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戦闘中に都合よく服だけ破けるのはこういう惜しまぬ努力の賜物である

太陽の民の集落を離れてから数日…広大なゲームの世界を歩き続けた3人はようやく新しい街、ムルウタウンにたどり着き、そして…


「出て行け!!逆さメイド!!」


「お願い!!みんなに被害を加える前に消えて!!逆さメイド!!」


「死ね!!逆さメイド!!」


大量の石を投げつけられていた。


もはや嫌われることに慣れてしまった田中はどれだけ石を投げつけられようが心が傷つくことはなくなったが、それでも少しずつダメージは蓄積するのだ。


「イタッ!イタッ!…クソが!いま石を当てたやつ顔覚えたからな!!。今度会ったらぶっ殺してやる!!」


三下の捨て台詞を吐いて街の片隅へと田中は消えて行った。


その様子に多少は同情しつつ、ユーキとシンは田中の後を追った。


「あいつら…覚えてやがれ…私がさらなる力を得た暁には、この街ごと消し飛ばしてくれるわ」


人気のない路地裏に逃げ込んだ田中は爪を噛みながら怒りをあらわにしていた。


そんな田中にユーキが呆れ混じり声をかけた。


「おいおい、そんな考えしてるからまた嫌われるんだよ」


「じゃあどうしろと!?あのまま石を投げ続けられろと言うのか!?」


「そういうわけじゃないけど…」


このどうしようもない状況にユーキは頭を抱えた。


「私だって…好きで逆さメイドなどと呼ばれているわけじゃないんだ」


「っていうか、その服装はどうにか出来ないの?」


そんな時、シンは田中の無残なメイド服を指差しながらそんなことを尋ねた。


「みんなその服を見て逆さメイドだって判断してるんでしょ?だったらその服さえ脱いじゃえば逆さメイドだってバレないじゃん」


シンのいまさらな発言にユーキは呆れながら返答した。


「田中はINTが足りなくて装備が変更できないんだよ。だからこのメイド服は外せないんだよ」


「なるほど、頭が悪いんだね」


「ぶっ飛ばされたいのか?シン」


シンの言う通り、頭が悪いから装備が変更できないのだが言い方が悪かったのか、田中はシンに殺意の眼差しを向けた。


「ひっ!」


かつて何百、何千と田中によって死を繰り返してきたシンはトラウマが再発したのか、近くの物陰に隠れてしまった。


「でもシンの言うことは確かかもな。メニューが操作できないだけで装備自体を変更できないわけじゃない。どうにかしてメニューを介さずに装備を外せるなら…」


「メニューを使わずに装備を外す方法なんて…そんな…」


ユーキと田中がそんな話を話していると、近くの大通りからプレイヤー達の立ち話が聞こえてきた。


「おい!この近くにいるアシッドスライムっていうモンスターを知ってるか?」


「アシッドスライム?…知らないが、そのモンスターがどうかしたのか?」


「そのモンスターはな、人を体の中に取り込んで自分の酸でジワジワと相手を溶かすらしいんだがな…どうやら中には人体は溶かさない個体もいるらしい」


「人体は溶かさない?…それってつまり…」


「そう、服だけ溶かすモンスターというわけだ」


「バカな!!そんなエロゲームにしか出現しないような夢のようなモンスターが存在するというのか!?」


「ああ!なんでもその個体は他の個体と違って言葉を話して、美少女の服だけを溶かすらしい」


「それはいい事を聞いた!!早速その服だけ溶かす恩恵にあやかりに行かねば!!」


