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GOKOKU ISLAND  作者: 濱マイク
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DESTINY

【プロローグ DESTINY】



四国に異変が起こりました。



背鰭県の隣に、つい最近新たな国土として、岩萩県が発見されたのです。


四国地方の背鰭県の沿岸は、分厚い霧に覆われていて、長年に渡って空気中の塵と有害な赤潮から発生する化学物質とが結びついて、コンクリートの壁状に固体化していました。


その壁が陸と海の境をすっぽりと塞いでいたので、何千年もその存在を明らかにする事が出来なかったのです。


しかし、或る年、3つの台風の目が重って上陸し、折からの地割れが起こるほどの地震にも見舞われるという大災害がありました。


コンクリート状に固められていた霧の壁の全面に亀裂が走り、折りからの爆雷とともに龍が如き竜巻によって壁が崩壊し一掃されたのです。


嵐が去った後、海とばかり思われていた場所が実は汽水域の河川であった事が判明し、その向こう岸に緑豊かな岩萩県が発見されたのです。


しかも、崩壊した巨大な霧の壁の残骸が水路を充分に埋め尽くして、なんと地続きになって四国と合体したのでした。


原住民は、日本人と殆ど変わり無い様子でしたが、流石に彼らの言葉は、なかなか解明できませんでした。


da peyon語という独特なイントネーションの言語を使っており、主食は薩摩藷をドライフーズにした肝臓芋というものでした。


最初は霧の壁の向こうから突然現れた侵略者に対して敵意丸出しで、竹槍を持って交戦状態が続きました。


しばらくの間は、鉄柵を設置して電流を流し、危険な立入り禁止区域として自衛隊が監視しておりました。


やがて、ある年の夏、海で遊んでいて流され溺れかけていた岩萩県の子供を、背鰭県の海上保安庁の巡視船が救助したのです。


この一件を、当時の岩萩県の民衆が大変喜び、次第に友好関係が芽生え始め、とうとう地元政府も動いて漸く国交が始まったのです。


本土では、またと無い大幅な領土拡大でもあり、国を挙げて大歓迎しました。


当時の総理大臣が岩萩県の旧政府を訪問し、正式に調印式が行われ、長年続いた四国体制が終焉を迎え、五国自治区(GOKOKU ISLAND)として生まれ変わりました。


言葉についても背鰭県の各市に公立のda peyon語学校が設立され、公立の中学校では、第2国語として教科に含まれる様になりました。


勿論、岩萩県の各市にも、本土の政府の援助で松脂弁学校や讃岐弁学校が出来て交流が深まりました。


今では岩萩県も急速に発展し、言葉も一部の訛りを覗いて何不自由なく話せる様になり、旧四国地方となんら変わらぬ生活水準となったのです。




背鰭県の首都松脂市には、一大スパリゾートDO&GOがあります。


その西側の山あいに、長閑かな渓流を挟んで民家が点在している地域があって、瑛子の実家がありました。


瑛子は、そこから車で市内の松脂鰊まつやににしん中等教育学校まで、通っています。

学校事務の仕事をしていたのです。


松脂市には、私立の廃校学園はいこうがくえんと県立の松脂鰯高まつやにいわしこうという超進学校があります。


松脂鰯高の前身は旧制松脂中学で、かの有名な小説お嬢ちゃまの舞台になったのが、一大スパリゾートDO & GOなのです。


彼女が勤める松脂鰊中等教育学校も、新設された中高一貫校として、メキメキと偏差値が上り、トップ2校に肉薄する勢いです。


彼女はシングルマザーでした。


10年前に夫の暴力が原因で離婚し、一人娘の有希は彼女が引き取り、彼女の実家で暮らしています。


娘は、片親でもめげる事なく明るい子に成長し、勉強も良くできて、今は県立トップの松脂鰯高に通っています。


彼女自身が子供の頃からピアノを本格的に習っていた事もあり、娘にも物心ついた頃から、英才教育で自ら教えていました。


