肆 ──逃避
『お前は、あそこに少女を匿っているな』
詰問はそこから始まった。
誰かが見ていたのは間違いない。そもそも今までずっと、誰にも見つからないでいるはずなんてなかったのだ。そう思うと、憐愍は頷かざるをえなかった。
しかし、匿った事実だけで『大いなる意志』が出てくるとも思えない。半信半疑ながら、ともかく弁解せねばと憐愍は訴える。
『はい。ですが匿ったのでは──』
『だがお前は少女に言葉を与えたな』
ぐさりと指摘が身体を貫いた。
──しまった、そっちまで見られていたのか……!
不覚だった、と憐愍はほぞを噛んだ。
人間が言葉を発すれば、当然ながら言霊は生まれ、その存在によって他の言霊たちに気付かれてしまう。しかし、言葉が与えられ、彼女の発する声に意味が生じるようになっても、言霊と会話する分に於いては新たな言霊は発生しない。だから発覚のおそれはない、安全だと憐愍は考えていた。
しかし、例えば言葉を与えていた場面をもろに誰かに見られていたとしたら、話は変わる。途端に誤魔化しなど何の意味もなくなってしまうのだ。
『貴様は何を企んでいる』
『大いなる意志』は、ぎろりと憐愍を見下ろした。そこには確かな怒りがあったが、その正体はどうやら、人間に向けられているものではないらしかった。
『企んでいるだなんて──』
『貴様もまた、我等言霊の消滅を阻もうとしているのではないだろうな』
また? ──思わず憐愍は聞き返しそうになった。
何だ、言霊の消滅を阻むとは。そんな大それたことなど考えたこともない。
だが、もうすっかり決めつけているかのように、『大いなる意志』は鼻を鳴らす。
『あの少女に言葉を与え、それによって延命を図ろうというのだろう』
『違いますっ! 僕は、僕はただ……』
『そのようなことを企んだらどうなるか、見せつけてやる。──始めよ』
一体、何が始まるというのか。
自分の身に何か起こるのかと、憐愍は身構えた。言霊たちの取り巻きの一部が身を引き、視界が開けた。
ひとりの言霊が、憐愍と同じように取り囲まれ、縛り付けられている。
『嫌っ! やめて! やめてよ──っ!』
叫ぶその声に、憐愍は聞き覚えがあった。あれはつい昨日、言霊が全て消えると『大いなる意志』が通告した時、憐愍たちの隣でショックを露にしていた言霊ではないか。
『彼奴は我等の消滅を畏れ、嫌い、抵抗しようとした。無理やり人間に取り憑いて、人間ごと逃れようとした。意志に逆らった罰として、消えてもらう』
これからなされるであろう事を憐愍が理解するより早く、冷たく厳かな声で『大いなる意志』は告げた。
『──構うな、やれ。裏切り者をゆめゆめ容赦するな』
『嫌あぁぁぁぁああああああ──────ッ!!』
言霊が叫んだのが先か、凄まじい光と音が煌めいたのが先か。次の瞬間にはその言霊は、木っ端微塵に砕け散っていた。
同時に、言霊が背負っていた『意味』が、耳をつんざくほどの音量で断末魔のように流れ出し、煙のように漂ったかと思うと、すぐに空気中に溶け込んでいった。
あとにはただ、宏漠とした静寂が残るのみだった。
──『お前が奴等を庇うのは知ってるよ。けど、お前も分かってるだろ。お前みたいにニンゲンの肩を持つ奴は、少数派だ』
いつか、厭忌が口にしていたことが、憐愍の頭の中で瞬いた。
『大いなる意志』は絶対的、独裁的な神様ではない。今も数を減らし続けているであろうこの国の言霊たちの、最大の総意に他ならない。
その総意が、この結末を望んでいるのだ。
あまりに衝撃的な映像に、憐愍はまだ、言葉を失ったままだった。
『貴様もああなりたいか』
確認を取るように、そして脅しをかけるように、『大いなる意志』は尋ねた。
違う。そんな気持ちは僕にはない。──思わずそう弁解しかけた憐愍だったが、ふと、脳裡をよぎった強い違和感が、そこに疑問を置いていった。
