鉄槌を超越し、あまりに大きすぎるその衝撃は人々に一瞬時が止まったと錯覚させるほどの一撃であった。


まるでこれからちりひとつ残さず消えていく者達への神からのせめてもの慈悲と言わんばかりにスロー再生されるこの瞬間に、誰もが頭の中で走馬灯のように高速再生される過去の生きていた記憶に想いは馳せていた。


かつて恐竜の時代を終わらせたとされる隕石が地球に衝突したかのような全てを飲み込む一撃は下等生物でしかない人間達には明らかに度がすぎるものであった。


哀れにも罪なき人々はこの世に一片の肉片すら残せずその生を終えた…はずだった。


あの世界が揺らぐほどの威力の一撃であったにもかかわらず、そこには五体満足の無傷な人々が残されていた。


「おっと、どうやら力が大きすぎてうまく制御できなくて外してしまったようだ。…だが、今度はそうはいかんぞ?」


再び手を振り払う攻撃をする魔王。無駄に力が有り余るその一撃から繰り出される衝撃は人々に再び走馬灯のように流れる記憶を見せる暇を与えた後、あたりのものを一切合切吹き飛ばし、城下町であったはずのその一帯を荒れ果てた荒野と変えた…が、なぜがそこには攻撃したはずの人々だけが健在していた。


「ふっふっふ、運がいいな。…いや、むしろ悪いのか、この我の攻撃を3回も受ける恐怖を味わうことになるなんてな!!」


ただの通常攻撃のくせに、周囲を荒地にする迷惑極まりない必殺の一撃を再び人間にぶつける。


だが、今度は確実に当てるため、人間達にじっくり狙いをすまして、その拳で直接人間に向かって殴りつけた。


レベル99、STR999をさらに4倍に補正した拳から放たれるその一撃は…(以下省略)。


なんやかんやでその場に隕石でも落ちたかのようなクレーターが出来たが、人々は元気だった。


死を覚悟したはずなのになぜかまだ生きながらえている状況に人々が困惑する中、魔王が口を開いた。


「…なぜだ?なぜ攻撃が当たらん!?。この身体はレベル99なのだぞ!?攻撃が当たらないはずはない!!。まさかDEXにステータスを振ってないなんてことはあるまいし…」


魔王が不測の事態に動揺していると、ユーキが同情混じりに魔王に声をかけた。


「魔王さんよ…残念だが、そのまさかなんだ」


「…なに?どういうことだ?」


「だから…そのまさかのまさかってことなんだ。その身体はな元のDEXが1しか無いんだ。だから4倍になっても4しかないんだよ」


「ば、馬鹿な!?レベル99のくせにDEXが1しかないだと!?一体どんなステータスの振り方したんだ!?…そうか!!DEXに振ってない分INTに振ってあるんだな!!はっはっはっは!!戦士という職業に騙されたが、この身体は実は魔法タイプということなんだな!?そうなんだろ!?」


そう考えた魔王はどこか藁にもすがるように自身のマジックポイントを確認したが、その数値の低さに唖然となった。


「最大MPが…たったの4?馬鹿な!?これでどうやって戦えと言うのだ!?」


めちゃくちゃなステータスに狼狽する魔王にユーキはどこか親近感がわきつつ、魔王に残念な事実を突き付けた。


「魔王さんよ、残念ながらその身体はSTRに全てのステータスを極振りした、攻撃の当たらない脳筋なんだ…」


「そ、そんな馬鹿な!!。攻撃するしか能がないくせにその肝心な攻撃が当たらないだと!?そんなの脳筋なだけでただの燃えないゴミじゃないか!?」


慌てふためく魔王を見ていてどこか楽しくなってきたのか、ユーキはさらに自慢げに田中の燃えないゴミ要素を付け加えた。


「ふっふっふ、それだけじゃないぜ、魔王さんよ。おまけにその身体はINTが足らずに文字が読めないせいでパーティ編成も、装備を変えることすら出来なんだぜ?しかもレベルがカンストしているせいでレベルアップによるステータスアップは望めないんだぜ?」


「馬鹿な!?一生このふざけた格好でいろと言うのか!?こんな惨めな呪われた装備で生きるくらいなら死んだ方がマシと思うような格好で醜く生きてきたと言うのか!?」


「ふっふっふ、ウチの田中を甘く見ないで欲しいね。おまけに奴隷の指輪が外せないせいで常日頃から状態異常にかかる生活を強いられているんだぜ?」


「一体全体、どこをどうしたらそんな生き地獄みたいな詰み状態になるって言うんだ!?馬鹿も休み休み言え!!そんな八方塞がりな状態で生き続けるとか正気とは思えん!!攻撃も当たらず!魔法も使えず!装備も変えられず!パーティも変えられず!状態異常に苛まれ!一文無しで!おまけにこの醜い姿!!こんなんで生きてて何が楽しいと言うのだ!?」


