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悪に立ちはだかる正義の刃

「ねえ、きみきみ、私のオトモダチになってくれないかなぁ?」


小首を傾げながら可愛らしくプレイヤーにそう語りかける田中ちゃん。しかしながら、どのプレイヤーも田中ちゃんの服装を見るなり、恐怖で顔を歪ませた。中には腰を抜かして倒れる者や、恐怖のあまり失禁してしまう者、ショックのあまり気絶する者なども見られた。


田中ちゃんの姿を見た者はみな、その冒涜的なファッションに絶望し、口を揃えてこう言うのだ。


「さ…逆さメイド…」


悪魔のような所業を繰り返す奇特な格好をしたレベル99の田中ちゃんはプレイヤー達から『逆さメイド』の名で知れ渡り、畏怖の念を抱かれているのだ。


自分の知らぬ間に有名になっていた田中ちゃんはその悪名を利用し、いろんなプレイヤーにたかってはその身ぐるみをはいでいた。


「みんな私の姿を見るなり、金やアイテムや装備を差し出す…あぁ、やっぱり美人って得よねぇ」


なぜこんなにも恐れられているのかは知らないが、皆がすぐさま持ち物を差し出す様を見ながら田中ちゃんはそんなことをうっとりと呟いた。


「美人っていうか…どう考えても悪魔にしか見られてないんですが…」


そんな様子を見ながらただひたすらに呆れるユーキ。


略奪行為を繰り返した結果、田中ちゃん達の所持品は物で埋め尽くされていた。


「いやぁ、ついさっきまで一文無しだったのが信じられないよ」


田中ちゃんは財布をジャラジャラ言わせながらそんなことを呟いた。


「…っていうか、こんなカツアゲまがいのことやってて大丈夫なの?警察とか来ないの?」


「何を言うか?。わたしはただ『友達になって』と頼んでるだけだぞ?。みんな友達だから快く私の美貌に物を貢いでるだけだぞ?」


シンの心配をよそに、なんの悪びれたそぶりも見せない田中ちゃん。


「その割には未だにフレンド登録が0人なんですが、それは…」


今まで何十というプレイヤーに接触を試みたが、みな潔く物やアイテムは捧げても、最後の砦であるフレンド登録だけは頑なに断られ続けたせいでいまだに田中ちゃんは友達0人であった。


