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終焉に立ちはだかる者

マサラ王国の上空を分厚い暗雲が覆う。


雲は太陽の光を遮り、マサラ王国に闇をもたらした。


そのマサラ王国の中心、マサラ王国の心臓部とも言える国王の住む城の近くで、その化け物は雄叫びをあげていた。


それはまるで世界に破滅を…終焉をもたらさんとしているように…。


人々はその異形の姿をした逆さメイドにただ恐怖するしかできなかった。


「終わりだ…もうこの世界は終わりだ…」


マサラの城下町から城の方で破壊神が暴れるようすを見ていた冒険者の一人、攻略組四天王のピーロがそんなことを呟いた。


「これが…逆さメイドの力なのか…」


同じく四天王のガイが呟く。


「これから一体、私達はどうなってしまうのでしょうな」


同じく四天王のゴトウが髭をわさわさしながら呟いた。


「せめて…死ぬ前に女の子とデートしたかったなぁ…」


リーダーのセキュリスがそう嘆いた


人智を超えた力でただひたすらに破壊を繰り返すその化け物になすすべがない人類はすでに諦めていた。


誰もが死を覚悟し、ただ指をくわえて見ているしかできなかった。


「人々よ、祈るのだ。神がこの世に英雄をもたらすことを…」


マサラの教会では神父(幼女)が恐怖で震える人たちに祈りを説いていた。


「ママ、怖いよ」


その教会の一角では小さな女の子が震えながらそんなことを呟いた。


そんな娘を母親はただ抱きしめることしかできなかった。







マサラの魔法屋で働く魔女の格好をしたエリーもまた、マサラ城の上空を覆う暗雲を見つめていた。


「こんな時のために、一生懸命頑張って魔法を覚えたのに…ダメですね。…世界の終焉を前に、魔法とはなんと無力なものなのでしょう…」


彼女もまた、諦めるようにそんなことを呟いた。






一方、マサラの一角で花屋『フラワーショップ アローラ マサラ店』を経営するアローラも他の物と同様に終焉へと向かう空を見上げていた。


「花も人も世界も…散る時は一瞬なのね…」


一輪の花を両手で持ちながら、祈るように呟いた。






一方、場所はマサラから遠く離れたスミノ村。


マサラ王国を覆う分厚い暗雲がスミノ村にも影をさしていた。


その村で馬車でマサラ王国に向かおうと来ていたアリルは馬がなかなか言うことを聞かずに立ち往生していた。


「一体どうしたんだべ…馬が怖がって言うことを聞いてくれないだべ」


先ほどから定期的に発生する地震となにか関係があるのか、普段は従順な馬がアリルの言うことを全く聞かなかった。


「なにか…よくないことが起きそうだべ…」


危機を察知する直感がアリルの視線をマサラ王国の方へと向けた。






一方、こちらはマサラ王国の近くの森の中…


「お頭!!森の動物達が皆一斉に移動し始めました!!。まるで…マサラから逃げようとするように…」


「動物的本能で察したんだろうね。…世界に終焉をもたらすものの存在を…」


一流の勇者パーティ並みのレベルの高さを誇る盗賊団のお頭がマサラの上空を覆う暗雲を見つめながらそんなことを呟いた。






一方、こちらは奴隷の街。


その領主であるフィーネはなにか邪悪なものの気配を察したのか、遠くのマサラ王国の空を見上げていた。


「フィーネ様、どうかいたしましたか?」


真剣な目つきで空を見上げるフィーネを案じたシンシアがフィーネに声をかけた。


「マサラ王国の方角から、なにか悍ましいものの気配を感じる。…こんなに離れていても肌に突き刺さるように鋭く、それでいて…同じくらい悲しい気配が…」


「…私にはフィーネ様が感じていらっしゃるものは分かりかねます。…ですが、嫌な雲色ですよね」


シンシアはそう言ってフィーネが見つめる空の方角を見つめた。








一方、マサラ王国からさらに遠く離れた上空では…


「…嫌な空だ。なにかとてつもなく危険な何かが空をも支配している」


竜王バハムートがマサラ王国の方角の空を見つめながらそんなことを呟いた。


「近付かないに越したことはないな。同族たちにも近寄るなと伝えなければ…」


それだけ言い残して、彼女もまた空の彼方へと消えて行った。







世界の各地で強者たちが異変を察知する中、渦中のマサラ王国は着々と破滅へと近づいていた。