『……なぜ、あの言霊は、僕たち言霊の存続を望んだのですか』
『質問を質問で返す気か』
そういうことになるだろう。
『大いなる意志』をじっと見つめ、決して視線を外すことなく、憐愍は首を前に振る。
『己の欲のためだ。彼奴は人間が容易く死んでゆく様を見て、死への恐怖を募らせた。──愚かしいことだ』
『存続を望んでは、いけないのですか……?』
『人間を許す訳にはいかぬ』
当然だ、とばかりに『大いなる意志』は厳かな声で答えた。烟った空気が場を濁らせ、視界が少し、悪くなった。
『人間に我等が力を貸してやる道理など、もはやない。あれが滅びるためには、我等も同時に滅びなければならぬのだ。その理屈が分かっていないとは言わせぬぞ』
『分かっています。でも』
『我等は人間に失望した。どこまでいっても人間は、我等言葉を用い、少し賢くなっただけの、欲にまみれた汚い下等生物に過ぎん。どんなに文明が発展しても、人間は欲から逃れなかった。……もう、力を貸すだけ、無駄なのだ』
その時、憐愍の頭に浮かんだのは、あの少女のことだった。
あの少女が、欲にまみれた下等生物……。
いや、そんなわけはない。
少女は無邪気に生き、笑い、憐愍といることを喜びにしていた。それ以外、あの子は何も持ち合わせていなかったではないか。
あの少女ですら、まとめて下等生物と呼ばれてしまうのか。
それは、正しいのか。
憐愍の心に、それまでにはなかった新たな感情が沸き上がってきていた。
少女に対する同情か。庇う気持ちか。──どれも、違う。
もっと大きなものへの疑念であり、憤りだったような気がする。
『……僕たち言霊が人間の間を離れてから、たくさんの時間が経ちました』
思いを、疑いを必死に言葉に起こそうと、憐愍は懸命に考えながら言った。『大いなる意志』がこちらを向いた。
『人間は、色々だと思います。でも、皆が皆、卑劣な欲の塊でしょうか』
『何だと?』
『僕はそうは思いません。少なくともあの少女は、違う。そう確信しています』
初めて少女に接触した動機が、何だったか。今なら思い出せる。
少女の発する雰囲気が、他と違ったからだ。互いを食い合う人々の間にあって、あの子だけは違った。そう感じたからなのだ。
『たった一人の人間を相手に、方針を変えろと言う気か』
『大いなる意志』の口調が変わった。
怯むな、と憐愍は自分を鼓舞する。これは自分のためではない、少女のプライドを守るためだ。
『僕が知っているのは、たった一人です。でも、他にいないなどという根拠もありません。この何日かで人間たちだって変わったかもしれない。どうして、諦めてしまうんですか』
『失望したと言っただろう。それに、いたとしてもどだい少数派に過ぎん。人間どもの好きな“民主的”な決め方をすれば、必然、彼奴等は滅ぼされてしかるべきであるという結論に至る』
『さっきの言霊だって……』
つい今しがた言霊が煙と消えた空間を、憐愍は一瞥した。
『あなたは死への恐怖に屈したからとおっしゃいましたが、本当に……そう言ったのですか?』
『言ってはおらぬ。だが数多の言霊が、断罪を望んだ』
『あの言霊だって、そうやって誰かを見つけたのかもしれないんですよ。守るに値する、言葉を与えるに値する誰かを……』
『歯向かうのだな、我等に』
その時、『大いなる意志』の放つ存在感が、最高潮に達した。
憐愍がはっとした時には既に、その大きな腕が、憐愍の胸元に伸びようとしていた。
『ならば貴様にも死んでもらう。──あの少女が野垂れ死ぬ様を見なくて済むのだ、感謝しろ』
先刻の言霊の死の瞬間が、ぼうと音を立てて記憶の隅々までを照らし出した。
──嫌だ。
憐愍は後退した。そして、自分がたった今、何をしてしまったのかを、その瞬間に悟っていた。
──嫌だ、死にたくない。いつか死ぬのだとしても、あんなやり方で死にたくない……!