そんな魔王に向けてユーキはどこか物憂げにカッコつけてこんな言葉を突き付けた。


「それが…ウチの田中ってやつさ」


「ふざけるなあああああ!!!!こんな身体即クーリングオフじゃああああ!!!!!さっさと乗り換えてやるううううううう!!!!!!」


魔王がそう叫んで黒いモヤとなって田中の体から這い出ようとしたその時、田中の身体が突然動き出し、身体の一部とまだ繋がっているその黒いモヤを直接手で握りしめた。


そして先の魔王の時よりも邪ないつもの笑みを浮かべながら田中が口を開いた。


「待てよ、せっかく私の身体に取り憑かせてやったんだ。…今際の際まで付き合えよ?」


そんな魔王よりも邪悪な田中の言葉に魔王は反論する。


「ふざけるな!!お前みたいな沈みかけの泥船で心中できるかあああ!!!!我はもっと真っ当に魔王として生きるのだああああ!!」


黒いモヤとなった魔王はそう言って暴れるが、STR999の魔の手を振り払うには至らなかった。


「逃がさん…絶対に逃がさんぞ…」


「嫌だ!!頼むから逃がしてくれ!!お願いだ!!我はそんな身体で生きたくないのだ!!そんな身体で生きるくらいなら死んだ方がマシだ!!」


まるでライオンの檻にぶち込まれたリスのように魔王は震え、必死になって逃げようと足掻いていた。


「ダメだ、逃がさない。お前は私の体と共に朽ち果てるのだ」


「お願いだ!お願いだから離してくれよ!別に我が取り憑こうが取り憑かまいが大差なじゃないか!?なぁ、だから見逃してくれよ?」


魔王の声は次第に涙声となり、とうとうプライドを吐き捨て命乞いに走り出した。


「…たしかにステータスが1から4になろうが大差はないな」


「だったら見逃してくれても…」


田中の言葉に魔王が希望を見出し、その声が明るくなる。


しかし、そんな魔王に田中は淡々とこんなことを語り始めた。


「ところでお前は、普段体験したことや感じたことを共感し合えるような仲間がいたらいいなとか考えたりはしないか?」


「…え?」


「辛い時も苦しい時も悲しい時も、その想いを共有し合えるような仲間が欲しいと思わないか?」

「…なんの話ですか?」


「私は思うんだ、同じ身体で同じことを感じるような奴がいれば、精神衛生上のいい踏み台になるって…」


「それは一体…?」


そして田中は今日一番の、魔王よりも誰よりも悪人面で魔王にこう言った。


「つまりはそういうことだよ、魔王」


そう言うと田中は自慢の握力で魔王を再び自分の中に押しやり始めた。


「嫌だ!嫌だイヤダイヤダ!!」


徐々に体が逆さメイドに飲まれていく魔王は涙ながらに叫び声をあげた。


そして近くにいたユーキに手を伸ばしながら懇願し始めた。


「嫌だ!!助けてくれ!!こんな身体に取り付くくらいなら死んだ方がマジだ!!お願いだから助けてくれ!!誰でもいい!!人間でも勇者でも悪魔でも誰でもいい!!助けて!!助けてええええええええ!!!!!!!!」


