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デートで強くなるRPG

「いいですか、ユーキ。とりあえずまずは相手を褒めることから始めてください。女の子としては気になる人とのデートでしたら多少なりともオシャレします。でも基本的にオシャレに慣れてないような子でしたら、あまり気慣れていない自分の気合の入った衣装にあまり自信がない可能性は高いです。ですから、そんな女の子の不安を取り除いてあげるためにもまず女の子のことを褒めてあげてください。服や髪はもちろん、女の子があなたのためにしてるオシャレはくまなく褒めてあげてください。それが出来なければあなたは奴隷にもなれないただの畜生です」


「よく聞け、ユーキ。今日のお前のデートの出来で今後のパーティの戦力が変わってくるんだ。失敗は許されない、自分の命をかけてると思って気合を入れていけ」


ナビィと田中ちゃんに後押しされながら、ユーキは浮かない顔をしながら鍛冶屋の元オヤジであ?アイロの元へと向かった。


昨日、ナビィと田中ちゃんに散々言われたせいでどうしてもデートに乗り気になれないユーキ。そんな最中、待ち合わせ場所にアイロが走ってやって来た。


「ごめん!…待った?」


まだ待ち合わせ時間には余裕があったが、ユーキを待たせていると知るや否や、走ってやってくるという健気な一面を見せるアイロ。


「いや、俺も今来たところ」


そんなアイロにお決まりのセリフを返すユーキはナビィに言われたことを実践するためにアイロのことをジロジロと眺めた。


普段は鍛冶屋を営んでいることもあってか、あまり女の子らしくない作業着のような格好に身を包んでいるが、今日のアイロの格好はその印象が変わるくらい可愛らしいものであった。


「ユーキ、その…あんまりジロジロ見られると恥ずかしいんだけど…」


ユーキの舐め回すような視線に気がついたのか、アイロは恥ずかしそうにそんなことを呟いた。


「あ、ごめんごめん。今日の服、可愛いなって思って…」


謝りつつもさりげなく服装を褒めるユーキ。


「え?そう?可愛いかな…えへへ」


そんなユーキの褒め言葉にアイロは嬉しそうにそう呟いた。


そんなこんなで最初の関門を乗り越えたユーキはさりげなくリードしつつ、アイロとのショッピングに興じた。


アクセサリーや小物など、女性が好みそうな店や、アイロの視線の先を注意深く追って、彼女が行きたさそうな店を重点的に回っていった。


意外にもユーキは女性付き合いにこなれているのか、終始楽しそうな会話をしながら店を回っていた。


そんな様子を影からストーキングしていた一団がいた。御察しの通り、ユーキのパーティである田中ちゃんとシンと妖精のナビィである。


一応、このデートにパーティの存亡がかかっているということと、純粋にどんなデートするのかという野次馬精神から決行したストーキング行為なのだが、思いの外順調に進むデートを見ていたナビィがこんなことを呟いた。


「…なんか、つまんないですね」


ナビィ的には女性の扱いが分からず慌てふためくユーキの姿を見れると期待していたのだが…残念ながら期待外れであった。


「同感だな。私も見ていてつまらん…むしろなんかイライラして来た」


普段は厨二臭いことばっか言ってる口先だけの男のくせに女の子の扱いが妙にうまいユーキの姿に思わず憎悪にも似た感情が湧いていた田中ちゃんは珍しくナビィの意見に同意した。


「やっぱり世の女性にはもっと刺激のあるデートを味わってもらうべきだと思うんですよ。例えば…デートの途中でチンピラに絡まれるとか」


「そうだな、そんな刺激的過ぎてデートが台無しになるような出来事が起きて欲しいなぁ」


ナビィと田中ちゃんがそんな会話をしていると、トイレにでも行くのか、ユーキとアイロが別行動を始めた。


「…おっ、別行動し始めた。今がチャンスだな、行くぞ、シン」


「…え?僕も行くの?」


度重なるトラウマによって田中ちゃんに逆らうという思考回路が存在しないシンは渋々田中ちゃんについていった。


その一方、ユーキとのデートが楽しいのか、今にもスキップを始めそうなほど軽々とした足取りでトイレへと向かうアイロ。そんな彼女の目の前に二匹の野生の冒険者が現れた。


「ようよう、姉ちゃん、ずいぶん楽しそうじゃねえかよぉ?俺らも仲間に入れてくれよぉ?」


完全にただのチンピラと化した田中ちゃんがアイロにそう言いながらうざい絡みをして来た。


その後ろでシンは申し訳なさそうな顔をして黙って見ていた。


先ほどまでルンルン気分だったアイロは絡まれたことがよっぽどうざかったのか、先ほどまでの可愛らしい美少女の顔が一瞬で般若のような面へと変貌した。


「邪魔すんじゃねえよ、ゴミが」


「なんだとコラァ?貴様のその可愛い服を血で染めてやろうか?あぁ!?」


田中ちゃんがそう恫喝したその瞬間、目にも留まらぬ速さで懐から大槌を取り出したアイロは有無を言わせるいとまもなく田中ちゃんをタコ殴りにして一瞬で棺桶にしたのち、ついでに近くにいたシンも棺桶仲間に加えた。