そう宣言するやいなや、プレイヤー達が我先に街の外へと駆け出して行った。


「まったく…このゲームのプレイヤーはこのゲームをエロゲーとしか考えてないのか?」


裏路地で聞き耳を立てていたユーキは呆れながらそんなことを呟いた。


その横で田中は一人、黙って何かを考えるようなそぶりをしていた。


そして少しした後、指をパチンと鳴らしてこんなことを口にした。


「これだ!!これしかない!!」


「なんだ?どうした?」


「そのアシッドスライムにメイド服を溶かして貰えばいいんだよ!!」


こうして、田中達のスライムに服だけ溶かしてもらう冒険が幕を開けた。









「きゃー!!アシッドスライムよ!例の美少女の服だけを溶かすアシッドスライムよ!!」


森を横断していた行商人の集団の先頭で一人の美少女がそんなことを叫んでいた。


そんな彼女達の目の前には豊満な体の女性の形をした紫色のゲル状の生き物が立ち往生していた。


「ようこそ、我がアトリエへいらっしゃい。さぁ、早速あなたの麗しい身体を解放してあげるわ!!」


アシッドスライムは触手のようなものを全身から生やして女の子に向かってそれを伸ばした。


女の子はなすすべもなく無数に艶かしく群がる触手に舐めまわされるように捕まってしまった。


「いいぞ!!いいぞ!!」


「出たぁ!!アシッドスライム様の触手責めだぁ!!」


「アシッドスライム様!!早く…早くあなたの作品の完成が見たいです!!」


そんな様子を見ていたアシッドスライムの近くで群がるプレイヤー達が歓喜の雄叫びをあげていた。


「ああ!娘がアシッドスライムに捕まってしまった…どうか娘をおたすけください!!冒険者の皆様!!」


行商人の一人がテンション爆上がりの冒険者達に向かってそんな御願いをした。


「お母様、ご安心を。娘さんはただアシッドスライム様が作り出す芸術に生まれ変わるだけなんです。心配せずとも娘さんは傷一つなく帰ってきます」


「その通りです。アシッドスライム様が作り出す快楽に身を任せて、全てを解放させて帰ってきますから」


母親を説得するようにそんなことを説き伏せるプレイヤー達。


「いや、お前らそんなこと言って娘の裸を見たいだけだろ!?」


「そんなことはありません!!我々は芸術を探求しているだけです!!」


「人の身体が作り出す美学の限界点に挑んでいるだけなのです!!!!」


「決して…決してやましい心などありません!!!」


必死の思いでそう説得する冒険者達は皆もれなく鼻血を流していた。


「説得力のかけらもない!!」


そんな冒険者達を目にした母親は嘆くようにそう叫んだ。


そうこうしている間にアシッドスライムの触手は女の子の全身を弄るように絡まっていた。


「あっ…あっ…」


触手に弄られて女の子は頬を赤くしながら小さくそんなことを口からこぼしてしまった。



「ふふっ、そろそろ触手が身体に馴染んできたかしら。じゃあ…そろそろ次の段階に移ろうかしら…」


アシッドスライムがそんなことを口にすると、『ジュー』という音とともに触手に触れているところから徐々に女の子の服が溶け始めていった。


「あぁ!娘の服が溶けていく!!」


「お母様、お静かに。いまアシッドスライム様の作品作り中は静かにお願いします」


「娘の身体が露わになっていくのを黙って見てろと言うのですか!?」


「これは大変集中力の必要な作業なのです。いくらアシッドスライム様とはいえど、都合よく服だけが溶ける酸を生み出すことはできません。ですから、ああやって触手で少しずつ慎重に服だけ溶かしていくのです」