「無駄だ、貴様は私の一部になるんだ。そして…」


田中は涙と恐怖でグチャグチャになっている魔王にトドメをさすかのように力の限りこう叫んだ。




「貴様も………同じく苦しみを味わええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!」


「ぎゃあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」


魔王が断末魔をあげると同時に田中は魔王を完全に取り込んだ。


そして虚しく響く魔王の断末魔がそれに溶けて消え、紅く染め上げられた月が元に戻った頃、田中は力なく笑いながらこんなことを口にした。


「ははは…どうだ、魔王を取り込んでやったぞ。これでステータスが1から4まであがったぞ…はは…ははは…」


いままでずっと1しかなかったDEXなどのステータスが4倍にもなる歴史的快挙を成し遂げたにもかかわらず、その声はどこか悲しく、そして虚しく響いていた。


そして散々自分の体を拒絶されたことに傷ついていたのか、田中の瞳からポロポロとこぼれ落ちる涙を見て、ユーキも思わずもらい泣きしてしまったとさ。


こうして魔王との悲しき戦いは一旦は幕を閉じたのであった

おまけ


以下、2話より抜粋…




しばらく町の近くの草原を歩いていた田中ちゃんは最弱の敵の代表でもあるスライムと遭遇した。


「ふっふっふ、このレベル99の力を試すにはいささか非力ではあるが…いいだろう、貴様をこの刀のサビにしてやろう!!」


そう言って田中ちゃんは背負っていた大剣で力一杯切りつけた。


レベル最大、STR最大のステータスから振り下ろされるその一撃はもはや神の鉄槌の域に達する。


あまりに大きすぎるその衝撃は斬撃が肉眼で捉えられるほどの威力で、ただ大剣を振り下ろすだけというそのシンプルな一撃は空を断ち、大地を割り、海を裂いた。


かつてモーセが引き裂いた海の如く、大地にその傷跡を残した一撃はスライムには明らかに度がすぎるものであった。


哀れにも罪なきスライムはこの世に一片の肉片すら残せずその生を終えた…はずだった。


あの大地が揺らぐほどの威力の斬撃であったにもかかわらず、そこには五体満足の無傷なスライムがいた。…スライムに五体満足という表現もどうかと思うが…。


「おっと、どうやら力が大きすぎてうまく制御できなくて外してしまったようだ。…だが、今度はそうはいかんぞ?」


再び手に持っていた大剣を振るう田中ちゃん。無駄に力が有り余るその一撃から繰り出される風圧はあたりのものを一切合切吹き飛ばし、平原であったはずのその一帯を荒れ果てた荒野と変えた…が、なぜがそこには攻撃したはずのスライムだけが健在していた。


「ふっふっふ、君は運がいいな。…いや、むしろ悪いのか、この私の攻撃を3回も受ける恐怖を味わうことになるなんてな!!」


ただの通常攻撃のくせに大地に亀裂を入れたり、周囲を荒地にする迷惑極まりない必殺の一撃を再びスライムにぶつける。


だが、今度は確実に当てるため、スライムにじっくり狙いをすまして、スライムを上から剣で地面ごと串刺しにした。


レベル99、STR999から放たれるその一撃は…(以下省略)。


なんやかんやでその場に隕石でも落ちたかのようなクレーターが出来たが、スライムは元気だった。


「…なんで?」






以下、今回の話から抜粋…






「ふっふっふ、このレベル99の力を試すにはいささか非力ではあるが…いいだろう、貴様らをこの力のサビにしてやろう!!」


そう言って魔王は力一杯腕を払いのけてみせた。


レベル最大、STR最大、そして魔王の力によって4倍もの補正がかかったステータスから繰り出されるその一撃はもはや神の鉄槌を超越し、あまりに大きすぎるその衝撃は人々に一瞬時が止まったと錯覚させるほどの一撃であった。


まるでこれからちりひとつ残さず消えていく者達への神からのせめてもの慈悲と言わんばかりにスロー再生されるこの瞬間に、誰もが頭の中で走馬灯のように高速再生される過去の生きていた記憶に想いは馳せていた。


かつて恐竜の時代を終わらせたとされる隕石が地球に衝突したかのような全てを飲み込む一撃は下等生物でしかない人間達には明らかに度がすぎるものであった。


哀れにも罪なき人々はこの世に一片の肉片すら残せずその生を終えた…はずだった。


あの世界が揺らぐほどの威力の一撃であったにもかかわらず、そこには五体満足の無傷な人々が残されていた。


「おっと、どうやら力が大きすぎてうまく制御できなくて外してしまったようだ。…だが、今度はそうはいかんぞ?」


再び手を振り払う攻撃をする魔王。無駄に力が有り余るその一撃から繰り出される衝撃は人々に再び走馬灯のように流れる記憶を見せる暇を与えた後、あたりのものを一切合切吹き飛ばし、城下町であったはずのその一帯を荒れ果てた荒野と変えた…が、なぜがそこには攻撃したはずの人々だけが健在していた。


「ふっふっふ、運がいいな。…いや、むしろ悪いのか、この我の攻撃を3回も受ける恐怖を味わうことになるなんてな!!」


ただの通常攻撃のくせに、周囲を荒地にする迷惑極まりない必殺の一撃を再び人間にぶつける。


だが、今度は確実に当てるため、人間達にじっくり狙いをすまして、その拳で直接人間に向かって殴りつけた。


レベル99、STR999をさらに4倍に補正した拳から放たれるその一撃は…(以下省略)。


なんやかんやでその場に隕石でも落ちたかのようなクレーターが出来たが、人々は元気だった。


死を覚悟したはずなのになぜかまだ生きながらえている状況に人々が困惑する中、魔王が口を開いた。


「…なぜだ?なぜ攻撃が当たらん!?








…完全に一致。

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