「なんか叫び声みたいなのが聞こえた気がしたけど…大丈夫か?アイロ?」


「なんでもない。大丈夫だよ、ユーキ」


天使のような笑みを浮かべるアイロ(レベル80)だが、その姿は返り血で赤く染まっていた。


「でもちょっと服が汚れちゃったから着替えてくるね。待ってて」


そう言ってアイロは棺桶二つとユーキを置いてその場から去って行った。


置いていかれたユーキはやけに見覚えのある棺桶二つからだいたい状況を察したので、アイロが着替えるのを待つ間に二人を蘇生させるために渋々全滅することにした。


ユーキがメニューをいじり、数回自殺用魔法『バイズ』を唱えるとあっという間に棺桶がその場に三つ並び、いつものように教会へと運ばれた。









「で、なんでデートを邪魔したんだよ?」


『またいつものやつらか…』と呆れる神父(幼女)に蘇生された後、ユーキは田中ちゃんとシンに問いただした。


「いや、別に。ただ楽しそうな顔みてたらむしゃくしゃしただけ」


「周知の事実だけど、やっぱりお前最低だな、田中」


なんの悪びれもなくいけしゃあしゃあとそう言い切る田中ちゃんを最低呼ばわりするユーキ。…完全に正論である。


「でも悪いのはユーキですよ?。私達はユーキが慌てふためく情けない姿が見たくて後をつけてたんですよ?。…それなのに普通にデートを楽しんでどうするんですか?。私達はもっと気持ち悪いほどに童貞臭く羞恥を晒すユーキを期待してたんですよ!?」


なぜか当然のようにユーキに責任転嫁して怒り出すナビィ。


「っていうか、わかってますか?。ユーキがさらりとデートをこなす様なんて読者はおろか、作者ですら望んでないんですよ?。それなのにユーキときたら…そんな様じゃエンターテイナーとしての名が泣きますよ?」


「そんなエンターテイナーなんて名ばかりなピエロはお断りだ」


小説の裏側の視点から指摘するナビィではあるが、そんなことはユーキには関係ないことである。


「シン、お前からもこいつらに大人しくしてくれるように言ってやってくれよ」


味方がいないユーキはまるで当てにはしてないがシンに田中ちゃん達をどうにかするように言ってみた。


「無理だよ、僕なんかじゃ二人を止められないよ。…それに…僕はどっちかっていうとこっち側の人間だしね」


シンはそう言ってさりげなく田中ちゃん側に寝返った。


「おい、シンまでなんでそっち側に着くんだよ?」


「別に理由はないよ。…うん、理由はないんだ。ただ…理由もなくリア充が憎いだけだから」


「…俺のパーティ、ろくなやついねえな」


さらりと笑顔でそう言い切るシンの本性を覗き見て、若干絶望気味にユーキはそう呟いた。


「とにかく、あまり邪魔はしないでくれないか?。俺はただ、無償で剣を直してくれたアイロの恩義に報いたいだけなんだからさ」


「そういう大義名分で女とイチャイチャしたいだけなんだろ?」


「…まぁ、楽しんでるのは事実だけど…」


田中ちゃんに痛いところを突かれたのか、ボソボソとそんなことをつぶやくユーキ。


「でも、このデートには俺たちの今後の戦力がかかってるんだぞ?それを感情に任せてぶち壊してもいいのか?」


「…別に僕的には冒険とかどうでもいいし」


ぼそりとそうつぶやくシン。


「ナビィ的にはむしろ一石二鳥ですし」


嬉しそうにそうつぶやくナビィ。


「よくよく考えたらユーキが剣を手に入れたところで雀の涙ほどの戦力アップにしかならないし」


鼻をほじりながら堂々と言い切る田中ちゃん。


「神様、仏様、フィーネ様、どうか俺に真の仲間を授けてください」


誰一人として仲間と呼べる仲間がいない現状に思わず神々に祈りを捧げるユーキ。


誰一人としてデートの成功を望まれていない中、果たしてユーキはアイロと満足のいくデートが出来るのか?


そして、真に仲間と呼べるほどの信頼できる仲間と出会えるのか?


次回、『デート、失敗するといいね(満面の笑み)』乞うご期待。

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