「もし大声をあげてアシッドスライム様の集中力が途切れたら…娘さんに傷がついてしまいます」

「そして何よりも…徐々に素肌が露わになっていくその様に我々はたまらないエクスタシーを感じるのです」


「だ、だか…娘の全裸をお前らに見られるのを黙って見てろと言うのか?」


「勘違いしてはいけません。アシッドスライム様は大切な女の子を…自分の作品を辱めるようなことはしません」


「全裸などにするのではなく、ギリッギリで大事なところが微妙に見えないくらいに服を残してくれるのです。アシッドスライム様はその辺は理解しております」


「見えそうで見えないという究極のエロ…じゃなくて芸術を追求しているのです」


「大丈夫です、娘さんは少年誌に掲載しても問題ない姿で帰ってきますから」


「そう言う問題じゃねえよ!!」


そうこうしているうちにアシッドスライムの作品作りは進展し、服のほとんどは溶けてしまっていた。


「あっ…あっ!…」


「あぁ!娘が…娘が…」


喘ぐ女の子、騒ぐ母親、服を溶かすアシッドスライム、興奮する冒険者達…もはや小さな水着ほどにまで服が溶けきり、冒険者達がエクスタシーを迎えたその時…


どこからともなく一人の男が颯爽と現れ、アシッドスライムと女の子をつなぐ触手を断ち切ったのだ。


「私の作品作りを邪魔するとは…何者だ!!」


「なーに…ただの冒険者だ」


ユーキはそう名乗った後、女の子に身を隠せる布をかぶせた。


「てめぇ!!なにいいところで邪魔してくれてんだ!?」


「もう少しでアシッドスライム様の作品が完成していたって言うのに…なにしてくれとんじゃ、ワレェ!!」


「ぶっ殺されたいのか!?この野郎!!」


ものすごくいいところで邪魔されたことに冒険者達は腹を立てて怒鳴り散らした


「いや、お前らこそ女の子の服が溶かされるのをただ見てるだけでなんなんだよ?」


「聞いて驚け!!」


「我々は芸術家、アシッドスライム様のファンにして!!」


「アシッドスライム様に身も心も捧げた親衛隊!!」


「その名も…『アシッドスライム様を応援しようの会』だ!!」


「お前らそんなことしにゲームの世界にやって来たのかよ?」


さすがのアホらしさにユーキは呆れを隠せなかった。


「馬鹿野郎!!貴様はアシッドスライム様の作品を見たことがないからそんなことが言えるんだ!!」


「アシッドスライム様が作り出す作品はどれもこれも究極のエロ…じゃなくて芸術なんだぞ!?」


「そうだそうだ!!俺はもう他のじゃ勃たなくなったんだぞ!!」


「知らねえよ」


アシッドスライムの後ろでワーワー喚く冒険者達を尻目にアシッドスライムはユーキに声をかけた。


「私の邪魔をするつもりかしら?」


「いや、邪魔なんてしねえよ。ただ俺は代わりになってくれるモデルを紹介しに来ただけだよ」


「代わりのモデル?」


「ふっふっふ…それは私のことだ」


そう言って現れたのはメイド服を溶かして欲しくて仕方がない田中であった。


そんな田中の姿を見てアシッドスライムの親衛隊が声をあげた。


「あ、あいつは…まさか…逆さメイド!?」


「なに!?あいつがあの逆さメイドだというのか!?」


「かつて世界に終焉をもたらしたと謳われるあの逆さメイドが…なぜここに…」


逆さメイドの姿を見るや否やガタガタと震えだした親衛隊を尻目に、アシッドスライムが田中に声をかけた。


「それで、あなたが代わりのモデルを務めるとでも?」


「その通りだ、感謝しろよ?。この強くて可憐な私の服を溶かせる栄誉をお前にくれてやるというのだ。さぁ!存分にメイド服を溶かすがいい!!」


「チェンジで」


「…は?」


「だからチェンジで。あなたごときじゃ私の作品は務まらないわ」


「そんなバカな!?なぜ私じゃダメなんだ!?」


「あのねぇ、こういうのは嫌がる女の子の服を溶かすからこそ価値があるのよ。『嫌なのに…恥ずかしいのに…でも悔しい、感じちゃう』っていう子だからこそ服を溶かす意欲が湧いてくるのよ。だからあなたみたいに自分から服を溶かしてくれなんて頼んでくる変態痴女じゃあ私の創作意欲は湧いて来ないのよ」