「ふふふ、みな私に照れて素直になれないだけだよ」


「…田中、それ本気で言ってるのか?」


先ほどから一向にみんなから恐れられていると自覚が見られない田中ちゃんにユーキは本気で心配になったのでそんなことを尋ねた。


「そんなの当たり前じゃないか。…おっ!新しいカモがネギ背負ってやって来たぞ!。オトモダチ♡にならないと…」


そう言って田中ちゃんは新たな犠牲者を生み出すべく、プレイヤーに声をかけた。


ユーキはその様子を見ながらただひたすらに呆れていた。


『これはそのうち手痛いしっぺ返しが来るな』などと考えていたその時、どこからともなくどこかで聞いたことがあるような鬼畜妖精の声が聞こえて来た。


「騎士団の皆さん!こっちです!。こっちに人の姿をした真のモンスターがいるんです!!」


声の主であるナビィによって甲冑を身にまとい武装した集団が田中ちゃんの前に現れた。


「えっと…これはなにかな?みんな私のオトモダチになりに来たのかな?」


状況がよくわからない田中ちゃん武装した集団を前に困惑してそんなことを口にした。


そんな能天気な田中ちゃんをよそに、武装した集団のうち、一人が前に出て甲冑から鋭い目つきをした美しい素顔を見せ、田中ちゃんに向かって宣言した。


「我は誇り高きマサラの国の騎士団長、アルフィーナ!!悪名高き『逆さメイド』よ!騎士の正義の名の元に…貴様を逮捕する!!」


アルフィーナと名乗ったその美人さんは剣を空にかかげ、そう宣言して見せた。


その様子を見ていて、なんとなく状況を察したユーキが憂鬱そうに手で顔を覆うのを他所に、未だに状況を理解していない田中ちゃんは呑気にこんなことを呟いた。


「い、いや…逮捕って…私何か悪いことした?」


現在進行形でプレイヤーから身ぐるみをはいでいるのにもかかわらず、悪びれたそぶりを見せない田中ちゃん。


「冒険者達からの被害届が私の元にこれだけ届いているぞ」


アルフィーナはそう言ってどこからか書類をドッサリ取り出した。


「これらは全て貴様が行なったとされる恐喝及び、窃盗の被害届けだ。…これでもまだ言い逃れすると言うのか?。…っていうか、今も略奪の真っ最中じゃないか」


田中ちゃんのすぐそばで恐怖に震えながら装備を剥奪され、パンツ一丁になった哀れなプレイヤーを横目に、アルフィーナはそう訴えた。


「そんなバカな!?これらはみんなが快く私にくれたものだぞ!?」


田中ちゃんがアルフィーナの訴えにそう反論すると、どこからともかく田中ちゃんに身ぐるみを剥がされ、パンツ一丁の格好をした冒険者達の声が聞こえて来た。


「そんなわけないだろ!?。お前の魔の手から逃れるために仕方なく渡したなけなしの物だ!!」


「悪魔の生贄になりたくなければ金やアイテムや装備を全てよこせと言っただろ!?」


よっぽど逆さメイドが怖いのか、騎士団の背後の物陰に隠れてコソコソしながら彼らはそんなことを訴えた。


実際には田中ちゃんは『友達になって』としか言ってないが、知らぬ間にそんな解釈をされていたのだろう。


「…と、いうわけだ。詳しい話は騎士団領でゆっくりと尋問しよう。さぁ、『逆さメイド』よ、神妙にお縄につけ!!」


そう言ってアルフィーナは田中ちゃんに剣を向けた。


「そ、そんな…違う!私はただ…友達が欲しかっただけで…」


たじろぎながら少しずつ距離を取る田中ちゃん。しかし、そんな彼女にアルフィーナは正義の鉄槌を下す。


「皆の者!!かかれ!!」


アルフィーナの号令で騎士達が一斉に田中ちゃんに向かって走り出した。


レベル99のくせに逃げることすら叶わない田中ちゃんはなすすべもなくその場で拘束された。


アルフィーナの活躍によって諸悪の根源である逆さメイドが無事に捕らえられたことによって、いままで彼女への恐怖に苦しめられていたパンツ一丁の冒険者達は解放され、涙を流しながら手放しで喜んだ。


そして、大悪党逆さメイドを捕らえたアルフィーナをその場にいたたくさんのパンツ一丁の冒険者がまるで英雄であるかなように讃えたのだ。


こうして、この世界に多大なる恐怖を与えた逆さメイドは無事に投獄されることになったとさ。


「これにて、一件落着です!!」


たくさんの紙吹雪が英雄アルフィーナを讃える中、ナビィの締めの一言がこだました。


こうして田中ちゃんは薄暗い地下牢に封印されマサルの国に再び平和が訪れたのでした。


…主人公逮捕されちゃったし…もう冒険もクソもないから、この物語も終わりかな?。


『クソゲーすぎる世界を君とどこまでも旅するRPG』、これにて完!!。


ご愛読ありがとうございました!なおほゆよの次回作にご期待ください!。








と、いう冗談はさておき…


「あの…水を差すようで悪いんですけど…」


場がお祭りのように盛り上がる中、申し訳なさそうにユーキは手を上げてアルフィーナに物申した。


「実は俺、こいつの連れでして…一応仲間という扱いですし、なんとかご同行させていただけないでしょうか?」


「なるほど、君はこの逆さメイドの仲間であると申すか。…よろしい、君にも色々話しを伺いたい。騎士団領までご同行願おう」


「ありがとうございます。…あと、あそこにいるシンという男も仲間なんで連れてってあげてください」


「承った。…乗りたまえ、君たちを騎士団領に案内しよう」


アルフィーナの運転する馬車に揺られながら騎士団領があるマサラ城へと向かう途中、ユーキがぼやくようにこんなことを呟いた。


「…まさか、こんなにも早くお城へとお呼ばれすることになるとはなぁ…」


こうして、田中ちゃんの巻き添えでシンとユーキも騎士団領があるマサラ城に向かうこととなったとさ。


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