手が伸びてくる。捕まる、と思った矢先。
憐愍は無我夢中で、だっと後ろへ駆け出していた。
『待てッ!!』
『大いなる意志』の雷鳴のような大声が、びりびりと一帯にこだました。取り囲んでいた言霊たちが、捕まえようと寄ってくる。
『うわああ──っ!』
憐愍は力に任せて、それらを振り払った。
振り切れ、とにかく振り切るんだ。めったやたらに腕を振り回し、足を蹴り出し、気がつけば憐愍は取り巻きの外に逃げ出していた。
眼前には、人間たちが数千年間の文明の果てに築き上げてきた都市の残骸が、憐れにその姿を晒している。──いや、憐れまれているのはむしろ、憐愍の方かもしれない。
──あの中に逃げ込めば……っ!
憐愍はがむしゃらに、廃墟の都市へと駆け込んだ。すぐ後ろに迫った追っ手が、次々に飛び込んできた。
この瞬間に憐愍は、言霊の総意を、言霊の大多数を敵に回してしまったのである。
◆
それから、三日が過ぎた。
『はぁ、はぁ、はぁっ』
やっとの思いで物陰に隠れた憐愍は、あらぶる息を必死に鎮めた。あまりに大きな音を立てては、ここにいるのが気付かれてしまう。この三日間、そうして地獄を見てきたことが、経験となって今は生きていた。
『あっちへ行ったぞ!』
『そっちだ! 回り込め!』
追っ手の言霊たちの怒りに満ち溢れた声が、市街に轟いていた。何とか巻けたみたいだ、と憐愍は推理する。
言霊は自由に動き回ることができるが、建物や自然物をすり抜けることは叶わない。だからこうしてやり過ごせるのだ。都合のいい身体に感謝しながら、憐愍は嘆息した。
そして、胸の中で疼く自分の思いを、確かめた。
──嫌だ。あんなのに捕まって、殺されるなんて嫌だ。僕は叛逆したかったんじゃない、ただ疑問に思っただけなのに……!
だが、だからと言ってどうすればいいのか。それを訴えに出てゆけば、そこには死の淵がぽっかりと口を開けて待っているに違いないのだ。
憐愍は目を固くつむって悩んでいた。探し回る言霊たちの会話が、雑沓の合間を不気味に漂う静寂の中に聞こえてきた。
『おい、『大いなる意志』の命令だ。憐愍を捕まえるのを急ぐと共に、問題の少女の居場所を早急に突き止めろ……とさ』
『何だよ。少女の場所、誰も知らないのか』
『最初に報告された場所から移動しているらしい』
──…………!