「ふざけるな!!お前に変態扱いされたくないわ!!。好みのタイプがどうのこうだとかより好みなんかせず、素直に美少女の服を溶かせばいいだろ!?」


「いや、っていうか…あなた美少女じゃないし」


アシッドスライムの率直な意見に思わず田中は固まってしまった。


「そうだな、別に美少女じゃないよな」


「うん、むしろ上中下でいえば下だな」


「ぶっちゃけブスだな」


アシッドスライムの率直な意見に頷くようにそんなことをつぶやく親衛隊。


ブス呼ばわりされたことがよっぽど傷ついたのか、田中はわなわなと震えていた。


「落ち着け、田中。また怒りに任せて同じ過ちを繰り返す気か?」


「…わかってる」


ユーキになだめられて少し落ち着きはしたが、それでも怒りを隠しきれない田中は威圧的にアシッドスライムに尋ねた。


「…どうしても、服を溶かしてくれないのか?」


「当然よ。こっちも遊びでやってるんじゃないから」


アシッドスライムは真剣な眼差しでそう答えた。


「そうか…ならばこちらもそれなりの手を打たねばならないな」


レベル99STR999の田中から放たれるその闘気はまるで針で刺されているかのようにアシッドスライムにもヒシヒシと伝わっていた。


だが、それでもアシッドスライムは首を縦に振らない。


脅しだけでは足りないと判断した田中はゆっくりとその体を動かし、そして…




「お願いします!!どうか…どうか卑しい私の服を溶かしてください!!」


誠心誠意の土下座を披露した。


「一生のお願いです!!どうか私の服をお溶かしください!!なんでもしますから!!」


精一杯、心からのお願いを垣間見たアシッドスライムは…


「うわっ、なんかそこまでされると逆に引くわ…」


冷めた目をしていた。


「っていうか…そこまでして服を溶かされたいって…性癖歪み過ぎじゃない?」


「いや、お前に言われたくないと思うけど」


アシッドスライムの指摘に的確なツッコミをいれるユーキ。


「じゃ、じゃあ…いくら払えば服を溶かしてくれますか?」


しまいにはお金を払ってまで服を溶かして欲しいと懇願し始めた田中。


「お金の問題じゃないの。私は自分が愛を込めて生み出した作品の一つ一つを我が子のように思ってるの。作品一つ一つが世間やファンに評価されて大成して欲しいと思ってるの。それなのにお金で妥協した子供なんて作ってしまったらその子がかわいそうでしょう?お金のために生まれた子供なんてかわいそうでしょ?。だから私はお金じゃ動かない。この胸を掻き立てるような意欲と情熱が湧かない限り、私は服を溶かさないのよ」


「ぐっ、変態のくせにポリシーだけはしっかりしやがって…」


説得は不可能…そう判断した田中はとうとう最終手段に出ることにした。


「わかった。どうしても服を溶かしてくれないというのならば…実力行使で出るしかないな」


そう言って田中は自分の足元に向かって思いっきり拳を振り下ろした。


レベル99STR999から放たれたその一撃はまさに神の鉄槌。


辺りの木々は風圧と衝撃で消え去り、亀裂の生えた大地は形を変え、さらには亀裂からマグマが噴き出した。


「さあ、選べ!!この拳で粉砕するか!!服を溶かすか!!」


死か、それとも服を溶かすかというなんともシュールな二択。


普通の人ならば己の命欲しさに服を溶かすことを選ぶであろう。そりゃあそうだ、誰だって自分のことは可愛いと思うし、ましてや服を溶かすなどということと天秤にかければ当然、命を選ぶだろう。


しかし、彼女は…アシッドスライムは違った。


「私は…死んでもあなたの服は溶かさない!!」


彼女は望まぬ服を溶かすくらいなら迷うことなく死を選んだ。


彼女の服を溶かすことに対するポリシーは並々ならぬ物があった。


彼女は昔からずっと美少女を見てはいつも『その服を溶かしたい』ということを夢見ていたのだ。


そのために彼女は努力した。


服だけを溶かすことは意外にも難しい。


服を溶かす触手を一ミリでもずらせば女の子の身体を傷つけてしまうことになるだろう。


そんなことが起きないために服だけを溶かすには触手一つ一つに洗練された動きが必要なのだ。


そのために彼女は修行をした。


まず、愛しさのあまり思わず女の子に触れたくなる衝動を抑えるための精神の修行から始まった。


これは作業中に衝動的に酸性の触手で女の子の肌を直に触れてしまわないための修行であった。


そのために彼女はありとあらゆるジャンルのより好んだエロ本を集めて、そのエロ本を円を描くように並べ、その真ん中で座禅を組む修行だ。


どんなエロ本にも心揺さぶられることなく、無の境地に至るまで、彼女は水や食事も取らずに座禅を組んだのだ。


それは厳しい修行であった。


手を伸ばせばすぐ好みのエロ本が手に取れるその状況下で、何日も無我で居られるのはもはや仙人の領域…だが、彼女の美少女の服だけを溶かすという情熱は並大抵のものではなく、彼女はとうとうその仙人の領域に達したのだ。


もはやどんなエロ本も彼女の食思を動かさなかった。


精神面の修行を終えた彼女は次に技術的な修行を始めた。


触手一つ一つを確実に、そして細かな作業を可能にするため、彼女はマグマがひしめく山の火口に訪れた。


灼熱の業火が立ち込める中、無数に伸びる触手で縫い物を始めた。


もし手元が狂って縫い間違いを犯せば、すぐさまその触手を立ち込めるマグマの中に沈めた。


岩をも溶かす灼熱が触手を跡形もなく焦がす。そしてその痛みと熱さを体に刻むのだ。女の子の身体を間違えて溶かしてしまうことの心の痛みはこんなものではないと身体に教え込むために…。