今では、高校生にして背鰭県を代表するレベルにまで成長し、毎年天下のジョバンニ・ピアノ・コンクールの全国大会に出場する迄になりました。


既に進路も、国立の帝都藝大か、公立の古都藝大に決めていました。


一応安泰のように見える瑛子にも、ひとつだけ悩みがありました。


地方公務員として、なんとか安定して娘を育てて来ましたが、娘が大学に入って実家を出て行ってしまったら、一人でどうしたら良いのか、未だ考えあぐねていたのです。


勿論娘の入った大学の側に引っ越すことも考えましたが、せっかくの地方公務員の職場を捨てることになります。


それには未だ、生活費を得る為に働かなければならず、簡単に捨てるべき職場ではなかったので、実家に止まるしかなかったのです。



瑛子は再婚を考えていました。


離婚して10年、生活の為もあり、娘の為でもありましたが、本当のところは、身も心も、女日照りだったのです。


40歳を過ぎて、その気持ちは焦りにも似た切羽詰まったものになって来ていました。


決して淫乱な訳ではありません。


瑛子は、正直、淋しかったのです。


瑛子は華奢な体つきでしたが、胸は形の良い巨乳でした。


堅い職場では、目立たぬ様にブラジャーできつく封じ込めていました。


年を取っても衰えることなく、子育てをしても、奇蹟的に少女の様に小振りな乳首と張りのある豊満な乳房は健在でした。


まさに女盛りを、ひとりで持て余していたのです。


男のひとに愛されたい。

抱きしめられて眠りたい。

この乳房を、狂おしいほど思う存分嬲ってもらいたい。


女の心と身体の、悲痛な叫びでした。



ふとしたはずみで、出会い系サイトに嵌ってしまった事も、誰にも責めることは出来ません。


でも、結婚相談所じゃないんだから、出会い系サイトは、ヤりたいだけの既婚男の巣窟なのです。


独身者限定にしても、アクセスがあるのは既婚者ばかりでした。


たまに独身者を見つけると挙って殺到するのですが、あ〜結婚できないだろうねぇってブ男とアキバ系オタクばかりでした。


いい男は皆んな結婚している、という通説がありますが、まさにその通りだという事を思い知ったのでした。


女もそれを承知が殆どで、瑛子の様に真面目に再婚相手を探そうとしてるケースはごく僅かでした。


っていうか、本当にそうしたいなら、結婚相談所に行ってます。


瑛子も、心の何処かで、出逢いだけでもと、密かに思っていたのです。



ある日、いつもの様にサイトをチェックしていたら、やりたいだけの既婚者の烏合の衆の中に、隣の岩萩県からのメッセージが入っていました。


da peyon語ではなく、標準語だったので瑛子にも容易に理解できました。


鼬市いたちしやんか」


隣の県ですが、鼬市なら県境なので実際にはそんなに遠くありません。


写メもあり、歳上でしたが禿げてもいないし、笑顔が素敵でなかなかオシャレな好青年っぽくて、好印象です。


身長178㎝、体重67kg。


背高いやん!カッコいいわぁ。

デブでもないし。


瑛子は身長は150cmしかないので、背の高い男性に憧れていたのです。


会社員。

ちゃんと仕事しとる事が大事やわぁ。


しかも、バツイチ。


女の方は、バツイチなんてサイトの中では当たり前で、掃いて捨てるほど、バツイチばかりののオンパレードなのでした。


それなりの理由があるにせよ、何よりも結婚出来る条件を備えている事に違いありません。


言って仕舞えば、男のバツイチは掘り出し物もんなんです。


「ええやん」


突然ですが、貴女の写メを見てメッセージを読み、とても気になったので、メッセージを送りました。もし良かったら話してみませんか。


「ええに決まっとるわ」


すぐに、

ありがとうごさいます、よろしくお願い致します

と返信しました。


瑛子はもう走り出していました。


若い頃に撮った、取って置きのお見合い写真を写メにしてたので、掴みはバッチリの筈です。



詐欺ですね。



(つづく)


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