総毛立った憐愍は、思わず立ち上がっていた。
今の物音で気付かれなかったか。辺りを二度、三度と見回して、加速を増してゆく心の拍動をぎゅうと手で押さえつけた。
少女が、危ない。
彼女の居場所は知られていないと、言霊たちは言っていた。それに今は迂闊に出歩くのも危険だ。だが、時間が経てばいずれ少女はきっと捕まる。
言霊が自在に人の心を操れることは、誰より憐愍自身がよく分かっている。だとすれば、少女が何をされるのかにも、察しがつくというものだ。
──考えてなんかいられないよ。とにかく、少女のもとへ行こう。
憐愍は目的を定めた。他の言霊たちに少女が見つかる前に、一刻も早く。
少女の最後の叫びが結果的に現実になろうとしている皮肉に苦笑しながら、笑っている場合ではないと憐愍は気を引き締めた。
だが、その一瞬の間に、追っ手は憐愍を見つけていた。
『いたぞっ!!』
その声に憐愍の聴覚が反応した時には、憐愍の隠れている場所の周囲に何人もの言霊たちが集結していた。
距離にして、十メートル。迫られるのはあっという間だろう。憐愍は背後を窺った。逃げ場もない。まさしく背水の陣だ。
『よぉ、憐愍。よくも手子摺らせてくれやがったな』
一人の言霊が、すたすたと近寄ってきた。馴れ馴れしい口調はすぐに一変した。
『覚悟は決まってるんだろうな。総意に逆らった罪は大きいぞ』
ぎり、と歯が鳴った。万事休すか。
憐愍が目を閉じた、その時。
ガタン!
突然、足元の排水溝の蓋が、音を立てて落下した。
『!?────』
驚く間もなかった。憐愍は足を掴まれ、勢いよく下に向かって引きずり込まれた。
引っ張る主は分からない。ただ、ぐいぐいと強い力で憐愍は下水道に落下し、さらに奥へと引きずられてゆく。
『なんだ、下にもいたのかよ』
舌打ちをして地上の言霊たちが去っていく。
ああ、危機は去った。でももはや、それに意味はない。
憐愍は、捕まってしまったのだ──。
『──おい、目を醒ませよ。俺だよ、俺』
耳に馴染みのある声に、憐愍は目を開けた。
そしてそこにある姿を認め、絶句した。
厭忌ではないか。
彼は身を屈め、その眼でじろりと憐愍を見ていた。言葉を失った憐愍にため息をついて、口を開く。
『危なかったじゃねえか。お前、あと一歩で捕まるところだったんだぞ。捕まったらお前、殺されちまうぞ』
分かりきったことを告げる厭忌は、まるで憐愍に起こった出来事については何も知らないかのようだった。
『ありがとう……』
『何をやったんだ、憐愍。……言ってみろよ』
尋ねられた憐愍は、厭忌の目を見た。
何を言うんだ、正直に口になんてできるものか。──一瞬、そう考えもした。
だが、思えば厭忌とはもう、長い付き合いになる。皮肉屋で口が悪いが、厭忌が簡単に人を裏切ったりするような質でないことは、憐愍には分かっていた。その確信が、信頼になる。
『……『大いなる意志』に、逆らってしまった』
憐愍はかすれた声で答えた。かすれていても、自分の声だと思えた。結果的にだけど、と付け加えはしなかったが。
『逆らった……!?』
今度は厭忌が絶句している。うん、と憐愍は首肯してみせた。
『僕たちは全員、消えることになる──。『大いなる意志』がかつて、そう言ってたろ。人間が滅ぶために、我々も滅びねばならないって』
『……そうだな。そう言った』
『なにも人間全員が滅びなくてもいいんじゃないか。そういう主旨のことを話したんだ。そうしたら、こうなった』
憐愍はそこまで口にして、大きな息をついた。厭忌は開いた口が塞がらないといった顔をしている。
叛逆の意思はなかった。それは確かだ。でも、自分が間違った主張をしたとは、憐愍は思いたくはいなかった。確かに『大いなる意志』の語った通り、全ての人間を救う意味はないのかもしれない。だが、あの少女だけはどうしても、残りの大半の人間たちと同類にしてほしくはなかったのだ。