かつて騎士団領として国を支えて来たその場所はすでに逆さメイドの手によって見る影もなくなっていた。


大地を揺るがす衝動、天空に轟く咆哮、人々を震わす恐怖…その全ての元凶となっていた逆さメイドはこれでもかと言わんばかりにただ破壊の限りを尽くしていた。


王国も逆さメイドに対抗すべく、対策本部を設置し、対抗しうる冒険者を募ったが、我こそはと名乗り出る者もおらず、途方に暮れていた。


誰もが絶望し、この世の終焉を覚悟したその時…一人の男が逆さメイドを止めるべく、お城の門を叩こうとしていた。


「ユーキ!!」


そんな彼に声をかけたのは…元鍛冶屋のオヤジであるアイロであった。


「…本気なの?。本気であの逆さメイドと戦おうって言うの!?」


自ら死地へと赴こうとするユーキの身を案じて、アイロはユーキにそんなことを尋ねた。


「心配するな、アイロ。…すぐ終わるから」


そんなアイロを気遣うようにユーキは優しい笑顔でそう声をかけた。


「嫌だ!!私、ユーキが…ユーキがいなくなったら…だから…だからせめて…生きて帰って来て…」


涙を流しながらアイロはユーキにそんなことを語った。


そんなアイロにユーキは何を言うでもなく、背中を向けて城の中へと入って行った。


暗く、重たい空気が張り付く城の長い廊下を歩むユーキ。


やがてそんな雰囲気が我慢出来なくなったのか、いきなり声を荒げて叫びだした。


「この最終局面みたいな空気なんなの!?」


「まぁまぁ、気持ちは分かりますけど抑えてください、ユーキ」


そんなユーキを隣にいたナビィがなだめる。


「これが落ち着いていられるか!?。世界の終焉とか、今まで関わって来た人たちがみんな心配する描写とか…完全これ、いまからラスボス倒しに行く空気じゃん!!」


「まぁ、このまま逆さメイドが暴れてたら本当に世界崩壊しかねないので…ラスボスっていうのも過言ではないと思いますよ?」


「ラスボスが仲間の不祥事をどうにかすることとか、スケール小さ過ぎだろ!?」


「いや、その不祥事がスケール大きいのでそれで我慢してください」


「…え?っていうか、これマジでラスボスなの?。もしかして、田中を倒せばゲームクリアとかになるの?」


「いえ、残念ながらラスボスは教会が召喚する邪神なので、逆さメイドは関係ないです」


「あ、そうなんだ。それならいいんだけど…っていうか、いまさらりとネタバレ聞いちゃったよ、おい」


今まで知りたかったが、その時まで我慢しようと聞かなかったラスボスについてのネタバレをされたユーキ。


「それにしても、ブスって言われただけで世界崩壊の危機とか…ほんと迷惑極まりないですよね」


「全くだ。ブスの腹いせで壊される世界さんもたまったもんじゃないだろうな」


「一回、絞め殺しておいた方がいいんじゃないですか?」


「殺したってまた生き返った時にこうやって暴れるだけだろ」


「じゃあしばらく棺桶に箱詰めしたままでいいんじゃないですか?」


「嫌だよ、それじゃあ俺が冒険に出る時にいちいち棺桶を二つも運ばなきゃいけなくなるだろ?そんな悲しいRPGがあってたまるか」


「いや、むしろいいんじゃないですか?。パーティが全滅すれば仕様で逆さメイドも蘇ります。つまりはユーキが死ねば世界を終焉へと導く逆さメイドが蘇るってことですよ。命をかけて危険なラスボスを封印するとか、完全に主人公じゃないですか」


「むっ、言われてみればありだな。…いや、むしろそっちの方がかっこいい気が…」


「はっ、チョロ」


「なんか言ったか?鬼畜妖精」


「いえ、なにも」


やがて、二人の前に巨大な門が現れ、ユーキはその門を押し上げた。


そこで待っていたのは玉座に腰掛けていた国王(幼女)ユーニグルドであった。


「…お主は何者だ?」


「えっと…田中…じゃくて、逆さメイドを止めるために来たんだが…」


「なんと!?あの逆さメイドを止めにだと!?。お主、名はなんと申す」


「…ユーキ。冒険者のユーキだ」


こうして、ユーキは味方の不祥事という世界の危機を救うべく、ただ一人立ち上がったのだ。


果たして、ユーキは逆さメイドを倒し、無事に世界に平和をもたらすことが出来るのか!?。


さすがにそろそろ本格的に冒険に出かけて欲しいので、そこんところなる早でお願いしまーす!!。

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