やがて彼女はありとあらゆる細かな作業を体現する触手を手に入れた。


あとノリでスクワットとか腹筋とか腕立てもした。


そして厳しい修行を乗り越え、山を降り、人里に帰ってきた彼女は数ヶ月ぶりの美少女を目の当たりにし、気がついたのだ。


服をどう溶かせば最もエロくなるかが光の筋となって肉眼で捉えられるようになっていたのだ。


そして彼女は光が示すがままに…天命に導かれるように服を溶かした。


やがて彼女の作品を目の当たりにした冒険者達は彼女を評価し始め、噂は広がり、親衛隊なるものができていた。


全ては愛を、情熱を、全身全霊を込めて作品を作ってきた賜物なのだ。


それなのにいまここで妥協で服を溶かしてしまえば…いままで培ってきたものが、積み重なってきたものが水の泡となってしまうのだ。


自分の信念のためにも、作品のためにも…なにより、自分の作品を楽しみにしているファン達を悲しませないためにも、彼女は服を溶かすわけにはいかないのだ。


それは例え…死と引き換えだとしても…。


「あんた達、いままで世話になったわね」


絶対的な力を持つ逆さメイドを前に死を覚悟したアシッドスライムは親衛隊達にそんな声をかけた。


「そ、そんな…ま、まさかアシッドスライム様…」


「死んじゃダメだ!!…死なないで…アシッドスライム様…」


「あなたが死んでしまっては…ファン達が…私たちが悲しみます…」


アシッドスライムとの別れを察した親衛隊は涙を流していた。


そんな彼らを見て、アシッドスライムはふっと笑ってこんなことを言い残した。


「あなた達との美少女の服を溶かす旅…悪くなかったわ」


「アシッドスライム様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


死にゆくアシッドスライムを見ていることに居たたまれなくなった親衛隊の一人がアシッドスライムを庇うかのようにアシッドスライムと逆さメイドの間に割って入った。


「な、なんのつもりだ!?宮下!!」


「アシッドスライム様、ここは私が引き止めます。だからどうか…どうかお逃げください」


「馬鹿野郎!!宮下!!。レベルがたった3しかないお前ごときが逆さメイドに勝てるわけないだろ!?」


「それでも!!1分…いや、1秒でも長く足止めしてみせる!!だから逃げてください!!アシッドスライム様!!」


宮下は恐怖で震える足に力を込めて必死に立ちながらそう叫んだ。


だが、勇敢に無謀にアシッドスライムを守ろうとする宮下を見て彼女は何かを諦めたかのようにこんなことを口にした。


「馬鹿者…誰かを犠牲にしてでも守るべき芸術などどこにもないのだ」


「そんなことはありません、アシッドスライム様。私はあなたの作品のためならば、この命を殉ずる覚悟はあります」


「どうして…どうしてそこまで…」


「あなたの作品は我々冒険者の夢なのです。だからどうか…我々の夢を壊さないでください」


そして、宮下は再び逆さメイドの方を向き直った。


「後は頼んだぜ!!吉田!!マイケル!!」


「馬鹿野郎…お前のことは忘れない、宮下」


「必ずやアシッドスライム様を守ってみせるぞ、宮下」


涙を飲んで別れの言葉を述べた後、宮下は逆さメイドに向かって駆け出した。


「うおおおおおおおおお!!!!!!!世界に栄光とエクスタシーあれええええ!!!!」


熱り叫びこちらに向かってくる宮下を見た田中。


もちろん、田中も自分の攻撃が当たらないことを承知していたのでただの脅しではあったが、向かってくる相手がレベルがたったの3しかないことを確認すると、攻撃が当たる可能性があると判断し、その拳を振るった。


神の鉄槌による突風や嵐が宮下を飲み込んで、見えなくなった。


「宮下あああああああああああ!!!!!!!」


吉田とマイケルはアシッドスライムを連れて逃げる最中、犠牲となった宮下を思って声の限りに叫んだ。


お前のことは忘れない。


お前の代わりに必ずや…必ずやアシッドスライム様の芸術を守ってみせる。


吉田とマイケルは星となった宮下にそう誓った。


そして、命を賭して守られたアシッドスライムもまた宮下のためにも美少女の服を溶かし続けることを誓った。


こうして、結局メイド服は溶かしてもらえなかったとさ。


逆さメイドが忌み嫌われる旅はまだまだ続く。











おまけ


Q、そういえば田中が街から出た時、奴隷の指輪の効果で状態異常は発現しなかったのですか?。


A、メンドくさいから発現してたけど大した状態異常じゃなかったってことでお願いします。

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