……ただ、後悔することがあるとすれば、それによって自分が、そして少女が追われる身となってしまったということだけ。
そしてその後悔が今、憐愍の心には重くのし掛かっている。
『……あの女、か』
厭忌はやっと、そう尋ねてきた。
こくんと頷いた憐愍は、その首肯で再び動く力が生まれてくるのを感じた。すっと立ち上がり、厭忌に礼をする。
『ありがとう、厭忌。助かったよ。でももう僕、行かなきゃいけない。このままここにいる間に、あの子に危害が及んだら大変なことになる』
厭忌は返事をしない。
それが是の返事と捉えた憐愍は、厭忌の隣を避けて通ろうとした。
厭忌の腕が伸びてきて、憐愍の行く手を阻んだ。その意味が分かるより早く、憐愍を見ずに厭忌は告げた。
『行くな』
『……厭忌?』
『前からあれほど言ってただろ、人間あさりはやめろって。もう、行くな。あの女もじきに捕まる』
厭忌の声色は、ぞっとするほど低かった。
分かっている。だからこそ、僕が行かなきゃいけないんだ。そう反駁しようとした憐愍は、厭忌の肩が細かく震えているのに、その時になってようやく気付かされた。
『それでも────』
憐愍は目線を外し、決心を訴えようとした。
だから、厭忌の左の拳が憐愍の頬に飛んできたのに反応するのが、遅れてしまったのかもしれない。
ガンと音が辺りに響くほどの勢いで、厭忌は憐愍を殴っていた。憐愍は容易く吹っ飛ばされ、壁に強かに身体を打ち付けた。
『目を醒ませよ!』
吼えたのは厭忌だった。
『お前が人間を庇いたがる性根の奴なのは重々分かってたさ! だから俺は、お前を人間に近づけたくなかったんだよ! いつかこうなるかもしれないって、俺、ずっと危機感を覚えてたんだぞ!』
憐愍は言葉を返せない。なぁ、と厭忌は一歩近づいてきた。その瞳に宿る光は、怒りというより、哀れみに近かった。
『お前は知らないだろうな。今、この国のあちこちで、お前みたいな奴等が言霊に駆られてるんだ。お前が見たのかは知らないが、毎日のように処刑が行われては、逆らった言霊が消されてるんだよ。お前もいつかそうなっちまうんじゃないかって、ずっと前から、俺は案じてたんだよ!』
……そんなにまでも厭忌は、憐愍のことを思っていたのか。
さっきは安易に厭忌を信頼しておきながら、厭忌の言ったことがにわかには信じられなかった。
『けどな、いつまでたってもお前は人間あさりをやめなかったばかりか、あの女とつるむようになった……』
厭忌の嘆きの声に、憐愍は思わず、尋ね返した。
『あの女、あの女って。厭忌、あの子のこと知ってるのか』
『知ってるさ。最初に見たのも、『大いなる意志』にその事を告げたのも、俺だ』
『えっ……!』
『いくら『大いなる意志』だって、叛逆者をいきなり殺したりはしない。きっとお前を詰問して、やめさせようとするだろう。それでお前が改心して、人間から離れるようになってくれればいいと思って、告げたんだ……。それがどうした、この結果だ……!』
厭忌は詰め寄った。
『だから人間は嫌いなんだ! 最後の最後まで往生際が悪い上に、どこまでも俺たちに迷惑をかけやがる! 滅ぶなら勝手に滅びやがれってんだよッ!』
その凄まじい気迫に呑まれ、憐愍はいよいよ何も言葉を返すことができなくなった。
厭忌は昔から、人間嫌いがとりわけ顕著な言霊だった。事あるごとに人間に向かって唾を吐いては、
──『可笑しいよなぁ。俺たちがこんな奴らの道具になってるなんてさぁ』
と、反応に困るセリフを憐愍に向かって投げ掛けてきたものだった。無論、それは憐愍に対してばかりではない。実際のところ『大いなる意志』が人間からの離反を決める頃には、そんな厭忌の言葉に勇んで頷く言霊の方がずっと多かった。
だが、ここまでの怒りを厭忌が露にしたのは、今までに例がない。
──僕は、そんなに厭忌のことを怒らせてしまったのかな……。
憐愍はなんだか泣きたくなった。
何をしたらいいのか分からない戸惑いのような感覚が、憐愍の心を埋め尽くしている。